セミナーのポスター 8月25日、小田原市民会館展示室にて、「第17回文化セミナー アートスペースの可能性」と題した市役所文化部文化政策課の主催の講演会が開催されました。講師は、藤沢市アートスペース学芸員である「小林 絵美子」さんと、藤沢市アートスペース運営協議会委員である「中野 仁詞(ひとし)」さんでした。「藤沢市アートスペース(愛称 FAS(エファース)」(以下、「FAS」)は、辻堂駅北口の湘南C-Xにある「ココテラス湘南」6階にあります。平成27年10月にオープンしたばかりの藤沢市の美術振興施設です。「美術館」でなく、「アートスペース」とは何だろう?藤沢市が取り組むアートの場づくりの新しい展開を聴きました。
小林絵美子氏講演会
小林さんは、2010年から藤沢市民ギャラリーに勤務され、藤沢市アートスペース開設の立ち上げに携られました。その後、学芸員としてFASで、藤沢市ゆかりのアーティストの展覧会やワークショップ等の企画に取り組んでこられました。小林さんから、FASの設立経緯、狙い、活動内容について説明がありました。
FASの設立のきっかけは、藤沢市長が姉妹都市のマイアミビーチ市へ視察に行かれた時、現地の「ArtCenter South Florida」が市民や観光客を巻き込んだアート活動を行って、とても賑わっていたことに印象を受け、藤沢市内にも同じようなアートスペースを作りたいと発案されたのがきっかけだそうです。
FASには、4つのコンセプトがあります。
・若手芸術家の創作活動及び展示
・発表などの支援・身近な美術鑑賞の機会の提供
・美術作品の制作
・展示・発表の場の提供・美術学習の場の提供
FASは、単なるアートの展示会場ではありません。アーティストが制作活動する場も提供しています。それが、コンセプトにある「若手芸術家の創作活動及び展示・発表」の場の提供です。
FASでは、展覧会以外にも「マンスリー・イベント・プログラム」でワークショップを開催しています。4月には、「はじめての水性木版 描いて、彫って、刷る」ワークショップを行ない、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の市民が、一緒になって木版づくりを体験しました。7月には、「ただの石が宝石に!?」というユニークなワークショップも開催されました。
開館3年目となって運営は軌道に乗ってきたけれど、今後の課題も見えてきたそうです。所蔵品のデータベース化、美術界だけでなく市民への周知、展示施設の充実、国外アーティストとの交流、アーティストや作品の調査研究の充実、などだそうです。今後も、藤沢市の芸術文化拠点の中心的役割を担い、文化の街 藤沢としての価値を高めることをめざしていくと抱負を語られました。
今回の文化セミナーは、3年後に開館予定の市民ホール内にできるギャラリーの運営を睨んで企画されたものです。市民ホールの新しいギャラリーを、藤沢市アートスペースがめざす「街の価値を高める」活動の拠点とすることで、市民ホールが小田原の芸術文化の中心的拠点になっていくのだ、と考えさせられた文化セミナーでした。