レポーターブログバナー
2021年04月19日(月)

ありがとう市民会館まつり - 3 「パフォーマンスリレー、そして、二つの美術展」

写真1:ありがとう市民会館まつりのチラシ写真1:ありがとう市民会館まつりのチラシ
 3月24日から28日まで、7月末に閉館する小田原市民会館59年の歴史に感謝する「ありがとう市民会館まつり」が開催されました(写真1)。市民会館の開館以来これまで、数多くの市民団体が大ホールや小ホールを利用して発表会、コンサート、大会などを開催してきました。その活動の場への感謝の気持ちを形にするため、3月27日土曜日に市民会館小ホールで、諸団体がパフォーマンスをリレー形式で発表する企画が実施されました。出演は5団体ですが、出演団体の転換ごとに、換気とミニパフォーマンスが入りました。企画推進の中心は、「外郎口上研究会」代表の善波裕美子さんでした。
1.パフォーマンスリレー
写真2:書道パフォーマンスと三人娘写真2:書道パフォーマンスと三人娘
 前日夜にリハーサルを行い、各団体の順番や場面転換などの確認を行いました。27日の会場は、西相美術展が開催されている小ホールです。美術作品に囲まれて様々なパフォーマンスが上演されるのです。10時に開演となり、まず洗足学園音楽大学の三人娘が登場して、市民会館への感謝の言葉を述べました。そして、三人娘のタップダンスを背景に、舞台脇で堤千恵子さんの書道パフォーマンスが始まりました。上手側のパネルに貼られた大きな紙に「思い出」を書き、下手側には「いっぱい」と書かれました(写真2)。
写真3:けん玉・佐川幸司さん写真3:けん玉・佐川幸司さん
 最初の演目は、けん玉先生こと佐川幸司さんです。長年NHKラジオ体操の指導で全国を飛び回っていた経験から、まず参加者全員でラジオ体操をして身体をほぐしました。舞台上では、けん玉好きのメンバーがけん玉の技を競い合いました。中には直径が15cmはありそうな大きな玉を見事に操る方もいらっしゃいました。佐川さんの口に掛けたハーモニカ演奏に合わせて、メンバーが見事な技を次々に披露しました(写真3)。
写真4:外郎売の口上写真4:外郎売の口上
 2番目のパフォーマンスは、ご存じ「外郎売の口上」でした。最初に学生グループ「笑ぼっち」が登場して「わらべ歌」で外郎売の口上を紹介しました。続いて、大人の「城カーズ」が、外郎売りの口上を述べました。日頃から鍛えて、さまざまなイベント会場でその口上を披露してきた外郎売口上研究会ですから、朗々たる淀みない口上はさすがでした(写真4)。
写真5:結婚式と6ペンスの歌写真5:結婚式と6ペンスの歌
 かつて市民会館には結婚式場がありました。司会の善波さんが客席に向かって「この中で、市民会館で結婚式を上げられたり、出席されたりした方はいらっしゃいますか?」と問いかけると、観客席からは十人近い人たちが手をあげました。善波さんも「こんなにいらっしゃるのですね!」と驚いていました。市民会館は人生の門出を祝する場でもあったのです。そんな思い出を、幕間の小芝居で若者たちが演じました。結婚行進曲とともにウエディングドレスを着た花嫁など6名が登場し、マザーグースの幸せの「6ペンスの歌」を歌い踊りました(写真5)。
写真6:朗読「桐の木」写真6:朗読「桐の木」
 続いては「朗読」でした。太田雅恵さんが、舞台上で「桐の木」を読み上げました。太田さんはとても良い声の持主で、マスクをしているにもかかわらず、趣きある物語がよく通った声で語られました(写真6)。
 幕間の換気と準備の後は、津軽三味線の演奏でした。「いしかわ会」の石川喜代美さんと若いお弟子さんの二人でした。演奏が始まると、津軽三味線の迫力に圧倒されました。更に、民謡「秋田荷方節」の石川さんの歌声は清らかでありながら力強く、日本の言葉に合った節回しがどこか懐かしい日本の風景を思い出させてくれました。
写真7:津軽三味線写真7:津軽三味線
 石川さんは、三味線の種類や撥(ばち)の持ち方などを紹介しましたが、真似してみると撥を持つ指使いはとても難しいと分かりました。石川さんは開演前にマスクをすべきかどうか迷っていらっしゃいましたが、結果的にフェイスシールドを付けることで、歌声を存分に発揮することができました。最後の曲は「ドンパン節」で、観客は「ドン」で膝を叩き、「パン」で手を叩いて、勢いある歌声と一体となって大いに盛り上がりました(写真7)。
写真8:市民会館懐かしの名曲写真8:市民会館懐かしの名曲
 幕間の換気をしながら登場したのが三人娘で、白いドレスが華やかでした。市民会館大ホールでコンサートを開いたことのある吉田拓郎、ユーミン、アルフィー、ピンクレディー、ザ・ドリフターズの懐かしい名曲を美しい歌唱力で次々に歌い上げました(写真8)。
写真9:書道パフォーマンス写真9:書道パフォーマンス
 最後の演目は、亞紀加さん率いる「パワーポニー」による合唱でした。10人が舞台に上がり、「民衆の歌」、「銀河鉄道999」、「君をのせて」をパワフルに合唱しました。そして再び、堤千恵子さんによる書道パフォーマンスがありました。事前に録音して集めていた「ありがとう」の声が流される中で、市民会館への感謝の気持ちを込めて、「感」と「謝」をそれぞれ紙一杯に大書しました(写真9)。
写真10:パワーポニーと全員で写真10:パワーポニーと全員で
 いよいよ終演が近づき、「ふるさと」を会場も一緒になって歌いました。そして、フィナーレでは「輪になっておどろう」を全員で合唱しました。歌う前に練習した手話で振り付けをしながら、会場が一体となって、市民会館から三の丸ホールへつないでいく気持ちを込めて歌っていました(写真10)。
写真11:公演を終えて全員集合写真11:公演を終えて全員集合
 時間通りの12時となり、2時間に亘るパフォーマンスリレーが終了しました。興奮冷めやらぬ中で、集合写真を撮って喜びを分かち合いました(写真11)。
2.二つの美術展
写真12:ありがとう市民会館美術展写真12:ありがとう市民会館美術展
 パフォーマンスリレー会場であった市民会館本館3階小ホールでは、3月24日から二つの美術展が開催されていました。27日は土曜日なためか600人もの来場者があり、期間中延べ990人が来場されました。一つは、西相美術協会(田隝佳子会長)が主催した「ありがとう市民会館美術展」です。西相美術協会は55年の長きに亘って市民会館で「西相展」を開催してきました。コロナ禍で昨年の西相展は中止となりましたが、閉館記念事業として協会の皆さんが61点もの力作を出品されていました(写真12)。
写真13:市民会館の絵画たち展入口写真13:市民会館の絵画たち展入口
 もう一つは「市民会館の絵画たち展」です(写真13)。「おだわらミュージアムプロジェクト」(木下泰徳代表)は、小田原市市民提案型協働事業として3年間に亘って小田原市所蔵の美術品を調査しました。調査結果を美術品台帳にまとめ、それを小田原市ホームページに掲載して誰でもいつでも閲覧できるようにしました。協働事業の初年度の調査対象が市民会館にある絵画でした。
写真14:市民会館の絵画たち展会場写真14:市民会館の絵画たち展会場
 往年の小田原在住の美術作家たちの名品が色褪せず輝きを放っています。西相美術協会会員の方々でも初めて見る作品が多く、素晴らしい絵ばかりだと感嘆されていました(写真14)。市民会館の閉館後の絵画の行き先は決まっていません。小田原美術史の証人たちがこれからも市民の宝として保存・展示されることを願っています。
3.子どもたちの思い出作り
写真15:ミニ電車の切符写真15:ミニ電車の切符
 「ありがとう市民会館まつり」では、1階外でもイベントが数多く開催されていました。子どもたちに大人気だったのが、「ミニ電車で遊ぼう」です。本館の壁際にレールが引かれ、人が乗れるサイズの新幹線と機関車が走ります。でも、直ぐに乗れるわけではありません。市民会館の各階にあるクイズに答えて、一階受付に戻って「市民会館から三の丸ホールゆき」の切符を手に入れる必要があるのです(写真15)。
写真16:夢の新幹線運転手写真16:夢の新幹線運転手
 切符をゲットしてパチンと鋏を入れてもらうと、新幹線に乗れます。運よく先頭に乗れれば、運転方法を教えてもらって夢の新幹線運転手となれるのです(写真16)。本館の中を答え探しで子どもたちが走り回っていましたが、子どもたちにも、この日に巡った市民会館と新幹線運転手の思い出が残ることでしょう。
 小田原市民会館閉館記念事業として開催された「ありがとう市民会館まつり」について、3回に亘って文化レポートにまとめました。「市民会館まつり」を振り返ってみれば、市民会館は何と多くの人たちの人生に関わり、思い出を作ってきた場であったかを改めて思い知りました。
写真17:「ありがとう!市民会館」シール写真17:「ありがとう!市民会館」シール
 市民会館で、青春を想い、愛を想い、感動を想った市民の人々の記憶は、消え去ることはないでしょう。そして、いま、消え去ろうとする市民会館へ、市民たちは「ありがとう!市民会館」と心静かに語りかけることでしょう。

2021/04/19 10:24 | その他

ページトップ