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2015年11月13日(金)

小田原の街でこんな美術展 ~第46回世紀展~

10月の半ば、井上三綱(いのうえさんこう)のお弟子さんたちや縁の作家さんが集まる「世紀展」が、栄町の飛鳥画廊で開かれていた。井上三綱は、小田原入生田にアトリエを構え自らの画境を切り開いて、現西相美術協会の結成にも携わり、国際的にも活躍しながら小田原美術界の発展に尽くした画家。世紀展のメンバーは、今の小田原美術界を代表する錚々たる作家さんたちで、飛鳥画廊の落ちついた設えとともに芸術的空間を醸し出している。
■小田原美術界の一角がそこにあった■
画廊を入った正面には清原太郎さんの「花のある風景」が迎える。春の芽生えの中に鮮やかなクリムソンの花が輝く。その先にはカサブランカの裏町を描く山本三希雄さんの「ラビリンス」がある。迷路のような路地の左右に開く扉の中にある見知らぬ生活に迷い込む。宮部玲子さんの「大空へ」は気球をモチーフにする。ひとつひとつの気球の微妙な傾きが動的な画面をつくる。気球の影があるのは、「これから大空へ」向かう暗示か。小田楷さんの「イエメンの街角」は明るい色彩に満ちる。アラビア半島紅海の入り口に位置し、かつてはアラブ文化の発祥の地という。堀丁介さん「子育て母子像」の2点は、それぞれ観音菩薩と聖マリアの像が背景に浮かぶ。信仰を超えた母の愛の普遍性を描いている。廣井早苗さんの花を描く3連作「早春」「初秋」「秋のかおり」は、同じブルーの色調のなかにそれぞれの季節感を醸し出す透明水彩画。奥まった一角には、師井上三綱の素描「ピアノ」がお弟子さんたちの作品を見守るように飾られていた。小田原美術界の一角がこの画廊にあった。
■作家の創作の思いを読みとる■
美術展へ行って「見て」帰ってくるだけでは不足と思う。作品に込められた作家さんの筆の跡を知りたい。よく芸術は「鑑賞する人の感じるがまま」という人もいるが、そうは思わない。「みる」人のフィルターはかかるものの、もとは作家の想念である。文化レポートを書くときに、必ずしも作家さんとお話しできるわけではない。多くの場合、「感じるまま」にレポートを書くことになる。それが作品を「正しく」レポートしているかいつも気になっている。(ゆきぐま記)
第46回世紀展
会 期 2015年10月14日(水)-19日(日) 終了
会 場 飛鳥画廊 小田原市栄町2-13-12   電話 0465-24-2411
連絡先 山本三希雄 電話 0465-24-1354 

2015/11/13 10:19 | 美術

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