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2019年12月06日(金)

『松本剛吉を知っていますか ~十字町ヒストリア特別企画~』

当日の配布資料当日の配布資料
 11月21日(木)~24日(日)まで、小田原市南町の西海子小路に面した旧松本剛吉別邸の邸内が初めて公開されました。
 この建物は、平屋建て寄棟造りで市の歴史的風致形成建造物に指定されています。昨年度、小田原市により公有化されたことを機に、第3・第9代内閣総理大臣、山縣有朋と親交が深く貴族院議員として政財界の中枢で活躍した松本剛吉氏を、広く知っていただきたいとの思いから旧十字町地区(現小田原市南町界隈)を拠点とし、地域の歴史について調査・研究・発表をする任意団体「十字町ヒストリア」のみなさんが協力し、『松本剛吉を知っていますか~十字町ヒストリア特別企画~』を企画されたのだそうです。
 数寄屋風主屋に展示された『松本剛吉とその時代』(1862年~1929年)をテーマにした展示は、明治31年7月、ときの総理大臣大隈重信任命の「逓信大臣秘書官辞令書」をはじめ、「政治日誌」(当時の国政治史を探る上で最も重要な史料の一つとされる)、山縣有朋(含雪老人)書「黄樹庵」、勲四等旭日小綬章など、当時の名立たる政界人との公私的交流の深さが伺え、日常では拝見する機会のない貴重な史料が陳列され、建物の古さと相まってか、なおさらに荘厳でした。
山岡先生による点茶山岡先生による点茶
 23日(土)午後1時30分からは、小田原市学芸員の山口氏による『松本剛吉と政治日誌』と題した講演が行われ、期間中、別棟の茶室『雨香亭』では裏千家の山岡綠一郎先生による呈茶が振る舞われました。
お茶室への入口お茶室への入口
 築山や水景を伴う広い庭園は、相模湾や箱根山を借景とし、山や川の流れ、滝等の自然な姿を表現する典型的な近代庭園です。茶室前庭は紅葉の木に、晩秋の木漏れ日がキラリと光り葉色がひときわ映えていました。茶室の入り口は大変特徴的です。一般的に知られている日常と非日常の境界を分けるための小さな躙(にじ)り口と違い、半間ほどの開放的な障子を据えてありました。日本家屋の上がり框(かまち)のような段を上がり、立ったままで中に入ります。
 器は四季感のある紅葉が描かれた器をご用意して下さり、お菓子は皮に摩りおろした山芋の入った薯蕷饅頭、お抹茶は京都宇治の上林さんの香り立つと言われる五雲の白。先生がおっしゃるとおり、釜で点てたお茶はやわらかく、甘く感じたお菓子の餡は、お抹茶の甘さですっきりとした味になり美味しく、一期一会、大変結構なおもてなしをいただきました。
茶室の玄関茶室の玄関
 呈茶は立ち振る舞いよりも、気軽に抹茶を楽しむための茶席です。私もゆったりとした気分で一服を楽しみました。ご一緒した先客の方は茶道を心得ているご様子で、この器は「何なに焼ですね?」としつらえを尋ねられたり、躙り口では千利休の話題に触たりと、『和敬清寂』の漂う雰囲気の中、歴史を堪能した別邸訪問になりました。
 この地での政治の幾何かの裏話に思いを馳せ、非日常の体験を記憶に刻む感慨深い一日でした。

  MOKO:記

2019/12/06 16:34 | 歴史

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