■身近な風景から異国の風景まで多彩■
ギャラリー新九郎の会場には、小田原や湯河原の身近な風景から、大雄山最乗寺や鎌倉建長寺のような古寺の風景、横浜や東京の都市の風景、フランスやチュニジアなど外国の風景まで、多彩な152点が展示されていた。このスケッチ展の作品をみたとき、「有名な風景」や「感動的な風景」だけでなく、ともすれば見逃したり見流したりしてしまう風景に気付いた。そこにはスケッチならではの風景があった。ある風景を目の当たりにしたとき、どのような動機づけによって、スケッチの手が動くのか。そこに立ち止り、イーゼルを据え、画用紙を開き、筆を下すのか。ふつう、風景はどんなものであっても観光的な感覚で楽しむことが多いが、瞬間的な作為のない感動がスケッチにはある。そこに推敲を尽くした作品とは異なる素直な魅力がある。
(ゆきぐま)