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2014年11月04日(火)

小田原の街でこんな美術展〜透明水彩と不透明水彩と岩絵の具〜

台風の近づく日曜日の10月12日、作品展をひらいていた本町の御堀端画廊と、栄町のギャラリー新九郎と飛鳥画廊を訪ね、図らずも、透明水彩と不透明水彩それに岩絵の具の異なる画材を使った作品展にであった。それぞれの作品とともに作家さんの方法論の一端をみた。
■御堀端画廊「第8回楽の会水彩画展」■
「美しいものを美しいと感じる感性を大切に楽しみながら水彩画を描いています。楽の会という名前はそんな気持ちからつけました」と、主宰の鈴木文隆さんはいう。約15人の会員が谷津公民館に通う。透明水彩絵具にこだわった作品はどれも爽やかで軽やか。大畑みどりさんの「妙高高原の春」は、いもり池湖畔の淡い桜に雪の残る妙高を望む。植松康行さんの「春の訪れ」、大内恵美子さんの「菜の花畑」と「あじさいの里」は、それぞれ小田原近郊の花の便り。並んだ風景画に季節の移ろいを感じとっていくのも作品展ならではの鑑賞か。ドイツ・ボーデン湖畔の町リンダウの港を描いた主宰の鈴木さんの作品は空の青と湖水の青の微妙な差に透明水彩の爽やかな空気感が漂う。
第8回楽の会水彩画展
会期 10月8日(水)-10月13日(月)
会場 御堀端画廊 小田原市本町1-1-36 電話0465-23-7819
主宰 鈴木文隆 0465-82-0353
■第14回新樹日本画展■
南町にあった日本画家上垣候鳥(うえがき・こうちょう)の画塾に通ったお弟子さんたちの日本画展。真っ赤な紅葉に日本画独特の色の深みを見る曽根艶子さんの「深秋」。庄野満子さんの「約束」には、携帯をいじる2人の高校生。となりにいるのに携帯で約束をするのが友人の証なのか、それともボーイフレンドにメールしているのか。現代的なモチーフ。新潟から来たという酒井英次さんの「金山さんの田」は、棚田をモチーフにした抽象画を思わせる作品。刈田から苗代がそよぎ夏を過ぎて実る稲穂へ、棚田一枚ごとに季節が移ってゆく。日本画には、金や銀がよく使われる。西洋画の金銀は輝きを強調するが、日本画では周りの岩絵の具にも深みを与えている。
 
第14回新樹日本画展
会期 10月8日(水)-10月13日(月)
会場 ギャラリー新九郎 小田原市栄町2-13-3  電話0465-22-1366
世話人 安藤勇 
■第23回アトリエ・ベルフォーレ展■
市内曽比のアトリエ・ベルフォーレと国府津公民館で指導する中村登茂雄さんの生徒さん7人による合同美術展。生徒のひとり本多八郎さんの「春のいぶき」は秋田県の角館に近い渓谷の早春。淡い山桜と雪解け水の色が遅い東北の春を暗示する。まだ春にならない冷たさが不安な気持ちにさせる。タイトルだけでは得られない感傷が作家さんとの会話によって深まることもある。片山美智子さんの「初夏の香り」は路傍のふとした光景をとらえる。田中宣子さんの「秋桜」は、秋の陽を思わせる背景にコスモスが印象強く浮びあがる。いずれもパステルの女性らしい作品。
 
 
中村登茂雄さんは、油彩画と水彩画やステンド・グラス制作も教える。水彩画では、不透明水彩の可能性を追求しているという。たっぷりの水で溶いたガッシュを背景に浮かびあがる「初夏の花」は夏に向かって伸びて行く。油彩の「日の出の岬」「朝焼けの燈台」「海辺の集落」は犬吠埼の朝を描いた3作。それぞれ射す光線の違いが波の躍動・燈台の存在・集落の生活を象徴する。女性のお客さんは「懐かしい風景です」と。たまたま街の美術展で見かけた風景画が思い出を新たにする。
アトリエ・ベルフォーレ展
会期 10月8日(水)-10月13日(月)
会場 飛鳥画廊 小田原市栄町2-13-12 電話0465-24-2411
教室 中村登茂雄 0465-36‐7855
(ゆきぐま)

2014/11/04 12:59 | 美術

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