小田原市

所信表明・施政方針

平成24年度施政方針(平成24年2月16日)

 平成24年小田原市議会3月定例会が開会し、平成24年度の当初予算案及び関連諸議案をご審議いただくに当たり、施政に対する私の所信の一端を申し述べさせていただきます。

1 はじめに

 東日本大震災は、私たちが享受してきた暮らしや経済のあり方を根本的に見直す大きな転機となりました。災害対策を強化していくことは当然でありますが、今後、大震災の記憶を風化させず、私たちがどのような地域の姿をつくっていくのかという問いが投げかけられています。

 

 一方で、大震災発生前から、わが国の少子高齢化は世界がこれまでに経験したことのないほどの速さで進行しており、これに対応した福祉や教育のあり方のほか、先行き不透明な経済情勢への対処など、わが国の現状を打開するビジョンを将来にわたって明確に見通すことが難しく、具体の処方が国民全体で共有されるには至っておりません。今後はさらに、震災復興と原子力発電所事故への対応に莫大な財政需要と長大な時間を費やすことになります。

 

 このような状況において、私は、未来の地域社会のデザインに基づき、市民の暮らしや経済のあり方を真に持続可能なものとすることに、全力を傾けるべきだと考えております。社会経済情勢の変化に細心の注意を払いつつも、私たちが関わり、変えていくことのできる目の前の現実に真正面から向き合うとともに、一人ひとりがはっきりと自覚した行動をとっていくことが求められているのです。

 

 私は市長就任以来、市民の力・地域の力を土台とした様々な取組に着手し、本市が抱えている課題を解決するための、より普遍的な仕組みづくりを進めてまいりました。これは、地域を構成する多様な主体の課題解決力を高めていくことが、持続可能な地域社会をつくることにつながると考えたからです。

 

 平成23年度は、私たちが目指す方向性と取り組むべき事業を示した第5次小田原市総合計画「おだわらTRYプラン」がスタートしたとともに、市民力と協働を柱とするまちづくりの原理原則を定めた小田原市自治基本条例を1月1日に施行し、新しい小田原の基本的な枠組みを整えることができました。

 

 同時に、小田原版「新しい公共」の実践例である無尽蔵プロジェクトが進化するなど、民の力が顕在化してきたことを大変心強く感じております。清閑亭を活用したまち歩きや小田原の魅力を発信する「ウォーキングタウン小田原」、中心市街地を舞台にまちなか美術館を展開する「市民による芸術文化創造」、片浦レモンサイダーなどの商品化を進める「片浦みかんプロジェクト」など、当初の予想を超えた成果と新たな協働の形が続々と生み出されています。

 

 そして、東日本大震災の際には、多くの支援物資や義援金が市民の皆様から寄せられたほか、被災地でのボランティア活動に参加していただくなど、小田原市民の力が十分に発揮されました。また、本市における津波避難対策の取組が、地域の皆様との協働により進められ、地域の絆の強化にもつながっているのは、地域コミュニティを舞台とした様々な取組の積み重ねがあったからにほかなりません。

 

 市民の力、地域の力を原動力に進めてきたこれまでの歩みは、着実にその実体が育ち、前に進んでいます。そして、大震災後の局面にあって、その意義は一層明らかなものとなりました。私たちはこれからも、自信と誇りを持ち、迷うことなく新しい小田原への歩みを進めていかなければならないのです。

2 市政運営に当たっての基本方針

 平成24年度の市政運営は、おだわらTRYプランに掲げる「新しい公共をつくる」「地域資源を生かしきる」「未来に向かって持続可能である」という命題に向き合うとともに、東日本大震災後の地域社会を創造する現場を担っているという使命感を胸に、本市の将来都市像「市民の力で未来を拓く希望のまち」の実現に全力を傾けてまいります。

 

 被災地では、先行きを完全に見通すことが難しい状況にあっても、希望を持って復興の歩みが着実に進められています。今を生きる私たちの使命は、自然環境と調和し、共存でき、信頼できる人々との確かな絆に支えられ、そこに暮らす人々のいのちをしっかりと守り育てる基盤を備えた、真に持続可能な地域社会をつくりあげていくことです。こうした使命を真摯に果たしていくことが、私たちの暮らしに本当に大切なものは何かという問いに応えていくことになるのです。

 

 今、地域主権改革の流れに沿って、国や県が担ってきた役割の多くが基礎自治体である市町村に移りつつあり、また、社会保障と税の一体改革の素案が示され、わが国の社会基盤の改革が緒に就こうとしています。こうした流れと併せて、少子高齢化などを背景としたわが国の難局を打開していくためには、暮らしに最も身近な基礎自治体において、まさに私たちがこれまで進めてきた市民自治のアプローチを実践していくことが必要です。

 

 そして、市民自治の主役である市民の皆様の最良のパートナーとなるのは市職員であり、その資質向上は不可欠であります。同時に、厳しい財政状況にあっても、多様化する市民ニーズに対応したより良い行政サービスを確実に提供するとともに、市民の皆様との協働を創造的に進め、全職員一丸となって新しい小田原への進化に貢献してまいります。

 

 私たちのまち小田原は、産業、文化、自然、まちなみ、市民活動、郷土愛など国内でも類を見ないほどの豊かな地域資源を有しています。この恵まれた条件を生かし切り、課題解決への道標となる実践を展開し続けると同時に、震災後という今しかない困難な時期だからこそ、小田原が抱いている素晴らしい様々な可能性を未来の地域社会のモデルとしてこの地で具現化し、時代の閉塞感を突破したいと考えております。

3 平成24年度の重点方針

 そこで、おだわらTRYプランにおいて未来への投資と題して位置づけている先導的施策の推進に重点を置き、実践的な力を備えたまちづくりの担い手を育てる「小田原まちづくり学校」などを通じ、関連する取組を発展させながら、地域社会づくりのモデルとしての新しい小田原の姿を鮮明にしてまいります。

 

 「未来を担う子どもを育む」につきましては、地域ぐるみで子育てに取り組むスクールコミュニティや小田原の良さを生かした教育などを推進し、子どもたちが小田原に誇りと愛着を持って成長できるまちづくりを展開します。

 

 「ものを生み出す力を育てる」につきましては、地場農林水産物の新たな価値を創造する六次産業化や地産地消、ものづくり分野の活性化を推進するなど、地域資源を生かし、民の力を最大限に発揮していただく協働のスタイルにより、地域経済に活力を生み出します。

 

 「都市の顔をつくる」につきましては、小田原地下街の再生やお城通り地区再開発事業を着実に進めるとともに、民間活力によりにぎわいを創出するなど、中心市街地における都市機能を高めていきます。

 

 「自然環境を再生する」につきましては、市民との協働により、豊かな自然環境を再生する活動やエネルギーの地域自給に向けた検討を進めるなど、人と自然とが調和したまちづくりを展開します。

 

 「文化力を高める」につきましては、芸術文化創造の拠点となる市民ホールの建設に向けた取組を着実に進めるとともに、文化振興ビジョンに基づき市民による芸術文化活動を支援するなど、小田原を舞台に様々な交流を生み出していきます。

 

 「地域のつながりを再生する」につきましては、多様な主体の連携や担い手の育成を図り、ケアタウン構想の推進や地域防災活動の支援などの取組を一層進めることにより、地域の課題解決を図るための仕組みを構築していきます。

 

 そして、何よりも東日本大震災の教訓を踏まえ、いのちを守る小田原の実現に向け、情報伝達手段の拡充や安全な避難施設の整備を優先的に進めるなど、災害対策をより一層強化します。

 

 主な施策と事業につきましては、おだわらTRYプランにおけるまちづくりの目標と政策の方向に沿ってご説明いたします。

4 分野別基本方針

(1) いのちを大切にする小田原

【福祉・医療】

 

 地域福祉につきましては、市が策定する地域福祉計画と小田原市社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画を両輪として、ケアタウン構想を着実に推進します。そこで、ケアタウン推進事業を10地区に拡大して展開するとともに、高齢者や障がい者など支援の必要な方々の日常生活を支える生活応援隊事業を実施します。また、民生委員児童委員などによる地域内での見守り活動の効率化と、災害時における要援護者支援体制の充実に向け、要援護者の情報を一元化し地図情報として管理、共有する仕組みを整えます。

 

 高齢者福祉につきましては、本年度からスタートする第5期おだわら高齢者福祉介護計画に基づき、高齢者の自立支援、介護予防、生活支援などの施策を総合的に推進します。また、地域包括支援センターの機能を一層強化し、地域における高齢者支援体制を充実させてまいります。

 

 障がい者福祉につきましては、身近な地域での障がい特性の啓発事業や障がい者との交流事業を継続し、ノーマライゼーション理念を普及させていきます。また、障害福祉サービス事業所や地域活動支援センターの運営支援と併せ、障がい者の避難場所としての機能の整備を支援します。さらに、障がいを持つ子どもたちに対するきめ細かなサービスを総合的に提供します。

 

 健康づくりにつきましては、小田原市健康増進計画を策定し、食育の推進と併せ、健康寿命の延伸と生活の質の向上に向けた取組を総合的に進めます。また、市民一人ひとりの健康への自覚と認識を深めることに加え、地域に根差した健康づくり活動を推進するとともに、生活習慣病などの予防と早期発見・早期指導に向け、特定健診・特定保健指導やがん検診の受診を促します。

 

 地域医療につきましては、関係機関と連携を図りながら、引き続き誰もがいつでも適切な医療を受けることができる医療体制を確保します。また、小田原看護専門学校の整備への支援とともに、事業主体である医師会と連携しながら、本市の福祉施設の整備を進めていきます。

 

 市立病院につきましては、小児医療や周産期医療をはじめ、県西地域の基幹病院として急性期医療、高度医療を担ってまいります。また、医師や看護師などの医療スタッフの確保に努めるほか、疾病の多様化や複雑化に対応するため総合診療科を新規に設置し、医療体制を充実させます。

 

【暮らしと防災・防犯】

 

 共生社会の実現につきましては、すべての市民がお互いの文化や人権を尊重し、認め合い、共に生きていく地域社会の実現に向け、人権教育や啓発などに取り組みます。また、男女が性別にかかわりなく個人の能力を生かし、あらゆる分野でいきいきと活躍できる男女共同参画社会の実現に向け、引き続き啓発活動などを実施します。

 

 災害に強いまちづくりにつきましては、災害対策の最新の教訓を盛り込んだ小田原市地域防災計画に基づき、地域の総合的な防災力を高めてまいります。特に、防災行政無線を増設し、災害情報の伝達体制を強化するとともに、小・中学校の屋上に転落防止用フェンスを設置するほか、津波避難ビルの協定の推進と市民への周知に取り組み、安全な避難施設を整備していきます。そして、津波や土砂災害などのハザードマップの配布や、津波被害などを想定した実践的な防災訓練を実施するなど、地域住民が災害時に協力して行動できるよう自主防災組織を強化していきます。

 

 また、地震被害の軽減化に向け、分譲マンションや緊急輸送路沿いの建築物に対して耐震診断の助成などを行います。そして、創設期配水管耐震化工事を着実に進めるとともに、下水道の老朽管路の調査や点検を進め、下水道長寿命化計画を策定するほか、防災拠点などの汚水を受ける重要な管路の耐震化対策を計画的に推進します。

 

 消防・救急体制につきましては、平成24年度末の県西地域2市6町での消防広域化に向けた準備作業や、消防・救急無線のデジタル化に向けた共通波の整備を引き続き進めます。また、高規格救急車の更新や高度救命処置用資機材の整備をはじめ、救急救命士の育成や応急手当の普及を通じて、救急・救命体制の充実と強化を図ります。

 

 安全・安心の地域づくりにつきましては、地域での顔の見える関係づくりに重要となる防犯活動や交通安全活動を支援するとともに、市民や有識者を交えた組織を設置し、施策の充実などについて検討します。また、小田原市暴力団排除条例の施行に伴い、市の事務事業からの暴力団排除を徹底するなど、安全で安心して暮らすことのできる地域社会の実現に努めます。

 

【子育て・教育】

 

 子育て環境につきましては、市内4か所の子育て支援センターと地域の子育てひろばとの連携を深め、地域資源を生かした子育て支援活動が展開しやすい環境づくりを進めます。また、おおとり保育園を低年齢児も受け入れる新たな民間保育所として開園するなど、引き続き待機児童の解消に努めるとともに、多様な保育ニーズに対応した良好な保育環境を整えていきます。そして、妊婦健診や歯科健診に加え、ヒブワクチン予防接種などの公費助成を引き続き実施するなど、妊娠中から乳幼児期までの一貫した母子保健サービスを提供していきます。また、ママパパ学級、新生児訪問や育児相談、乳幼児健診など、子どもの健やかな成長のために様々な支援を行います。

 

 青少年育成につきましては、地域ぐるみで子どもを見守り育んでいくスクールコミュニティの形成に向け、地域の子どもに関する活動をまとめた情報紙の発行や、子どもたちが安心して集い活動できる居場所づくりの対象地域を拡大していきます。また、地域の皆様と協力して放課後児童クラブを運営し、入所児童が安全に安心して過ごせる環境をつくっていきます。そして、小田原の豊かな地域資源を活用しながら様々な世代が交流する体験学習の機会を提供するとともに、地域においても、関係者と連携した体験学習事業を展開します。また、引き続き指導者養成研修事業「おだわら自然楽校(がっこう)」を実施し、地域や学校での宿泊体験学習などの担い手として活躍できる人材を養成していきます。

 

 学校教育につきましては、「地域一体教育」と「幼保・小・中一体教育」を学校づくりの基盤とし、学校支援地域本部を中心に地域ぐるみで就学前から義務教育終了までの子どもを支える体制づくりに取り組みます。同時に、学校の特色を生かした「未来へつながる学校づくり」を進めます。また、酒匂小学校に加え、足柄小学校内にも情緒障がい通級指導教室を開設するなど、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援教育や相談体制を一層充実させます。学校施設につきましては、災害時に広域避難所となることも考慮し、屋内運動場のトイレを改修するなど、安全で快適な環境づくりを優先的に進めます。片浦小学校につきましては、地域コミュニティの核としての重要性を踏まえ、小規模特認校制度を実施し、少人数ならではの地域と連携した特色ある教育活動を展開するとともに、食育の推進や災害対策の観点から給食室を新設します。また、旧片浦中学校につきましては、宿泊もできる体験学習の施設として整備します。

(2) 希望と活力あふれる小田原

【地域経済】

 

 小田原地下街につきましては、来街者や市民の皆様に小田原の魅力を発信し、中心市街地から市域全域へと広がる回遊を促すなど新しい価値を備えた「交流と創造の場」として1日も早く再開できるよう、再生計画に基づき、実施設計、改修工事及び開業準備などの事業プロセスを着実に進めていきます。

 

 産業・就労環境につきましては、中小企業の経営支援や企業誘致に取り組むとともに、小田原市地域経済振興戦略ビジョンに基づき、民間団体や事業者と連携しながら、交流人口の増加による需要の拡大、企業活動の集積や活性化を図ります。さらに、本市をフィールドとした企業の社会貢献活動を促進します。

 

 ものづくりにつきましては、木製品などの地場産品の国際的な見本市への出展や木製品フェア開催の支援など、販路開拓や需要拡大を促進します。また、若手芸術家のデザインや創作活動とものづくりとのコラボレーションを促進するなど、ものづくり・デザインを通じて新たな価値を創造し、小田原産品のブランド力の向上につなげていきます。

 

 商業につきましては、超高齢社会への対応や地域コミュニティ機能の強化を図るため、商店街の特色ある取組を支援し、徒歩生活圏の暮らしを支える商店街づくりを進めます。また、「小田原どん」や「小田原おでん」をはじめとしたご当地グルメ、朝市やマルシェなどの取組を関係団体と連携して充実させ、地産地消の促進や地場産品のPRによる商業の活性化につなげます。そして、中心市街地活性化の方向性を定める新たな小田原市中心市街地活性化基本計画を策定します。

 

 観光につきましては、ウォーキングタウン小田原の取組を進め、まち歩きを促進するほか、外国人向けにホームページを改訂するなど観光情報を充実させます。また、小田原城天守閣や小田原城址公園及びその周辺の魅力を高めるため、引き続き環境整備を進めるとともに、北条氏ゆかりの地や県西地域の自治体などと連携し、観光PRを更に強化します。

 

 農業につきましては、生産者や関係団体と一体となって、本市オリジナル品種である「十郎梅」や神奈川県が開発した「湘南ゴールド」のブランド化に取り組みます。そして、地場の農産物を生かし、生産、加工、販売の相乗的かつ有機的な連携を図る六次産業化の取組を強化するとともに、新たな特産品づくりや様々な交流体験の機会を創出することにより、地域の活性化を図ります。また、担い手確保や営農支援を広域的に行う県西営農支援センターを運営するとともに、耕作放棄地を営農可能な状態に復元する取組を支援するなど、農業の生産性の向上を図ります。

 

 林業につきましては、多面的な機能を有する森林の整備・保全と併せ、小田原産木材の利用拡大や流通促進に向け、民間事業者とも連携した多角的な取組を進めます。そこで、おだわら森林・林業・木材産業再生協議会などと連携し、小田原産木材を利用したバンガローなどをいこいの森に設置するとともに、庁舎内での木材利用や子どもたちが身近な木に触れ親しむ木育活動に取り組むなど、小田原産木材の利用拡大に向けた事業を実施します。

 

 水産業につきましては、地場の豊富な水産物やその加工品の流通と消費を促進するため、商業者と生産者が連携した取組を支援します。また、水産業の振興と水産食文化の更なる観光資源化に向けて、県営小田原漁港の整備に併せて交流促進施設の整備を進めます。そして、「小田原みなとまつり」を開催するなど、市民の皆様が水産業に触れることのできる機会を提供します。

 

【歴史・文化】

 

 市民ホールにつきましては、平成28年度の開館に向け用地取得を完了させるとともに、市民ホール基本計画を踏まえた設計者の選定や管理運営計画の策定に着手し、新しい活力を生み出す芸術文化創造の拠点として整備を進めます。

 

 歴史資産につきましては、史跡小田原城跡整備事業として、引き続き史跡と緑の共生を図りながら御用米曲輪の発掘調査と土塁の修景整備を進めます。また、貴重な文化資産である清閑亭と松永記念館につきましては、平成23年度に国の認定を受けた小田原市歴史的風致維持向上計画に基づき、今後の有効活用に向けた整備を進めます。そして、全国史跡整備市町村協議会大会が本市を会場として開催される機を捉え、全国に小田原の魅力を発信していきます。

 

 文化・芸術につきましては、小田原市文化振興ビジョンに基づき、文化による人づくりとまちづくりを推進するため、子どもたちが学校で質の高い芸術活動に触れるアウトリーチ活動を拡充するほか、音楽がまちにあふれる小田原城ミュージックストリートを開催するなど、多様な文化・芸術事業を暮らしに身近な場所で市民の皆様とともに展開し、小田原の文化の裾野を広げていきます。清閑亭につきましては、小田原城跡を中心とした中心市街地の回遊拠点及び来訪者の交流拠点として、民間団体の発想による活用を進めるとともに、清閑亭、松永記念館、小田原文学館の3施設が連携し、観光振興も視野に入れた小田原らしい文化事業を展開します。また、松永記念館では、近隣美術館との交流による美術展を開催し、施設の魅力を最大限に高めていきます。そして、今年は北原白秋没後70年を迎えることから、文学館事業や市民文化祭事業で取り上げていくなど、小田原固有の文学遺産に磨きをかけ、小田原の文化の魅力向上を図ります。さらに、専門職を活用するなど体制を強化するとともに、市民や関係者を含めた推進体制の構築を検討します。

 

 文化交流につきましては、1200年の時を越え、奈良県斑鳩町との交流を深めるとともに、チュラビスタ市との姉妹都市提携30周年事業を実施します。

 

 生涯学習につきましては、市民主体のキャンパス小田原を推進するとともに、二宮尊徳翁をはじめ近代小田原三茶人など、優れた先人たちの事績を発掘、顕彰し、その成果を資料展示や体験学習などを通じて発信します。また、図書館につきましては、所蔵資料の適切な保全に努めるとともに、これからの時代に求められる図書館の役割や機能などの方向性を定めていきます。

 

 生涯スポーツにつきましては、だれもが、どこでも、いつまでもスポーツができるよう、地域におけるスポーツ活動を推進してまいります。また、14年目を迎える城下町おだわらツーデーマーチを国内最高水準のウオーキング大会である日本マーチングリーグ公式大会として開催いたします。そして、小田原アリーナをはじめとしたスポーツ施設に指定管理者制度を導入し、民間事業者の強みを生かした効率的で市民の皆様が快適に利用できる施設運営に取り組みます。

(3) 豊かな生活基盤のある小田原

【自然環境】

 

 環境再生・保全につきましては、市民、事業者、行政がそれぞれの強みを生かし、環境との共生に向けた取組を展開することにより、エコシティとしての小田原の魅力を高めます。そこで、無尽蔵プロジェクト・環境(エコ)シティの取組を進化させ、様々な環境活動の核となるプラットフォームをつくっていきます。また、酒匂川土手への芝桜の植栽や荒地を耕作地に再生する和留沢での取組など、市民による環境再生活動を拡充するとともに、子どもたちが本市の環境や資源循環の姿などを学ぶ機会を提供します。そして、東日本大震災の教訓を踏まえ、エネルギーに起因する様々な問題に強い地域社会を目指し、小田原再生可能エネルギー事業化検討協議会において太陽光発電などの事業の調査・検討を進めるとともに、太陽光発電システムの設置補助を拡充するなど、エネルギーの地域自給に向けた取組を加速させます。

 

 廃棄物の減量化・資源化につきましては、燃せるごみの排出量を減らすために、段ボールコンポストやEMバケツによる生ごみ堆肥化の取組を、市民の皆様と一体となって市内全域に普及させていきます。また、ごみ焼却施設の延命化に向けた取組に着手します。

 

 良好な生活環境につきましては、花壇づくりを通じて愛着ある公園にする、身近な公園プロデュース事業を拡充します。そして、引き続き遊具の更新など公園空間の安全対策を進めるとともに、子どもたちの社会性や創造性を育むため、既存の公園空間を活用し自然体験遊びや冒険遊びの場を提供するプレイパークを試行します。また、放射性物質の影響対策につきましては、必要な調査を継続し、貸し出し用の簡易放射線量率測定器を拡充するなど、市民の皆様の不安解消に向け総合的に対応していきます。

 

 自然環境の保全と再生につきましては、地球温暖化の緩和をはじめ、水源のかん養や生態系の保全など森林の持つ多面的な機能を高めるため、地域水源林を整備するとともに、ふるさとの森づくり事業を通じて、市民の皆様の森林に対する理解と保全活動を促進します。そして、県条例により里地里山保全等地域に指定されている久野及び東栢山地域を中心に、地域の皆様と協働して里地里山の保全や活用に努めます。

 

【都市基盤】

 

 お城通り地区再開発事業につきましては、平成23年度に先導的に着手した緑化歩道の整備を着実に推進するとともに、平成26年度に駐車場施設ゾーンが供用開始できるよう、整備着手に向けた準備作業に取り組みます。また、広域交流施設ゾーンにつきましても、早期の整備に向け引き続き事業者の参画を促すなどの取組を進めます。

 

 快適で魅力ある生活空間づくりにつきましては、地域の自主的な景観形成活動を支援するとともに、歴史的風致の残るまちなみ環境の整備を進めるほか、中心市街地において歩道と一体化した空間を創出する都市廊の実現化方策を検討します。

 

 地域交通につきましては、公共交通の利便性の向上や利用促進に向けて設置した小田原市生活交通ネットワーク協議会において、市民ニーズに即した将来の公共交通のあり方を検討します。また、幹線道路や狭あいな生活道路を整備し、安全な道路空間の充実と円滑な交通ネットワークを形成していきます。そして、重要な橋りょうを計画的に維持修繕し、耐久性の向上や事業費の平準化を図るため、橋りょう長寿命化計画を策定します。さらに、他の道路施設についても計画的な維持管理を行い、道路環境を改善していきます。

 

 水供給及び下水処理につきましては、安全で安心な水道水を安定供給するため、上水道管の基幹管路である送配水管を計画的に調査、点検し、漏水や破損事故などの防止に努めます。また、取水施設や浄水場内施設の更新を行うとともに、高田浄水場などの運転管理業務委託を進めます。そして、快適な生活環境の確保と公共用水域の水質保全を図るため、計画的かつ効率的に下水道施設を整備していきます。

(4) 市民が主役の小田原

【市民自治・地域経営】

 

 地域コミュニティの強化につきましては、地域の主体的なまちづくりを目指し、課題解決を可能にする各種団体の連携の仕組みづくりや、担い手の育成及び行政との協働に向けた地域コミュニティ推進事業を拡充します。そして、これまで地域の絆を育てるために、かけがえのない活動を続けてこられた自治会総連合の50周年記念事業を支援します。

 

 市民活動の支援につきましては、公益性の高い市民活動への助成を充実させるとともに、様々な分野で活動する市民活動団体と行政との協働を推進するための行政提案型協働事業を実施します。また、多様な主体によるまちづくりを推進するため、市民活動団体と地域活動団体とのネットワーク形成を促進します。

 

 情報共有の推進につきましては、ホームページの機能を更に拡充するほか、広報紙、テレビ、ラジオなど多様な媒体を活用し、本市の様々な情報を市内外に発信するとともに、災害時においても迅速かつ確実に情報を提供していきます。また、各種情報誌のほか、フェイスブックやツイッターなどを効果的に活用し、積極的な誘客プロモーションを図るとともに、市内外に小田原の魅力を情報発信していきます。そして、市長への手紙や市長の現場訪問のほか、メールマガジンアンケート機能なども活用し、市民の皆様の声を市政に反映させていきます。さらに、意見公募手続(パブリックコメント)に係る条例を制定し、適切に運用していきます。また、事務効率化や市民サービス向上の観点から、ネットワーク端末を拡張するなどICT(情報通信技術)を有効に活用するとともに、電子情報のセキュリティ対策を講じていきます。

 

 行財政改革につきましては、小田原市行政改革指針に基づく行革アクションプログラムに取り組み、社会経済情勢の変化に即応した機動的な行財政改革を進めます。そして、計画・予算・評価の事業単位を統一した効果を生かした事務事業評価を実施するとともに、評価結果について広くご意見をいただく仕組みなどを検討します。また、公共施設の効率的な管理運営を行うとともに、平成27年度末の完成を目指し、災害時の防災拠点である市庁舎の耐震改修を進めます。

 

 市税につきましては、(仮称)納税催告センターを新設し、納税意識の高揚と市税収入の確保に努めるとともに、eLTAX(エルタックス)を利用した電子申告システムを導入し、税申告における利便性の向上と課税事務の効率化を図ります。

 

 市職員の育成につきましては、これまでの不祥事を真摯に受け止め、公務員倫理の徹底を図るとともに、自ら考え行動する職員の育成に向け、これまでの研修内容を見直し、コーチングを取り入れた研修を実施します。

 

 広域行政につきましては、県西地域における広域的な防災対策や、酒匂川流域の諸課題について2市8町で連携して取り組むとともに、富士箱根伊豆地域におけるS.K.Y.広域圏の会長市として、防災対策や観光振興など県境を越えた更なる連携・交流の強化に努めます。

5 むすび

 以上が平成24年度の市政運営方針及び重点的に取り組む施策であります。

 

 こうした施策展開により成すべきことは明確です。それは、基礎自治体として備えるべき機能や本質をあらわす「市民の力で未来を拓く希望のまち」を、この混迷の時代を確実に乗り越えていくための都市の姿として、この小田原の地に現出させることです。

 

 私は市長就任以来、新しい小田原の姿を形づくる様々な営みの源流を、市民の皆様と共につくりあげてきました。

 

 第一に、冒頭で述べましたとおり、新しい総合計画のスタートと小田原市自治基本条例の施行により、新しい小田原の枠組みが成立したことです。

 

 第二に、市政運営や地域づくりの根幹を成す地域コミュニティ単位での取組が本格化していることです。各地区自治会連合会の区域における地域別計画の策定により、地域内の連携が強まり、郷土愛は深まりました。現在では地域別計画を基に地域コミュニティ活性化の諸事業が展開され、地域内の連携組織が複数の地域で立ち上がっており、今後より一層進展していきます。

 

 第三に、ケアタウン、スクールコミュニティ、環境再生プロジェクト、生ごみ堆肥化モデル事業など、市民と行政との協働による課題解決の取組が、仮説の構築からモデル事業の導入、その成果の検証と改善に至るプロセスを着実に辿り、今後の本格的な導入へと進む段階に入ります。

 

 第四に、民の力が発揮される流れが定着していることです。無尽蔵プロジェクトのほかにも、中心市街地の商店街におけるまちなか市場や軽トラ市の開催、芸術分野の諸団体の連携によるアーティスト・イン・レジデンスの実施、間伐した小田原産木材を活用し被災地である相馬市への支援活動を進める報徳の森プロジェクトなど、深い郷土愛を持つ市民の皆様が、豊かな地域資源を生かし、それぞれの得意分野で知恵を絞った取組を展開しています。

 

 また、著名なパティシエである鎧塚俊彦氏と早川地域の生産者の皆様との連携、片浦地域で予定されている世界的芸術家杉本博司氏の芸術文化施設の建設、そして、小田原映画祭や美術展の開催といった、民間と連携した新たな発想による芸術文化事業の深化など、小田原が誇る有形無形の地域資源に経済や文化の側面から新たな価値が加えられ、新しい小田原の地平は拓かれつつあります。

 

 このような民の力が最大限に発揮された活動を、大きな流れにして地域の経済循環に結び付け、交流人口を拡大していくことが、小田原の未来に希望の光を照らすことになるのです。

  

 すべてが互いに働き合い、一体となることでよりよい結果が導かれるという報徳の教えを、今、私たちは思い起こし、この小田原で実践し、蘇らせていく必要があります。

 

 多様な人と人とがつながり、共に課題解決に当たり、そして、成功体験を一つひとつ積み重ね、共有していく。このような動きが、より多くの地域や分野に広がり、私たち一人ひとりが今という現実に真正面から向き合うことができたとき、新しい小田原の姿は、より鮮明なものとなって現れてくるものと確信しております。

 

 「市民の力で未来を拓く希望のまち」をより多くの市民の皆様が実感し、幸せを分かち合えるよう、これまで市民の皆様と共につくりあげてきた営みを、次なるステージへと確実に導いていくことを決意し、全力を傾注して市政運営に当たってまいります。

  

 以上をもちまして、平成24年度の施政方針とさせていただきます。議員各位をはじめ、市民の皆様のご支援とご協力を心からお願い申し上げます。

 

 平成24年2月16日

                           小田原市長 加藤憲一

最終更新日:2012年02月16日

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小田原市役所
住所:〒250-8555 神奈川県小田原市荻窪300番地(郵便物は「〒250-8555 小田原市役所○○課(室)」で届きます)
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