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2014年09月16日(火)

小田原の街でこんな美術展

作家さんと言葉を交わそう

大きな文化芸術は草の根の活動が支える。小田原のギャラリーでは小さなグループ作品展が日々開かれている。ちょうどお盆休みで街は閑散としているとき、栄町のギャラリー新九郎とアオキ画廊は、こんな美術展で燃えていた。街の美術展にいったら、作家さんと言葉を交わしてみよう。作品にも自分にも新しい発見がある。
比奈の会文化部作品展      ハッスル会美術展比奈の会文化部作品展      ハッスル会美術展
花の中から瀬音が聞こえる花の中から瀬音が聞こえる
◆比奈の会文化部作品展◆
=高校同期5人の新しい挑戦=

比奈(ひな)は万葉仮名。「比奈の会文化部作品展」が栄町の伊勢治書店3階のギャラリー新九郎で開かれていた。比奈は、お雛さまでもあり鄙びたという片田舎にも通じる。比奈の会は、県立小田原高校第24期卒業の女子43名の集まり。昨年の同窓会で、新しい文化活動にチャレンジしようと作品展を計画した。現在の文化部員は、河野さん(画)、佐竹さん(織・染)、七五三木さん(書)、田代さん(クレイ)、野地さん(書・文化部長)の5人。この第1回作品展では、古今集の臨書、イタリア風景の淡彩画、和装にあつらえた織物、表情豊かなクレイドールなど個性あふれる60点余の傑作を展示し、それぞれの作家の作品の融合を求めて新しいコラボレーションの空間を創りだしている。
クレイドールからバラの香りクレイドールからバラの香り
=画と書のコラボから空間がひろがる=

文化部長の野地さんは、「既成のジャンルを超えた創造的な価値を生み出す作品の可能性を追求している」と話す。画と書のコラボレーションでは、睡蓮の淡彩画に静かな湖畔を謳う詩を配することで睡蓮の咲く空間がひろがる。ひとりの作家だけでは創りだせない世界がそこにある。クレイドールのなかに置かれた鮮やかなバラの絵と香るの文字は、辺りに香りが満ちているように感じさせる。瀬音の書をあしらった団扇を挿した水色の花瓶。周りのクレイの花畑から涼やかな水音が聞こえてくる。「違った感性を新たなひとつの作品とすることで、お互いの個性や主張を高めあう楽しさがある」と野地さん。その思いは会場づくりの過程にも生かされている。作品を展示した後も、作品どうしが調和しかつ主張するようにジャンルを交互に配置したり新たな作品を展示したりして、ギャラリーをいつも生きているものにしているとのこと。南町から訪れたという女性は「これだけいろいろな作品があっても、なにか調和のとれた空気感がありますよね」と感想を漏らした。
比奈の会のみなさん比奈の会のみなさん
=作品づくりワークショップ・コーナーも=

出展作家のなかには全国レベルの受賞者もいる作品展。団扇絵、絵葉書、篆刻、ビーズなど来場者が作品づくりを楽しめるワークショップ・コーナーもあった。作品鑑賞の後でいただいたお抹茶と和菓子でほっと一息。一人ひとりが無理をしないで負担を感じることなく制作し発表し、そして互いの感性を合せてまったく新しい価値を生み出す初めての試み。今後もさらに同期のメンバーを迎え、創造空間を拡げていきたいと野地さんは抱負を語る。来年、再来年の第2回目、第3回目がますます楽しみになる。
熟練の技の陶芸作品熟練の技の陶芸作品
◆ハッスル会美術展◆
=それぞれの世界観を深い感性で=

「このハッスル会美術展は、大きな美術展の日常から離れた作品より、それぞれの先生方の教職や生活を映して制作された作品ばかり。自分の家の部屋や廊下に置きたくなるような親しみのあるものばかりでした」とは訪れた人の感想。展示されている作品は、力強い筆致の風景から心象を描く静物もある油彩、季節感あふれる静物や山里を描いた水彩、一気に彫り上げたという木彫、ガラス材と写真のコラボレーション、鮮やかなステンドグラス、技を練り込んだ陶芸、書と木が主張する篆刻など、豊かな感性をもってそれぞれの世界を表現した作品が並ぶ。
花と器で描く心象風景花と器で描く心象風景
=身近な自然から心象風景まで=

県立城北工業高校の機械科の先生であった山本さんは、墨一色の日本画を出品している。アトリエの周りの草木や生き物など身近な自然を描いてみたという。デザイン科の先生であった二科会会員でもある香川さんの油彩は、色彩の配置が印象的な花瓶と花の静物画や富士を望む風景画。小田原郊外のどこかでみた景色で郷愁を誘う。同じく油彩で静物を描く二宮さんの作品は、単純化された花や器の同じモチーフに対し暖色や寒色の異なる背景を配して、深みのある空間を創り出している。それぞれの絵が違った心象風景を表わしているという。女性の訪問者2人は、この作品が印象に残ったと口を揃えた。
一気に彫り上げた木彫一気に彫り上げた木彫
=ハッスルはキャッスルから=

ハッスル会は、県立小田原城北工業高校の美術愛好する旧教員のグループ。美術展は、昭和55年の第1回から今回で34回を数える。ハッスルという会の名は、お城の英語キャッスルとの語呂合わせとか。出品している先生方が教鞭をとっていた学科は、機械科、電気科、デザイン科、建築科、社会科など、出展作品とともに多様。ここ数年の会場は栄町のアオキ画廊。
(取材くまゆき)

2014/09/16 17:19 | 美術

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