市長の日記

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2018年10月19日(金)

江之浦測候所一年

 18日午後、小田原文化財団の「江之浦測候所」を訪ねました。昨年10月にオープンした、現代美術作家の杉本博司さんの表現活動の集大成ともいうべき空間。国内はもとより、海外からも連日多くの来場者を迎えており、その存在と、ここを拠点とした杉本さんの表現活動の動静は、各方面から広く注目されるようになっています。この日は、既に熱海MOA美術館でも発表されている、千利休を題材にした新作能が、石舞台にて披露されるとのことで、私も拝見させていただいたものです。
 能の上演に先立ち、改めて広大な施設内をひと回り、杉本さんのご案内にて巡りました。風神雷神をテーマにした作品の多い杉本さんだからでしょうか、ここでの催しは風雨となることが多かったのですが、この日は秋らしい爽やかな晴天。広大な相模湾と青空を背景に、100mギャラリーや光学硝子舞台などの建築物はクッキリと映え、植えられた各種の樹木や、大切に育てられてきた苔なども、既に根付き、土地にしっくりと馴染んできたように見えます。
 昨年10月にオープンした、いわば第1期のエリアに加え、杉本さんは更に海岸線に下る樹園地など、施設空間の拡大を進められています。以前は長年の耕作放棄で荒れていた斜面地が開墾・整備され、柑橘園、竹林、榊(さかき)林などがスッキリと展開する、見晴らしの良い斜面になっています。この一帯に、杉本さんがこれまでに造ったアート作品などが置かれ、昔から存在していた段々畑の石積みなどと不思議な調和を見せていました。自然景観、古(いにしえ)からの農耕風景とも溶け合った、第2期ともいえる江之浦測候所の新たな空間は、第1期と違う表情をもって、多くの人たちを惹きつけ、魅了していくことでしょう。

 午後3時からは、石舞台にて、新作能「利休―江之浦」が上演されました。秀吉の小田原攻めの折り、数か月に及ぶ参陣の間、秀吉が茶の湯を愉しむ空間として江之浦に「天正庵」が設けられ、利休を呼んで茶をたてさせていたという故事にちなみ、利休の弟子でもあった細川忠興が久しぶりに庵の傍を通った折、利休の霊が現れ、死を命ぜられた秀吉への恨みを述べる、という趣向の能として、杉本さんが企画・監修したものです。石舞台に設置された能舞台を取り囲むように、各界の著名人も含め約300人の観客が見守る中、次第に黒雲が流れ刻々と移り行く空模様、にわかにザっと吹き抜ける風、コオロギの鳴き声も演出に加勢して、あたかも利休の霊がその場に降臨したかのような舞台となりました。杉本芸術の奥行の深さに、改めて感じ入った次第です。

2018/10/19 14:04 | 未分類


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