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2017年09月27日(水)

現代美術展・小田原ビエンナーレ 2017 「感性の磁場II」見学、鴨宮・飯山邸にて

9月18日の休日、古民家の前にこんなのぼり旗を見つけました。

 

「小田原ビエンナーレ」

何か展覧会が行われているようす。

場所は、巡礼街道「JAかながわ西湘」交差点から賀茂神社方面に入ったところです。

以前から、斜め向かいの岩瀬邸とともに気になっていたお宅でした。

 

中へ入ると、一人の男性が出て案内してくれました。

ここは飯山邸といい、明治時代に建てられた民家とのこと。家主さんは今も隣の住宅に住んでおり、ここは時々催事等に貸しているそうです。

 

間取りはいわゆる田の字で、南の庭に面した畳敷がふた間、奥に板敷がふた間。


そこに、紙で造られたモダンアート作品が展示されていました。
 

奥の床の間に至るまで、紙箱の模型のようなものが幾つも。

 

 

いずれも白い不等辺な箱状で、面上に木片や折り曲げた紙片が構造物のように貼り付けられています。

案内してくれた男性は「どう解釈しても良いんです」と。

この人が作者の飯室哲也さんでした。

 

飯室さんは以前は藤沢市に住み、発表の場は都内など広く行っていましたが、箱根町に移住後、伊勢治書店・ギャラリー新九郎で展示したのをきっかけに、小田原市内での活動も続けておられます。

過去作品の写真を幾つか拝見させて頂きましたが、紙のほか流木や廃材などを用いて線的に表現(なかなか文字では説明し難い)しておられる作家さんのようです。

今回の作品も材料はおもに菓子箱のボール紙を使用しています。

部屋に上がり、高見から眺めたり近づいて細部を見たりしていますと、バラバラのようでいて何か規則性があるようにも思えてきます。

城の縄張りのようでもあるし、アクロポリスのような古代都市にも見える。また、無数の埋め立て地にも。

 

「軍艦島みたいにも見えるでしょ。中近東の市街みたいと言った人もいる」

スケール感も見る人それぞれ。

整然とグリッドに置いた場合と、このように散らした場合とでは見え方が大分違って見えるそうです。

作品タイトル

『過現未の循環 ― 紙立体』

 

その題から改めて俯瞰すると、過去・現在・未来の三世に普遍する人の営み、その骨子を記号化したようにも感じられました。

《青年時に出会った作家にシュッビッダーズがいた。
  ジャンク(廃品)によるコラージュの世界が広がった。
   MERZ(メルツ)が繰り返し制作された。
    メルツバウも構築された。第二次世界大戦では収容所に収容された。
     収容所の中では、ウルルソナタが響いた》
(飯室哲也/展示図録より)
 
 

その後、もう一人作家さんに話を聞くことができました。
板敷の間の方に作品を展示している堂免(どうめん)和実さん。
 

この作品を見た第一印象は、正直な感想を言うと、何というか霊的な印象を受けました。

古民家の雰囲気も多分に影響したのかもしれませんが。

先が尖った白い紙巻きが立ち並び、窓からの風にそよぐ姿に、意思というか心のようなものを感じました。

炎が風と雲を起こすように、目に見えない意志的なものが集まり形になろうとする、そんな不思議な感覚です。

「伊勢山皇大神宮で展示した時も、そういうお客さんいましたね。何かが入っていると・・・」
 

作品タイトル『Nostalgia』

 

使っている紙はトレーシングペーパー。半透明な質感が作品に合うのだとか。

光量や向きによっても印象が大きく変わりそうです。

作品の配置や構成は会場を見てから決めるので、つい準備に時間がかかってしまうと仰っていました。

《魚類や動物、地平線にまで広がる植物の群生など圧倒的な生命が漲っている様子に魅了され制作している。それは、生まれる前の記憶に遡っていく気がする》
(堂免和実/展示図録より)
 
 
気がつけば1時間近くが経過。
はじめは古民家を少し見学するつもりが、なんとも不思議な一期一会になりました。
自由なモダンアートも面白いですね。
モノを通じて観るのは、結局、自身の内面なのかもしれませんが。
 
(そうこ記)
 

2017/09/27 14:30 | 美術

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