消防広域化の効果(まとめ)~広域化から5年が経過~

平成25年3月31日に、県西地域2市5町(小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町)で消防の広域化をしました。消防広域化から5年が経過する中で、定期的に広域化の効果について分析・検証を積み重ねてきた結果、現場到着時間の短縮や初動体制の強化など、相応の効果が毎年継続して得られており、今後も同様の効果が継続することが予測できます。  

ファイヤーけしまる
ファイヤーけしまる(AED)

<主な効果>

ファイヤーけしまる(消火活動)

1 救急車や消防車の到着時間が短縮

消防の広域化により、これまでの管轄区域にとらわれず、行政区域を超えた消防活動が可能となったことから、災害地点(地区)に最も近い署所からの出動を原則として出動区域の見直しを行ったことで、救急事案においては小田原市小竹で「約4分」現場到着時間が短縮するなど、旧管轄境付近の地区を中心に現場到着時間が短縮しています。
一方、救急事案と違い、複数の部隊が出動する火災事案等については同様の事案がなく、広域化後の分析データも少ないことから、広域化前との比較分析が困難であるが、過去の災害データなどをもとに算定した(一財)消防防災科学センターの調査・分析結果では、火災事案等についても現場到着時間が短縮していることが分かっています(図1を参照)。

【図1】現場到着時間(火災等)の短縮効果<広域化前後の比較>

最先着隊の現場到着時間の短縮効果

最先着隊の現場到着時間の短縮効果 

第2着隊の現場到着時間の短縮効果

第2着隊の現場到着時間の短縮効果 

  • 上図の色塗りされた部分が効果の現れた地区になります。
  • 最先着隊よりも第2着隊において、多くの地区で時間短縮の効果が現れています。

2 出動部隊の増加で初動体制が強化

災害活動においては、初期段階でいかに迅速に多くの消防力(人員や消防車など)を投入できるかが、被害の軽減に大きく影響します。南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町及び開成町では、出動計画上、初動体制(第1出動)における部隊数が6隊から10隊に増加したことで、災害対応力が強化されています。
また、小田原消防署、足柄消防署の双方から部隊が出動することで、広域化前より迅速に多くの部隊が現場到着することができ、火災等の拡大を防ぎ、被害を最小限に抑えるなどの効果が現れています。

【図2】消防広域化の効果件数<旧管轄区域を越えて活動した件数>

消防広域化の効果件数
  • 旧管轄区域を越えるとは、例えば、中井出張所(中井町:旧足柄消防組合)が小竹地区(小田原市:小田原市消防本部)の火災に出動するということが挙げられます。

3 補完(バックアップ)体制が強化

広域化前に運用していた消防隊と救急隊の兼務体制(山北出張所と中井出張所)を廃止し、消防隊と救急隊がそれぞれ単独で運用できるようになったことで、部隊の充実が図られ、第2出動、特命出動における総出動部隊数が増加することで、現場到着時間が短縮する(より早く包囲態勢を取れる)など、消防対応力が強化されています。
なお、広域化前に発生していた救急隊全隊出動に伴う問題が解消されたほか、山岳救助事案や高速自動車国道における災害のように、救助隊等の部隊活動が長時間に及ぶ災害に対しても、別の救助隊等が即時対応することが可能となるなど、広域化により他の事案への補完体制が構築されています。
また、広域化により出動エリアが増加する一方で、今までのような遠方への出動は減少したことから、自地域の災害に備えることが可能になり、また、次の災害に備える補完(バックアップ)体制が強化されています(図3を参照)。
 
※図3は岡本出張所の消防隊が出動しているときに、管内で火災が発生した場合に、どう補完されるかを示したものです。

【図3】補完体制イメージ

補完体制

4 大規模災害への対応力が強化

広域化により、部隊数の増加や補完体制が強化されたことで、大規模災害への対応力にも効果があります。
広域化後の災害では、平成29年7月に発生した南足柄市塚原地内の倉庫火災があります。この火災では、消防統括本部を初めて運用したことで、情報収集、指令命令、関係機関との連絡調整、マスコミへの対応等を組織的に対応しています。
また、平成27年6月に発生した東海道新幹線車両火災があります。この火災では、広域化により出動部隊数が増加したことで、統一的な指揮命令下で、延べ22隊、71人の隊員が活動にあたったほか、JR東海旅客鉄道などの関係機関と連携が図られたことで、国内初の事案となった新幹線車両火災にも迅速に対応しています。

支援車

新幹線車両火災では救護所として活躍した支援車

これらの事例は、広域化による部隊数の増加や補完体制など、広域化のスケールメリットにより総合的対応力が強化されたことによる効果となります。
また、今後、発生が懸念されている地震等の大規模災害時には、緊急消防援助隊はもとより自衛隊、警察等の連絡・調整窓口が一本化されたことにより、被害の大きい地区への対応が迅速かつ的確に行える体制が構築されています。

その他

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