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2016年10月21日(金)

「ういろう」にみる小田原

文化レポーターのとっきーです。

小田原に引っ越してきて半年、小田原の歴史や文化に少しずつ触れる日々を過ごしております。

初めて小田原に来て思ったことの一つに「小田原の『ういろう(外郎)』ってなんだろう?」という疑問がありました。今回は、この疑問を解消してくれた「『ういろう』にみる小田原」という本についてレポートしたいと思います。

 

以前から小田原に住んでいる方には、当たり前のことかもしれませんが、私が初めて小田原駅東口を出て、ういろう駅前調剤薬局の前を通った時に、その疑問が湧いたのです。
 

「ういろうなのに薬局?ういろうってお菓子じゃないの?」
 

 

観光で訪れる人たちの中にも同じように疑問をお持ちになる方がいると思います。「ういろう」について、インターネットなどでも調べてみてわかったことは、「『ういろう』は和菓子の名前でもあるが薬の名前でもあり、先祖代々、漢方薬を製造・販売している人物の名前でもある。」ということでした。

 

 

小田原では有名なこの「ういろう」について、さらに深く知るチャンスがないまま過ごしていた私に、偶然の出会いがありました。

8月に行われた文化レポーターのミーティングで、先輩レポーターの深野さんが「ういろう」についての本を執筆されていることを知ったのです。

 

早速、疑問を解消すべく、翌日近所の書店へ。手に入れたのがこの本です。

 

 

まず、本を開く前に、カバーを外すことをお勧めします。それは、小田原城の大外郭の絵を眺めていただきたいからです。左手前から「東堀」「中堀」「西堀」の三堀切が見えます。この絵を見ると小田原城の大外郭がいかに巨大であったかを窺い知ることができます。

 

 

歴史に疎い私は、「もくじ」に目を通し、最初に興味を持った章を選び読み始めました。

 

第1章「二十五代当主・外郎武氏のインタビュー」は、私の『小田原の「ういろう」って?』という疑問を解消する内容で気持ちが高揚するのを感じました。外郎武氏は外郎家を受け継ぐ際に、先代当主も持っていた薬剤師の資格を取得するために、45歳で薬科大に入学された経緯があるそうです。四十代で新しいことにチャレンジする勇気と覚悟に敬意の念を感じました。

 

「第2章小田原の成り立ち」、「第7章外郎家

 

の役割と小田原」など大変興味深いものも多々ありますが、ここでは、先にも紹介した「第1章」ともう一つ「終章」の2つをご紹介します。

 

 

 

【第1章 二十五代当主・外郎武氏のインタビュー】

 

ういろうを知るには、この章でご当主が語られた話が一番参考になりました。インタビューの中で最も印象的な話は、外郎家のいろいろある家訓のなかに、「薬で地域の健康を守る、菓子で来客をもてなす」があることでした。この菓子で来客をもてなすお菓子こそ、私が今まで知っていた「ういろう」なのです。このおもてなしの心こそ、650年も続く外郎家の原点の一つだと感じました。

 

 

 

【終章 座談会】

 

外郎家をはじめ小田原で活躍する方や小田原出身の方達の座談会が、松永記念館の老欅荘で行われていました。座談会では、ご自身の仕事などを通して「これからの小田原」がどうあるべきかについて、ご参加の皆さんの意見が歯に着せぬ内容になっていて読み応えがあります。私はただ頷いて本を読み進めるだけでした。

 

私もこの座談会の会場となった老欅荘を訪れたことがありますが、広間の縁側から見る相模湾と欅の木の眺めに、大いにリラックスした記憶があります。座談会の章は、その場の雰囲気を思い起こさせてくれます。

  

最後に

 

小田原の「ういろう」にこれほどのドラマがあったとは、本を読む前までは思いもしませんでした(650年の歴史を知っていたら当然だと思いますが)。章を読み進めていくほど、小田原だけではなく、京都〜静岡(駿府)〜小田原と時代ごとの遷移があり、それぞれの地で文化的な貢献をされてきた外郎家の、刻んでこられた650年の歴史の重みを感じました。

 

また、終章の小田原で活躍している方々の座談会では、小田原のイベントについての議論に大変興味を持ちました。イベントの広がりが小田原だけではなく、近隣地域へ広がりの発想を持つ必要があるのでは?との意見を読んで、文化レポーターとして、小田原に貢献できることや活動する余地が沢山あるのだと勇気付けられた気がしました。 

 

このレポートを読んで、少しでも「ういろう」や小田原に興味を持たれた方は、是非、この本をお手に取ってみてください!

 

(とっきー・記)

【参考】

タイトル:「ういろう」にみる小田原 早雲公とともに城下町を作った老舗

著者:深野 彰

出版社:新評論社

定価:1800円(税別)

2016/10/21 15:44 | 歴史

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