小田原市

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2017年06月13日(火)

小田原の街でこんな美術展  【木下泰徳展 2011-2017】

―顕現と神秘の世界を分ける―
■100億年も前、灼熱の地球に降り注いだ小惑星に含まれた「水」が世界を二つに分けた。水の世界と陸の世界だ。二つの世界は相いれない。水面はこの二つの世界の境界だ。地表は顕現の世界。ここに住む我々は、境界の向こうの水底に神秘を感じる。そして二つの世界を隔てる水面の変化に喜怒哀楽を求める。「濤(F20)」、波濤の濤、怒濤の濤だ。うねる大波をシンプルな構成で描いている。深い青に重なるように泡立つ波。乱れるなかにも緩やかな創造のうねりを感じる。いっぽう、「緑の沼(F100)」は静寂な湖面だ。新潟県の十日町を旅したときの風景とのこと。緑の湖面は、まるで意思があるかのように一切の乱れを見せない。そこには容易に踏み入れられない結界を感じる。

■美術展などに行くと、作品の大きさがF100とかP80とかM60とかS40と書かれているのをよく目にする。数字はいわゆる「号」で長辺の長さによる大きさの区分を表す(100号のタテが162センチ、60号が同130.3センチ、20号72.7センチなど)。FやPやMやSというのは、描く対象を想定した区分で、Fは人物、Pは風景、Mは海景、Sは正方形を意味し、それぞれ対象を描くのに適しているとされる長辺と短辺の比率となっている。「濤」は20号、「緑の沼」は100号。実際の大きさは2倍以上も違う。しかし、デジタルで並べてみると不思議な対比が見えてくる。青と緑、海と森、動と静。

 

絵の値段は1号いくらいくらと言われる。その作家ごとの評価は美術年鑑のような書籍に載っている。プロの作家さんの個展などに脚を向けたとき、作品の値段を号数で割ってみるのも鑑賞法の一つかもしれない。
 

―花壇のなかの小さな物語―
■木下泰徳さんの個展は、4月20日から5月1日までダイナシティ・ウェストのギャラリーNEW新九郎で開かれていた。4月30日の日曜日にお邪魔してからずいぶん日が経ってしまった。「KADAN(F80)」に植えられた苗はしっかり根付いているだろうか。花はもう咲いているころだろうか。庭の花壇に苗を植えるとき、まだ弱々しい葉がついているだけのナエが、まだ落ち着かない土に不安げに立っている。水をやる。水がナエを守るように土に浸み込んでいく。いくつかの水玉がちょっと待ってと言うように葉に転がる。KADANの中にも小さな物語がある。(ゆきぐま記)

【木下泰徳展2011-2017】
 ■会期:2017年4月20日(木)-5月1日(月) 終了
 ■会場:ダイナシティ・ウェスト ギャラリーNEW新九郎

2017/06/13 10:03 | 美術


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