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2015年03月06日(金)

小田原の街でこんな美術展 ~第16回怪作展~

世の中には自分の世界と同質なものと異質なものがある。世界が小さく見聞も限られていた昔は、ほとんどが自分に仇する異質な世界であったろう。そこには奇怪なもの怪物が存在した。いまも妖怪ウオッチなるものが流行っている。しかし、「怪」という言葉に、異質と同時に自分自身との同質性をみる。自分の中に隠れ潜む不思議を探求することとも読める。すなわち「怪」は自己創造の世界である。
■多彩・多才の「怪作」■
2月11日から16日まで、栄町のギャラリー新九郎で開催されていた「第16回怪作展」を訪ねた。「怪作展」は、県立小田原高校の先生方や卒業生のグループ展。油彩、水彩、アクリル、写真、陶芸、小説、漫画、音楽、イラストなどなど、出展15人の多彩多才の「怪」である。異質なジャンルが一人の作家から湧き出ているのも「怪」。ギャラリーに入ってしばらくは、どう見ていいか迷った「怪」もあった。まさに「怪作展」だ。
■個性豊かな野菜の妖精たち■
ポニーキャニオン&シュガー共同企画のキャラコン・オーディション2012で優秀賞を受賞した石田葵さんのキャラクター「きゃべお」のまわりでは、「きゃべむら」「なのはなちゃん」「ミカーンズ」「しまちゃん」「トマト忍者」など、野菜の妖精たちがなかまを増やして畑ライフを楽しんでいる。グッズから4コマ漫画まで多彩に展開している。石田さんは自らを「あおちゃん」と呼ぶ。
■歴史の連続性を語るモノクロ写真■
大淵貴志さんの「時代の共存」は、東京・丸の内の三菱1号館と三菱商事ビルとの対比を語るモノクロ写真。いや新旧対比というより歴史の連続性をその間にみる。同じく「冬のシナプス」は、鎌倉のお寺の庭でふと見上げた風景とのこと。冬の曇り空を背景に、葉を落とした枝がシナプスのように伸びている。人の脳ではシナプスの成長が思考を紡ぐ。古刹とシナプスの対比が怪。
■みる人の心が浮びあがる顔■
「To the New World」は、佐々木美直子さんの大作。キャンバスいっぱいに走る細線のなかに浮かび上ってくる朦朧とした人の顔。みる人の隠れていた心象が形となって現れる。輪郭のない無表情な顔に自分の心をそれぞれ重ねる。画題「To the New World」は新しい世界の創造を暗示している。読者は、ここにどんな顔をみたか。
■「怪」な空間とつながる引き出し■
美術大学で陶芸を専攻する和田真美さんの「引き出しお弁当箱」。しゃれた陶製のお重についた引き出しをそっと開けてみると、小さなオカシとエビが出てくる。引き出しを開けるときのワクワク感を陶で表現したいという作者の思いがこもる。大人になってもお弁当のふたを開ける楽しみは変わらない。引き出しもお弁当も不思議な空間とつながっている「怪」である。
(記 ゆきぐま)
 
□第16回怪作展
□会期 2015年2月11日(水)-16日(月) 終了
□会場 ギャラリー新九郎 小田原市栄町2‐13‐3 
     電話0465‐22‐1366

2015/03/06 09:56 | 美術

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