小田原市宿泊等施設(ヒルトン小田原リゾート&スパ)の売却について
ヒルトン小田原リゾート&スパは、平成15年に市が施設を取得して以来、小田原ヒルトン株式会社が賃借し、営業しています。
市では、施設の老朽化により維持費が増大することで、市民の税金を投入せざるを得なくなる恐れがあることなどから、将来も安定的にホテルを運営できる民間事業者に施設を譲渡すべきと考えてきました。2011年末にはヒルトン社との間で売却に係る合意に至り、市議会に「施設売却に関する議案」を提案しましたが、ヒルトン社の事情によって、売却が一時延期となった経緯があります。
市では、『市民に財政的な負担をかけず』、『適正な売却価格で売却し』、『売却後も長期的・安定的に運営されていくこと』を基本に売却についての検討を重ねるとともに、ヒルトン社内部の問題解決が図られたことを受け、弁護士などの専門家による検証作業も経た後に、2012年11月、売却について合意に至りました。そして、市議会12月定例会で、施設売却に関する議案が可決され、売却が決定しました。
売却価格は9億円(税抜)です。この価格は、十分なホテル鑑定の実績を持つ複数の不動産鑑定機関による鑑定評価を基にしており、弁護士などの専門家による検証作業においても適正なものとされています。所有権の移転は3年後とし、それまでは実際の売却があった場合と同様に、施設の維持修繕費などの危険負担もヒルトン社が負担することとしたため、 賃料は固定資産税相当額の1億9,000万円とする契約を結んでいます。
ヒルトン社では今後、施設のリニューアル等を実施するため、多額の投資を行うこととしており、ヒルトン小田原リゾート&スパがより魅力的な世界レベルのホテルとして再生することを目指すと表明しています。なお、これまで約6万人と多くの市民のかたに利用されている、天然温泉、バーデほか各種スポーツ施設等の市民優待制度は継続されますので、どうぞご利用ください。
この売却については、市民の皆さんを始め、市議会の中でも、いろいろなご質問等をいただいておりますので、主な質問と回答を以下に掲載します。
- Q1 不動産鑑定評価はどのように行ったのですか?
- Q2 売却価格に敷地の価格は入っているのですか?
- Q3 固定資産税評価額はいくらですか?市にはいくらの固定資産税が入るのですか?
- Q4 固定資産税評価額が約131億円なのに、売却価格が9億円というのは安すぎるのではないですか?
- Q5 ホテル以外の使い道を考えたり、更地にして宅地分譲したりすればもっと高く売れるのではないですか?
- Q6 土地については、市が持ち続けた方が地代等のメリットが大きいのではないですか?
- Q7 改修に21億円もかかるって本当ですか?
- Q8 どうして競争入札で売却をしないのですか?他にもっと高い価格で購入する者がいるのではないですか?
- Q9 売却の方法に問題はないのですか?
- Q10 市民への説明が不十分ではないですか?
Q1 不動産鑑定評価はどのように行ったのですか?
ホテルの不動産鑑定は、そのホテルがどれだけ収益を生み出せるかという分析が重要で、適切な評価を行うには専門性が不可欠です。このため、十分なホテル鑑定の実績を持つ不動産鑑定機関に鑑定評価を依頼いたしました。
平成23年度には、(財)日本不動産研究所に鑑定評価を依頼しました。さらに、この不動産鑑定評価の結果が妥当なものか確認するため、同じく十分なホテル鑑定の実績を持つ第三者に鑑定評価の結果を検証してもらいました。その結果、鑑定評価額は妥当であるとの結論が出ています。
また、平成24年度には、新たに(株)中央不動産鑑定所による不動産鑑定を実施したことに加え、平成23年度に実施した(財)日本不動産研究所の鑑定評価の時点修正を実施しました。なお、この時点修正の結果は、修正率0パーセント、すなわち鑑定評価額に変更はないとのことでありました。
平成23年度 (財)日本不動産研究所鑑定評価額 9億円(平成24年度の時点修正でも同額)
平成24年度 (株)中央不動産鑑定所鑑定評価額 8億8,200万円
Q2 売却価格に敷地の価格は入っているのですか?
ホテル事業に係る不動産取引においては、主たる需要者がホテル経営のノウハウを有する法人などであるため、対象不動産の収益力に着目して取引を行うことに鑑みた評価となっていますが、鑑定にあたっては、土地・建物を含めた鑑定評価となっています。
Q3 固定資産税評価額はいくらですか?市にはいくらの固定資産税が入るのですか?
現在、施設は小田原市が所有しているため、地方税法上非課税の扱いとなるので、固定資産税や評価額の算定は行っていません。
しかし、市が平成15年に施設を取得する際の固定資産税額等の資料によれば、平成23年度の推計額は、課税標準額(基本的に評価額と同じ)は約131億円、固定資産税額は約1億8千5百万円と推計されています。また、平成24年度は評価替えを見込み、課税標準額は約118億円、固定資産税額は約1億6千6百万円と推計されています。ただし、この推計は、今回売却の対象になっていない市内3ヶ所(寿町、栄町、久野)の従業員宿舎や、償却資産も含めて試算したものです。
なお、今回の施設の売却では、所有権の移転は3年後となりますので、その間は固定資産税は入りませんが、賃料として、固定資産税相当額の1億9,000万円が入ってきます。
Q4 固定資産税評価額が約131億円なのに、売却価格が9億円というのは安すぎるのではないですか?
固定資産税評価額は、固定資産税を賦課するための基準となるもので、総務省が定める「固定資産評価基準」により算出されます。ヒルトン小田原リゾート&スパの場合、固定資産税評価額の大部分は建物が占めていますが、建物の固定資産税評価額は、面積やどのような材料を用いて建設したかということに大きく影響されます。
一方、売却価格は不動産鑑定評価額に基づいていますが、この評価は、合理的な市場で形成されるであろう価値を表す適正な価格を求めるものです。ホテルのような事業性のある建物の不動産鑑定評価においては、その建物がどのくらいの収益を生み出すのかということが重視されます。
このように、固定資産税を課税するための評価額と売買するにあたって実施する不動産鑑定評価額は、目的も算出方法も異なることをご理解ください。
なお、平成15年に本市が宿泊等施設を取得した際、施設の前所有者が実施した不動産鑑定評価額は、市内3ヶ所(寿町、栄町、久野)の従業員宿舎も含んで約16億円でしたが、本市はその半額の約8億5千万円で購入した経緯があります。この16億円のうち、3つの従業員宿舎を除いた不動産鑑定評価額は約13億円です。24時間稼働のホテル施設として8年が経過したことによる経年劣化や、当時と比較してホテル経営を取り巻く環境が後退していることなどを考慮すると、現在の不動産鑑定評価額が9億円であることは、妥当なものと考えます。
Q5 ホテル以外の使い道を考えたり、更地にして宅地分譲したりすればもっと高く売れるのではないですか?
宿泊等施設は市街化調整区域に位置しており、宿泊施設(ホテル)として造られたものですので、原則として他の用途に変更することはできません。また、施設を取り壊して土地を一般住宅やマンションのために分譲することや、新しい建物を建築することもできません。なお、例外的にホテル、レストラン等の観光資源の有効な利用上必要な建築物や、一般的に市街化調整区域で建設可能とされる建築物は建築できる可能性がありますが、これらについても都市計画法や条例などさまざまな法令に適合するものしか建築できませんので、その用途には厳しい規制があります。
Q6 土地については、市が持ち続けた方が地代等のメリットが大きいのではないですか?
一般的に底地を他者が持っている場合は、地代の支払いや投資に係る土地所有者への確認のための手続き等の負担増加等の理由から対象不動産(建物)の価格が安くなることが予測されます。また、取引の相手方であるヒルトン社は土地・建物を一体で所有することを望んでいます。
そして、市がホテル用途に使われる広大な土地を持ち続けることは、市が道路や植栽等の管理に係るリスクや経費を負うものであり、市にとって大きな負担となります。
片浦の海を一望する素晴らしいロケーションを生かすためにも、ヒルトン社が土地と建物を一体で所有することにより、より良い形で投資の構想を描くことができ、本格的にかつ長期間ホテル経営をつづけていくことに繋がるものです。
Q7 改修に21億円もかかるって本当ですか?
宿泊等施設は大規模な施設であるため、施設の修繕は計画的に行う必要があります。このため、平成22年に施設診断を実施したところ、今後5年間で約21億5千万円の改修が必要という結果が出ました。
[概算改修費用内訳]
空調・衛生設備9億7千万円、中央監視設備6億2千万円、外壁改修2億6千万円、屋上及び屋根2億2千万円、その他8千万円
建物が完成してからすでに15年が経過していますが、設備の多くは完成時のものを使用している状態です。これまでもできる限りの補修を行ってきましたが、今後は部分的な補修では対応できず、新しいものへの交換が必要となるため、設備に関する改修費用が高額になっています。
また、平成24年10月には、直近の部分の再検討を実施したところ、2年以内の早期の修繕実施が求められる施設の修繕費用は約9億6,000万円とされています。
Q8 どうして競争入札で売却をしないのですか?他にもっと高い価格で購入する者がいるのではないですか?
宿泊等施設は、勤労者の健康増進、みかん減反対策としての地域振興策などの国策に対し、神奈川県・市・地元地域が協力することによって建設されました。また、市民の雇用や市内企業との取引などの経済効果や、片浦地域、さらには市全体の地域活性化においてなくてはならない施設です。
したがって、市が施設を売却した後も、将来にわたって宿泊施設として安定した経営をしていくことが求められます。このため、ただ単に売却価格が高いということではなく、こうした適切な施設運営を行っていくことが確保されている売却先を選ぶことが重要ですが、それを競争入札で実現することは難しいと考えています。
これまで全く付き合いのない第三者に売却することによる様々なリスクを考慮すると、現賃借人であり、施設を売却する際の第1交渉権者たる小田原ヒルトン(株)に本施設を売却することが妥当であると考えています。
また、このことにかかる事業面、法令面における専門家の検証の結果でも、今回の売却の方が、現賃貸借契約の満期を待って競争入札を実施するよりも、本市に有利であることが明らかであると考えることには相当程度の理由があるとされ、法律上の論点に関し、地方自治法等に抵触しないものとされています。
これらのことを総合的に検討した結果、世界的なブランドであるヒルトン社が、施設を取得することにより、小田原に根を下ろしてホテル事業を継続していくことが、市や市民の皆さんの将来にとって最も有益であると判断したものです。
Q9 売却の方法に問題はないのですか?
売却を検討するにあたり、専門家による検証を実施しましたが、事業面の検証においては、小田原ヒルトン(株)に随意契約で売払うことに一定の合理性があること及び購入者としての必要要件を満たしているとの結論に至りました。さらに、法令面の検証においては、随意契約の適正性や売却スキームの妥当性などを含めた検証を行いましたが、今回の売却の方が現在の賃貸借契約の満期を待って競争入札を実施するよりも、本市に有利であることが明らかであると考えることには相当程度の理由があるとされ、地方自治法等法律上の論点に抵触しないものとされました。
Q10 市民への説明が不十分ではないですか?
今回のケースは事業運営のノウハウも絡む交渉事の側面があったため、途中経過における市民の皆さんとの情報共有が難しい事案でした。結果として、売却スキームに関する事実関係が一通り整理できるまで、市民の皆さんへの公式な説明ができませんでしたが、市民の皆さんの声は真摯に受け止め、今後の情報共有の在り方については、適切な対応を考えてまいります。
なお、平成24年11月13日に市役所の大会議室において市民説明会を開催しております。当日は40名ほどの方にご参加いただき、十数名の方からご意見やご質問をいただきました。また、この前にも、片浦地区の各自治会長に説明を行い、地元の意向を確認させていただいたり、 11月9日には臨時記者会見を開き、各報道機関を通じて、多くの市民の皆さんに今回の件をお知らせする機会を設けてまいりました。