#03 世界が注目した小田原の画家 井上三綱

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#03 世界が注目した小田原の画家 井上三綱
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国際的に活躍した画家・井上三綱(1899~1981)が、小田原市入生田にアトリエを構えてから、60年目にあたる今年、ご遺族の井上晧子さんより本市に、その貴重な作品を寄贈していただきました。
これを記念して、松永記念館で特別展を開催します。
【問】郷土文化館 電話 0465-23-1377

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井上三綱と小田原
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 井上三綱は、1899(明治32)年、福岡県八女郡(現・筑後市)の竈門神社宝満宮の神官の家に生まれました。16歳の頃から絵を学び、郷里で小学校の教諭をしながら制作を続けていましたが、22歳の頃、恩師の勧めで上京します。
 三綱が小田原に来たのは、酒匂尋常高等小学校(現・小田原市立酒匂小学校)に赴任した1926(昭和元)年、27歳の時でした。
 その後、たゆまぬ努力により、自らの画境を切り拓いていった三綱は、神奈川県西部の作家たちとも交流を持ち、1931(昭和6)年、小田原の芸術家たちとともに相州美術会(西相美術協会の前身)を結成、美術展を開催するなど地域の美術の発展にも力を尽くしました。
 52歳で、入生田の長興山にアトリエを構え、1981(昭和56)年に82歳の生涯を終えるまでこの地で過ごしました。

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三綱の目指した世界
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 小田原に赴任した年、三綱は同郷の洋画家・坂本繁二郎を訪ね、以後、生涯の師として仰ぎます。初めは坂本の影響を強く受けた油絵を描いていましたが、次第に彫刻のもつ造形性への関心を深め、描く対象が持つ奥行きを表現することを課題とし、「彫刻の持つ奥行きの感じ」を学ぶため、31歳の時に、小田原の彫刻家・牧雅雄の門をたたきます。
 三綱自身は次のように語っています。「私の仕事の目的は至極簡単で、物を眺める二次元的物の見方から、三次元に視覚を変えるということである。もっと、これを説明すれば、物は見るもの、眺めるもの、という観念から、物を奥行きの感じで見る、ということである」。
 また、三綱は、自らの世界を表現するため、さまざまな技法を組み合わせています。紙や胡粉で下地を作り、絵の具を重ねた後で、画面の表面を削り出したり研ぎ出したりすることで独特の絵肌が創り出されました。下地の彩色層から浮かび上がった輪郭線、何層にも重ねられた色彩が複雑に折り重なる作品は、古色を帯びた壁画のような風合いを持っています。

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海外からの評価と交流
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 西洋の模倣に終わらない独自の表現をたたえた作品は、ジャパンタイムズ美術記者エリーゼ・グリリーに「三綱は片足を東洋に、片足を西欧に踏まえて、悠然と立っている」と評されました。物理学者ロバート・オッペンハイマーは「あなたの絵には時間が出ている」と三綱を絶賛しています。
 また、当時ニューヨークで活躍していた彫刻家イサム・ノグチや画家ベン・シャーンたちも三綱の実力を認め、親しく交流しました。

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受贈記念特別展「井上三綱 -入生田のアトリエから-」
8月4日土曜日~9月17日祝日
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 松永記念館では、1984(昭和59)年の特別展、2003(平成15)年と2008(平成20)年の平常展で当館が所蔵する三綱の作品を紹介してきました。このたび寄贈していただいた作品は、作家自身が晩年まで手元に置いていたもので、これまで一般に知られていなかったものも含まれます。本展が、井上三綱の目指した表現を再考する機会となれば幸いです。

時間:午前9時~午後5時
場所:松永記念館本館、別館展示室
観覧料:一般500円、大学・高校生300円、中学生以下無料

関連行事:ギャラリートーク
 今回の特別展の開催に協力いただいた日本画家・芳澤一夫さんと担当学芸員によるギャラリートークを行います。
日時:8月11日土曜日 (1)午前11時~/(2)午後2時~ (各回約40分)
場所:松永記念館
申込:郷土文化館に電話で 定員 各20人(先着順)

特別展の見どころ
郷土文化館  学芸員 中村暢子
 井上三綱は、牛、馬、人物など、一つのモチーフを繰り返し描いた画家です。今回の寄贈作品の中には、「牛群像」「黄鐘調」などの代表作の習作と思われるものが含まれており、それらを見ると、三綱が描きながら形を創り、作品を展開していったようすがうかがえます。創作の過程を探究しうる作品として貴重であり、今回の特別展の見どころの一つです。
 画材の持つ手触りと折り重なる色彩が醸し出す独特の造形世界をぜひご覧ください。
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