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2016年07月22日(金)

みんなで作る、みんなの「おだわら市民ミュージカル」

小田原市民会館の開館55周年に向けて、「オリジナルミュージカル」を参加者の皆さんと一緒に作るワークショップが6月25日(土)から始まりました。
カリキュラムは演劇基礎、劇作、ダンス、歌、発表会の予定で組まれ、平成29年1月15日(日)まで全17回に及びます。
講師の先生は、西川信廣氏(演出家・文学座)、篠原久美子氏(劇作家)、上田享氏(作曲家)、室町あかね氏(振付)、満田恵子氏(歌唱指導)5名の方々です。
 
この事業は、平成28年度小田原市文化創造担い手育成事業『おだわらリボンシアタープロジェクト』として、芸術文化創造センターのオープンに向け、歴史ある小田原と小田原市民会館の文化を見つめなおし、受け継いでいくプロジェクトです。
今年度の参加者は33名。これから心をひとつにして、市民の感性とイマジネーションによる『小田原の歴史や文化を織り込んだミュージカルを』を作り、平成29年夏の「小田原市民会館大ホールでのオリジナルミュージカル公演!!」を目指します。

■スゴイ!先生が小田原に来て下さった■
 

 連続講座の第1回目の開講式及び演劇基礎(1)は舞台演出家の西川信廣先生によるワークです。西川先生は、1986年文化庁派遣芸術家在外研究員としてイギリスに1年間滞在し、ブリストル・オールトヒックやロイヤルナショナルシアターでロジャー・リース、ピーター・ホールなどの演出助手を務めた方です。帰国後は1993年の芸術選奨新人賞演劇部門受賞や、多数の賞を受賞されました。文学座を中心に商業演劇から小劇場、可児市にみるような地方滞在型の演劇まで幅広く活動されています。

■横に並んで作っていく関係■

演劇では、あるがままの一人一人が、場と相手に対して自分を開き、自分を知ってもらい、「ヨシ、このメンバーでやってみたいな」と皆で同じ気持ちになる方向を考え、お互いを深める関係性が必要です。ミュージカル演技には人生があり、対等であるとのこと。この「横に並んで作っていく関係」という視点は、先生が演劇の基礎や注意点を説明される時の、人を包み込むような穏やかな口調で話す言動に表れていました。
 

■シアターゲームというワーク■
 

ワークショップは「シアターゲーム」と呼ばれ、ゲーム性のあるドキドキ感やワクワク感を伴う方法で行われました。参加者は10代から60代まで様々な職業の方が集まり、皆さん立ち姿や自己紹介だけで、ミュージカルが楽しみになる様な雰囲気を醸し出していました。

■シアターゲーム① 他己紹介に始まる一体感■

ペアを組んでお互いに紹介しあう「他己紹介」では相手の話を良く聴き、相手の魅力を最大限に紹介することに自然と気持ちが向きます。演劇で学ぶことは、話していない時の相手との関係性です。ポイントは「演技者と同じ呼吸・空間を作ると、ハラハラ・ドッキリで良いシーンができる」のだそうです。客席を引き込む一体感を作らなければ、観客は喜ばないということです。
「ここがポイント」の言葉をきっかけに、先生のワークの空気を演出するセンスと直観力に、その場にいた人たち全員で呼吸を合せ、演技者や観客をも演じるようになった瞬間でした。
 
■シアターゲーム② 間違えてもヒーロー■

「ピンポンパン・ゲーム」は、とっさの瞬発力を培います。1チーム6人ほどのグループで輪を作ります。残りの人は必然的に観客です。三拍子のピンで横向き、ポンで横向き、パンで相手を指差します。指差しはアクションをハッキリしないと、誰が指名されたのか判断がつかなくなります。何順かして馴れた頃にテンポアップすると、今まで難なくこなしていたパンの指差しアクションが出なくなります。それが面白いのです。ある時、ポンで指された青年が、「あっ」と小さな声を発し、次のパンが出せずに固まってしまいました。間違えないように腕を後ろ手に組んでいたため反応ができなかったのです。ゲームのルールとしては間違いですが、その青年のリアクションの面白さに、場内から一斉に拍手が沸き上がり「間違えてもヒーロー」を生んでいました。
 

今回のワークショップは、「相手との共感、一体感を共有する」ものでした。ここで学んだことは、相手を動きやすくする間合いや空気感です。西川先生の皆さんを見守る瞳の奥の優しい眼差し、温かさ。面白い!と感じた時の顔をほころばせるチャーミングな笑顔。「人間と演劇が大好き」で、相手を受け入れる真摯な姿勢に先生の謙虚さと寛容さが伝わって来ました。ワークショップのはずなのに、演出されているような、ときにふっと小劇場で演劇を観ているような、錯覚におちいる場に立ち会え、創ることの意義は観る者にも感動を与え、こんな体験させていただいた喜びは、如何ばかりか計り知れません。

 発表会は1月、高校生から高齢者までの厚い年代層の人達の、一人一人の出す色や、歌は?ダンスは?タイトルは?どんな作品ができるのか私の中でもイマジネ―ションが膨らみます。

 ミュージカルの楽しさを多くの人に知っていただくために、そして演劇ファンを増やすために、1月に予定している発表会は、一般の人にも観ていただける「オープン公開にして欲しいな」と取材を通じそんな気持ちになりました。(記:MOKO)

2016/07/22 08:48 | 芸術

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