市長コラム

2022年12月26日(月)

市長コラム(令和4年12月26日)

 10日、11日は神戸にて、アーバンデザインセンター(UDC)の全国大会に参加いたしました。
 10日は、神戸を拠点に活動を展開する「アーバンデザインセンター神戸(UDC078)」の取組について、現地のスタッフから説明を受けました。
 まず、はじめに訪れたのは、港町・垂水地区にある水産体験学習館「マリンピア神戸さかなの学校」に今年9月にオープンした「KAIKEN(カイケン)の釣り堀」です。この施設では、コンテナを改装した釣り堀で魚を釣り上げ、釣った魚をスタッフの手ほどきを受けながらさばき、さらには調理して食べることができます。魚への親しみや興味をはぐくむ体験型の教育施設として運営されており、市場に出回らない未利用魚、低利用魚を活用するコンセプトや水中カメラで魚を釣り上げる様子を確認できる仕組みなど、アイデアとテクノロジーの詰まった大変面白いアトラクションです。
 この釣り堀を運営する団体である「海洋水産技術研究所(KAIKEN)」は、地元企業である「兵庫ベンダ工業株式会社」が、主管事業である製造業のほか、「IT」、「映像」、「教育」など自社の技術とネットワークを基に、「海洋分野」への事業展開として新設したもので、根底には新たな働き場の創出による雇用継続や水産を通じた学びの場の提供、自然環境の保護などエリアマインドに基づくしっかりとした理念があります。 視察した施設は、このようなパブリックマインドを持った企業とUDCが連携し、見事にそれぞれの理念を実践する場となっていました。民間企業の最新のテクノロジーや研究技術が、UDCとの取組を通じて、嬉しそうに魚釣りをする子供たちの笑顔に繋がっていることに大変感動しました。 
 続いて訪れたのは、廃校になった旧湊山(みなとやま)小学校にリノベーションを施し、「自然と暮らし」を楽しむことをテーマに、広場、テナント、水族館など様々な機能を複合的に整備したコミュニティ施設「NATURE STUDIO」。
 建物としても、通りから見える壁面を飾るシンボリックなフレームグリッドや夜間の景観をスタイリッシュに演出する照明設備、元々の小学校の雰囲気を上手く活かしたそれぞれのテナントの作りに、質の高い空間を作り上げるデザインの力を感じました。 かつて学校の昇降口であったスペースはハーブ専門店、給食室がビール醸造所、体育館をフードバルに改築し、特別教室は水族館に生まれ変わっています。そのほか学童保育、小規模保育園など地域のための施設も整備されており、コミュニティの創出とともに来訪者を呼び込むための民間のノウハウが発揮された総合力の高い施設です。
 面白いのは、施設の集客面を引っ張るフードバル・ビール醸造所(open air)の代表やカレー・カフェ店の代表の方々が、それぞれこの湊山小学校の卒業生という点です。かつての小学校生徒が地域の今を盛り上げるという、素晴らしいストーリー性もこの施設の大きな魅力だと感じました。
 11日の午前中は、新神戸駅北側の傾斜地に位置する「布引(ぬのびき)公園」を訪れました。
 かなり急な坂道のトレッキングコースによって回遊する山中の公園であり、日本三大神滝とされる「布引の滝」が流れていることで有名です。神戸市布引おんたき茶屋保存会では、明治期より残る山中の茶屋の保存改修整備の実現に向けた取組を行っています。
 この公園の魅力を深堀りし、広く発信することで、まちの更なる魅力を現出させることが保存会の狙いであり、明治期以前より、人々がこの地の散策を楽しむことを表した「物見遊山」という概念をメインのコンセプトに押し出していくとのことでした。このように、まちの資源について、古今に通じる歴史・地域特性に着目し、本来の価値を再プロデュースしていくという取組に協力することもUDCの大事な役割です。
 続いて訪れたのは、多くの異人館が建ち並ぶ神戸・北野地区。かつて各国領事館や大使館で働く人々が居住していた「外国人マンション」と呼ばれる建物をリノベーションし、「アーティスト・イン・レジデンス神戸(AiRK)」として運営をスタートさせた取組を視察しました。
 「アーティスト・イン・レジデンス」とは、国内外からアーティストを一定期間招へいして、滞在中の活動を支援する事業です。神戸では、アートやデザイン分野で活躍する方々が「HAAYMM(ハイム)」という団体を組織してこの取組を進めており、アートやデザインを通じて国際的・文化的な交流をも育む大変意義深い試みだと感じました。
 午後、今回のアーバンデザインセンター会議のメインプログラムである本会議の会場「KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)」に到着しました。  
 本会議では、「新たなつながり=コネクテッド」をテーマに「飲食」、「アート」、「生物」などの分野で、チャレンジングなまちづくりに取り組むプレイヤーのディスカッションを傍聴し、その後、参加者全員でグループに分かれてのワークショップを行いました。私が参加したワークショップのテーマは「領域横断・主体横断」。
 今後の取組では、UDCならではのプラットフォームの役割を存分に発揮し、人・情報・アイデアをつなぎ、まさに領域・主体を超えた横断的な大胆なプロジェクトを模索していくことが新たなまちづくりの可能性を広げるものと大変刺激を受けました。
 今回の2日間に渡るアーバンデザイン会議については、学(まなび)の要素が非常に多く、まちづくりの奥深さを感じるとともに、様々な考えが頭を巡りました。
 歴史的資源や古くからのなりわい、自然環境、最新テクノロジーまで、絶えず変化するまちの中で、新たなものと残り続けるものがあり、その中の有意義な特性を捉えてまちづくりに生かしていく。UDCにはそこに関わる様々な主体と分野を繋げる大きな役割があります。  
 本市においても、領域や主体を横断的につなげる新たなプラットフォームとしての「アーバンデザインセンター」の設立を目指して、取組を進めてまいりたいと思います。

2022/12/26 17:00 | 未分類

 
 

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