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2015年07月28日(火)

小田原の街でこんな美術展 ~若い感性があふれる ・ こみね展~

■ミラーの中に日常の世界を見つける■
散歩をしていたとき、草むらに倒れたカーブミラーを見つけた。ふとミラーを覗きこむと、そこには新鮮な風景が広がっていた。なにかそこに真実を見たような気がした。ミラーの外の風景は何だろう。「映り込む日常」の制作者Aくんはそんな思いだったのかもしれない。カーブミラーに映った風景は、空は青く雲は白く草は緑の日常を描いている。ミラーの外の空は黄緑に、草は紫色に塗られている。遠くの街は暗い灰色だ。日常であるべき風景が非日常的に描かれている作品。鋭い感性の持ち主だ。全日本学生美術展佳作賞を受賞。
■多感な時代の不安■
Bさんの作品「靡く(なびく)」は、様々な三角形が、人物の見つめる左上から散るように流れてくる。大小のかけらが女学生の靡く髪と戯れる。やや不安げに見つめる先には何があるか。流れ去った青い破片は過ぎ去った時か。多感な時代の理想なのか不安なのか。人物がやや左寄りの構図は思いの強さを感じさせる。黄緑の背景の透明感が若さを象徴している。二科神奈川支部展入選作品。
■社会の浸食に耐える少女■
まわりの木の葉や枝と重なり合って溶け込んでいるような少女。Cさんの「侵蝕」。少女の手は胸をしっかり掴み、表情は祈るように見上げている。右に流れる髪と背景の抜けた空が何かしらの不安も感じさせる。少女は大人の世界に対し何かを主張しようとしているのか、それともその侵蝕に耐えているのか、あるいは淡い期待感か。若さゆえの迷いを表現しているように見える。神奈川県高等学校美術展入選作品。
■いつも見ている風景が心の内面に■
「いつもの帰り道」は、錆びたガードレールの緻密な描写が印象的。毎日見ているなんでもない風景が、知らず知らずのうちに作者の内面に入り込む。「海の中は輝いている」は、二科神奈川支部展横浜市教育委員会長賞の受賞作品。深い海の岩の陰に海水のフィルターを通して差し込む光が様々な生命を映し出す。「花を纏う少女」の表情は、なにかを見つめ憂いを見せる。纏う赤い彼岸花は、少女の想いが湧き出しているようにも見える。アオキ画廊の会場には、高校生らしい巧まない筆致と新鮮な感性が溢れている。未完の余裕というか、ほっとする空気がある。ふだんの研鑽の作品も展示されていた。石膏や人物のデッサン。力強い線、緻密な線、鋭い観察力…これから傑作が生まれた。
■相洋高校美術部 この1年の活動成果■
「こみね(小峰)」とは相洋高校のある丘陵一帯をさす。「こみね展」は、相洋高校美術部の生徒さんたちによるこの1年間の成果を問う自主作品展。栄町のアオキ画廊で開催されていた。今回で4回目となる。出展されている作品には50号の大作もある。全日本学生美術展、神奈川県高等学校美術展、二科神奈川支部展などの公募展で入賞・入選するなど傑作がそろう。美術部員数14名。
(記 ゆきぐま)
こみね展
期 間 2015年7月9日(木)-13日(月) 10:00‐18:00 (終了)
会 場 アオキ画廊 小田原市栄町2-13-20 0465-23-5624
連絡先 相洋中・高等学校 伊勢岳彦 電話0465-22-0211(高校) Email:tise@soyo.ac.jp

2015/07/28 09:02 | 美術

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