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2014年11月11日(火)

小田原の街でこんな美術展~小田原市民会館で第79回西相展~

小田原で開催される美術展で市展とならぶ西相展(西相美術協会主催)を最終日に観に行った。具象・抽象・風景・静物・人物などあらゆるジャンルの100号の大作が溢れる会場には圧倒される。出展数は、洋画が一般41会員会友58、日本画が一般11会員会友15、彫塑は一般2会員会友2で、合計184点であった。なお、高校生の部では8校49点が参加していた。
■絵の人は何を思っているか 風景にはどんな風が吹いているか■
会員作品はもちろん、入賞作品の他にも印象に残った作品がある。会場に入った途端、清原太郎さん(会員)の「そのまま」が目に入った。「そのまま」という題はどこからきたのだろう。中心の人物は手を組んだ礼拝の姿に見える。よく見るとお面が隅に描かれている。いやお面ではなく裸婦の内面か。守田智子(会友)さんの作品「娘たち」は二人の若い裸婦像。青みを帯びた肌色で描く裸婦は、力強く何かを見据える表情をしている。後ろの手を組み見上げる娘は何を求めているか。いまさっきまで二人は何を話していたのか。絶望か希望か。木下泰徳さんの「満月」、例年黒を基調とした作品を出品している。今年は、闇に溶け込む木立の上に輝く満月。最初は明るい満月に目が行くが、しばらく観ているうちに浮かび上がってくる暗い木立の存在が気になった。明と暗。単に明るさの対比だけではない静謐な空気感と心象が生まれる。横田逸郎さんの「小田急線と矢倉岳」は、頂上は青く伸び裾野は緑に広がるどっしりとした矢倉岳が印象的。作家は、毎日のように見ている山の存在をあらためて絵と心に留めておきたかったのだろう。まだ夏の姿か。
第79回を迎えた西相美術展覧会展は、毎年9月から10月にかけて行われる小田原市民文化祭の参加行事。1931年の第1回相州美術会展から、太平洋戦争の混乱期を経て、1952西相美術協会として発足し、市民会館において毎年秋に開催されている。来年は80回を迎える。また、計画中の市民ホールのギャラリーが完成すれば、より多くの大きな傑作が展示されるようになると期待されている。
「小田原の街でこんな美術展」を報告しだしてから、作者の制作過程を知らない鑑賞者がどのように作品に近づくかあるいは作品が近づいてくるかを考えるようになった。「素晴らしいですね」という感想をよく聞く。儀礼的な賛辞か言葉に表せない感動か。鑑賞者は絵の前に立って何をみているか。ある作家さんは言う「観る人の自由」と。しかし、完全に自由というとそうでもない。作品の持っている主張(それは作家さんの主張でもある)の束縛から逃れられない。ある意味、束縛の少ないあるいは無い作品が、鑑賞する人にとって精神の自由を保証してくれ、それぞれの感動を生むものかもしれない。
(ゆきぐま)

2014/11/11 10:57 | 美術

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