小田原市

梅のつぼみがふくらむ頃

小田原邸園物語

「谷崎くん、久しぶりだね。小田原にいるって聞いたけど何してるの?」
 
大学を卒業してから2年後のある日、偶然再会した透と桜子。
 
清閑亭、小田原文学館、松永記念館の三つの邸園(邸宅+庭園)を舞台に、透と桜子の二人の日常が交差する様子が、二人のメールのやりとりを通して紡がれます。
小田原の魅力を発信する新しいかたちの物語。
ぜひご一読ください。
2015年07月26日(日)

7月26日 21:38

桜子さん

梅雨も明けて毎日暑いですね。
なにかと騒がしい小田原ですが、毎日それなりにせわしなくやっています。
そちらはいかがですか?


大森の叔母から先日電話があって、小田原は火山灰が降っているのか? と訊かれましたが。
東京ではもう箱根は噴火しまくってることになってるみたいですね。
実際は箱根宮ノ下あたりでも至ってフツーの日常なのですが。

逆に、この辺の人は最近箱根に通いはじめてる、という声も聞かれます。
スいてて、温泉とかゆっくり過ごせるらしく、すごく評判がいいです。


清閑亭にはハギの花が咲き始めました。
萩は秋というイメージですが、実は夏の盛りにも可憐に風に吹かれています。
それから、7月1日から小さな「風鈴市」を始めました。
小田原は戦国時代から武士の町で、鋳物師も多く住み、
今では一軒だけになってしまいましたが、
「小田原の砂張(さはり)鋳物」
は地元の名産として知る人ぞ知る存在です。
黒沢明の『赤ひげ』にも印象的なワンシーンに小田原風鈴が登場します。
完璧主義者の監督が、全国から集めた風鈴の中で一番いい音色のものとして選んだらしい。
萩と風鈴、かすかに吹く風に一時の涼を刻む、
あの時、そんな情景の中に自分は確かにいたんだ、という追憶を、
いつか懐かしく思う日が来るような気がします。


実は先日、身近な人が亡くなって、
「桜の記憶」とか「萩の風鈴」とか、最近はそんなことをよく思う。

清閑亭の玄関脇で「大正五年」と印字のある十銭硬貨を見つけたことも、
影響しているのかもしれません。
仕事から解かれた異郷の酩酊に、車夫へ上機嫌の小遣いを渡した黒田侯爵が、
鉄平石に小さくつまずいたその拍子に、労せずこぼれた小さな硬貨。

そんな些細な記憶の重なりの中で、明日も雨になりそうですが、
100年の時間の物語をしずかに読むような日々を過ごしています。


またメールできればと思います。
桜子さんの近況はいかがですか?
では

2015/07/26 21:38 | 汐風を感じる庭で


 
 
 
 

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