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2018年09月07日(金)

第17回文化セミナー アートスペースの可能性

セミナーのポスターセミナーのポスター 8月25日、小田原市民会館展示室にて、「第17回文化セミナー アートスペースの可能性」と題した市役所文化部文化政策課の主催の講演会が開催されました。講師は、藤沢市アートスペース学芸員である「小林 絵美子」さんと、藤沢市アートスペース運営協議会委員である「中野 仁詞(ひとし)」さんでした。「藤沢市アートスペース(愛称 FAS(エファース)」(以下、「FAS」)は、辻堂駅北口の湘南C-Xにある「ココテラス湘南」6階にあります。平成27年10月にオープンしたばかりの藤沢市の美術振興施設です。「美術館」でなく、「アートスペース」とは何だろう?藤沢市が取り組むアートの場づくりの新しい展開を聴きました。

小林絵美子氏講演会

 小林さんは、2010年から藤沢市民ギャラリーに勤務され、藤沢市アートスペース開設の立ち上げに携られました。その後、学芸員としてFASで、藤沢市ゆかりのアーティストの展覧会やワークショップ等の企画に取り組んでこられました。小林さんから、FASの設立経緯、狙い、活動内容について説明がありました。

 FASの設立のきっかけは、藤沢市長が姉妹都市のマイアミビーチ市へ視察に行かれた時、現地の「ArtCenter South Florida」が市民や観光客を巻き込んだアート活動を行って、とても賑わっていたことに印象を受け、藤沢市内にも同じようなアートスペースを作りたいと発案されたのがきっかけだそうです。

FASには、4つのコンセプトがあります。
 ・若手芸術家の創作活動及び展示
 ・発表などの支援・身近な美術鑑賞の機会の提供
 ・美術作品の制作
 ・展示・発表の場の提供・美術学習の場の提供

藤沢市アートスペースのロゴ藤沢市アートスペースのロゴ 一方で、藤沢市のもう一つの美術施設である「市民ギャラリー」は、
・市民の生涯学習の発表の場(貸館)
・市民公募の展覧会(市展)
・市内小、中、高校生美術の発表の場
・市民センターサークル発表の場(サークル展)

スライドを説明する小林さんスライドを説明する小林さん など、従来型の市民主体の活動発表の場を提供しています。市民ギャラリーが市民主体であることに対して、FASは行政主体で若手アーティストの支援を全面的に打ち出していることに特徴があります。更に、ワークショップや展示解説を通しての教育普及や、藤沢市所蔵作品や市ゆかりの作家の企画展も行っています。

 FASは、単なるアートの展示会場ではありません。アーティストが制作活動する場も提供しています。それが、コンセプトにある「若手芸術家の創作活動及び展示・発表」の場の提供です。

FAS内で制作に取り組むアーティストFAS内で制作に取り組むアーティスト 「アーティスト・イン・エファース(AiF)」は、多様な創作活動にかかわる人たちから制作・展示プランを広く募集し、外部審査員による審査を経て、選出されたアーティストに作品制作と展示のための環境を提供するプログラムです。アーティストは、およそ3ヶ月間に及ぶFASでの滞在制作を通して、これまで追究してきた表現や培ってきた経験をカタチにするのです。毎年、4・5月に募集し、7~9月に制作、10・11月で成果発表の展覧会を開催しているそうです。

笑顔で語る小林絵美子さん笑顔で語る小林絵美子さん藤沢市は美術館をつくる予定はないそうです。通常の美術館運営とは異なり、FASでは「制作スペースの提供」という新しい視点の機能があります。小林さんは、FASは市に美術館がないことを逆手にとって、展覧会をどう構成し、どのように運営していくかが大事である、と強調されました。

中野仁詞さんの講演中野仁詞さんの講演 中野仁詞さんは、公益財団法人神奈川芸術文化財団の学芸員で、神奈川県民ホールギャラリーや神奈川芸術劇場で数々の現代美術展を企画されてこられました。FASの運営委員も兼務され、「AiF」の応募アーティストを評価する審査委員もされたそうです。

「AiF」の審査風景「AiF」の審査風景 藤沢市出身の毛利悠子さんは、磁力や重力、光など目に見えず触れることのできない力をセンシングするインスタレーションを制作している現代美術作家です。近年の活躍はめざましく、神奈川文化賞未来賞(2016)、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞[メディア芸術](2017)を受賞するなど、国内外で注目されています。FASでは、2017年12月に「毛利悠子 グレイ スカイズ」展を開催しました。藤沢出身の若手アーティストの活躍を、藤沢市民へ紹介するのもFASの重要な仕事なのです。

 FASでは、展覧会以外にも「マンスリー・イベント・プログラム」でワークショップを開催しています。4月には、「はじめての水性木版 描いて、彫って、刷る」ワークショップを行ない、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の市民が、一緒になって木版づくりを体験しました。7月には、「ただの石が宝石に!?」というユニークなワークショップも開催されました。

「AiF」の作品の展示風景「AiF」の作品の展示風景 このように、FASは、若手アーティストの制作・発表展や藤沢市出身のアーティストの企画展、市民が参加する様々なワークショップ、講座などを開催して、アートの新たな可能性と地域とのつながりを広める活動しているのです。これは、アートスペースの特徴的な活動と云えるでしょう。

 講演終了後に、質疑応答の時間が設けられました。

講演の後の質疑応答講演の後の質疑応答 藤沢市は人口約40万人で、人口は増加しているそうです。都心に近い、環境が良い、家賃が安い、という理由で、都内から引っ越してくる若いアーティストも多いそうです。そのような人たちが活躍する場を作っていけば、藤沢市の名をアーティストたちが広めてくれることに繋がっていく、とFASの存在意義を説明されました。

質疑応答の会場風景質疑応答の会場風景 また、美術館における収蔵庫問題についての質問へは、収蔵庫問題は全国的問題になっていて問題解決は難しいとのご意見でした。一方で、そのようなニーズから倉庫会社が東京都内に美術品を保管する大規模貸倉庫を作っていて、それを活用する動きも紹介されました。

 開館3年目となって運営は軌道に乗ってきたけれど、今後の課題も見えてきたそうです。所蔵品のデータベース化、美術界だけでなく市民への周知、展示施設の充実、国外アーティストとの交流、アーティストや作品の調査研究の充実、などだそうです。今後も、藤沢市の芸術文化拠点の中心的役割を担い、文化の街 藤沢としての価値を高めることをめざしていくと抱負を語られました。

 今回の文化セミナーは、3年後に開館予定の市民ホール内にできるギャラリーの運営を睨んで企画されたものです。市民ホールの新しいギャラリーを、藤沢市アートスペースがめざす「街の価値を高める」活動の拠点とすることで、市民ホールが小田原の芸術文化の中心的拠点になっていくのだ、と考えさせられた文化セミナーでした。

2018/09/07 10:39 | 芸術


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