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2015年04月28日(火)

小田原の街でこんな美術展 ~小田原・箱根「木・技・匠」の祭典~

ハルネ小田原(HaRuNe)で開催されていた「小田原・箱根『木・技・匠』の祭典」会場に、「春ね!」というにはまだちょっと早い3月8日の日曜日午後6時の終了間際に駆け込んだ。催しのタイトルにある「木・技・匠」は、素材の追求、技術の追求、精神の追求と読める。「若手木工作家」の集まる「いぶき会」会場では、終わり間近ということもあって、お客さんと作家さんたちで賑やかな雰囲気だった。文化レポートの取材で街なかの美術同好会の作品展を訪れるとき、終了間際に行くと搬出の作家さんたちが集まっていていろんな話を聞ける。少々あわただしいが、こんなときに美術展に行ってみるのもいい。
■それぞれ追求する匠の技■
会場に並べられた個性ある作品をみると、商品というだけでなく、それぞれ追求する匠の技が見えてくる。デザインの追求、彫りの追求、塗りの追求、日用の追求、美しさの追求、楽しさの追求…一つひとつを手に取ってみると作家さんたちが削り組みあげているときの集中した気持ちが伝わってくる。波打つように彫った曲線の交差するデザート・トレイには、「自然の恵み」を盛るばかり。独特の手触り感で存在を示す木の名刺入れ。ちょっとしゃれた寄木のアクセサリートレイには、木の指輪やペンダントが似合う。草木染の服に似合う木のイヤリングは、自然の風を感じる。竹の丸みをそのまま使った漆塗の銘々皿には、季節の和菓子を置きたい。
■お客さんと職人さんの対話から生まれる創造■
敢えて言えば、もっと思い切った作品があってもよかったかなという印象。また、一人ひとり作家さんのコーナーを設け、そこで個性あふれる「大作」を展示しながら、展示した作品にまつわる素材・技法・制作過程をじっくり聞くしつらえがあったらいいなとも思う。一般の人には単に「木」としか見えない作品でも、構想から素材選び、珍しい木や塗りの方法、削ったり掘ったり組んだりする苦労、作品や製品として完成させる工夫など、対話のなかで隠れた価値が伝わるだろう。作家さんにとっても、お客さんとの会話から新たな創造が生まれるかもしれない。

小田原・箱根「木・技・匠」の祭典
  若手木工作家(いぶき会)木工ふれあい広場
期 間 2015年3月6日(金)~3月8日(日)
場 所 小田原地下街ハルネ広場
問合せ 箱根物産連合会 小田原・箱根「木・技・匠」の祭典実行委員会事務局
■ゆきぐま追記■
◇昨年の9月に文化レポートを投稿し始めてから、これまで16本(19件)となりました。「小田原の街でこんな美術展」をタイトルに主に美術同好会の作品展をレポートしてきました。レポートを書くにあたって、作品を制作された方々の動機や想いを伺うことがありましたが、それぞれ熱く語っていただく場合と観る人の自由に任せたいという場合がありました。レポーターとしてその間にあって、あらためて美術作品を文章にすることの難しさを感じてきました。美術は美術、文章は文章という切り分けはあるでしょうが、時としてこの垣根をまたがなければならないこともあります。また、これもひとつのジャンルでしょうか。
◇小田原には、まだまだたくさんの美術制作グループがあり、作品展が開かれています。27年度も、これまで取材できなかった作品展や作家さんを更に訪ねて、「草の根の小田原美術界」を紹介して行きたいと思っています。この蓄積が、小田原に文化ありきの一端となると幸いです。

2015/04/28 13:26 | 美術

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