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2017年10月17日(火)

小田原の街でこんな美術展 ~それぞれの顔 それぞれの視線 第二金土デッサン会展~

■第二金土デッサン会展が9月27日から10月2日までダイナシティのギャラリーNEW新九郎で開催された。「第二金土デッサン会」というちょっと変わった会の名前はその成り立ちに由来する。小田原の美術界に大きな足跡を残した井上三綱らが画業研鑽のために第二金曜と土曜にアトリエに集まったのが発足という。いまの小田原美術界を代表する日下部良平さんや豊島シズ枝さんも草創からのメンバーとのこと。現在の第二金土デッサン会は、会員40名・ビジター10名で、月2回「けやき」の美術工芸室で、そのうち15人ほどが集まって裸婦や着衣のデッサンやクロッキーで制作に励む。メンバーは西相美術協会の会員からアマチュア画家まで多様。主催する指導者はなくそれぞれの感性で自由に描くことが会の趣旨だ。この「デッサン会展」のレポートは3回目になるが、今回は「顔」の部分を取り出してみる。作品以上にそれぞれの個性が浮き出ている。出展者23名、出展数40点
 
■加藤迪余さんの「腰掛けポーズ」は椅子に腰かけた婦人。端正な面立ちとローズレッドの衣服に気品が感じられる。佐久間(レポーター)の「イン・ペインズグレイ」は、深い青一色を着た女性。シンプルな装いの落ちつきの中にも意思を感じる。「夏の終わりに」は川口道さんの作品。何かをじっと見つめる若い女性。それぞれ女性たちの見つめるところが違う。人物画は視線によって見る人を誘う。
 

■木下泰徳さんの作品「緑衣の女」は落ち着いた女性の表情。じっと見つめるような虚ろなような曖昧さが観るものの感情を多様にする。守田智子さんの「樹」は小さな子の表情を正面からとらえる。背景には子どもを守るように大きな樹がある。ちょっと見上げた未来をみるような表情。「想う」は上出雅彦さんの作品。同じモデルさんを描いても、作家さん独特の顔形と表情になる。誰の作品かが顔で分かる。
 

■竹原由樹さんの「空中携挙前夜」は真のクリスチャンである者が空中まで一挙に引き上げられ、再臨した主と出会うというキリスト教の教えにもとづいているという。いつ携挙されるか誰にも分からない。だから常に眼を覚ましていなければならない。それを待ち望む女性だ。信仰の強さと見つめる先の待望の表情が見える。相澤茂さんの「画室にて」はアトリエでポーズをとる裸婦。ポーズ中のモデルさんは何を思っているのか。お腹がすいたと思っているのか。哲学者のように真理を追究しているのか。それとも禅僧のように無の境地か。
 
■近藤満丸さんの「モノ想い」は、できるだけ多くの色で描いたという独特のタッチ。シンプルな線に表情が浮かぶ。黒目が描かれていなくとも視線が分かる。眼の大きな異国の女性「モモ」は佐竹正明さんの作品。直線的なタッチに女性の生き様が見える。どこかの小説に出てくるような女性だ。描かれる人物は、多くのばあい全身である。特別な主題でない限りその表情は穏やかだ。ただ視線だけが喜怒哀楽を物語る。ここに載せた10人の視線にもそれぞれの個性が顕われている。こんど、街の美術展に行ったら、この絵の女性はどんな人だろう、この作家さんは何を訴えているのだろうと、ポーズをするモデルさんは何を思っていたのだろう、描かれた表情から想像するのも面白いだろう。(ゆきぐま記)
 
第二金土デッサン会展
期日  2017年9月27日(水)―10月2日(日) 終了
会場  ダイナシティ ギャラリーNEW新九郎
問合せ 090 4928 8346(横田)

2017/10/17 14:17 | 美術

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