消防広域化の効果(まとめ)~広域化から10年が経過~

小田原市消防本部が足柄地域まで管轄する広域消防として発足してから10年が経ちました。足柄1市5町(南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町)を管轄していた足柄消防組合との管轄統合のスケールメリットによって当初に期待された効果を振り返るとともに、今後の課題について整理します。

目次

管内地図
広域化後の小田原市消防本部管轄

1 組織運営の足跡

消防広域化では、当時の小田原市消防本部と足柄消防組合の管轄範囲の境界が無くなり、それぞれが有していた消防車、救急車等が統合された消防指令センターによって一元的に運用されるようになりました。
組織規模の拡大と施設や車両、人員の合理化は、その後も署所の再整備事業や組織体制の改編を可能とさせ、消防力の基盤強化に繋がっています。

けしまるが消火活動を行っているイラスト

【図1】広域化10年時点(令和5年4月1日)での組織規模(※災害件数は、令和4年中。)

管轄面積
494.00㎢

管轄人口
292,147人

災害件数
火災:99件
救急:18,632件
救助:231件

消防署所

消防本部:1本部
消防署:2署
分署・出張所:8署所

消防職員数
373人
(消防本部:66人、消防署所:307人)

消防部隊数
指揮隊:2隊、調査隊:2隊、消防隊:11隊、特装隊:2隊、救助隊:3隊、救急隊:11隊、日勤救急隊:1隊

消防本部の各課

(日勤)
消防総務課、予防課、警防計画課、救急課、情報司令課(情報管理係)、小田原消防課、足柄消防課

消防を取り巻く社会環境の急激な変化は、広域化の当初に想定されていた消防の将来像を大きく変容させています。消防広域化10年における成果の振り返りでは、初期に期待された内容に併せて、その後の組織運営の中で財政的な貢献度が高いと目される部分に焦点を当てて見ていきます。

2 取組と成果

⑴ 現場到着時間等の短縮

広域化により管轄区域を超えた消防活動が可能となり、災害地点(地区)に近い署所からの出動、または直近にいる部隊が出動することで、災害に迅速に対応できます。統合された消防指令センターが管内のすべての災害情報を把握し、すべての車両と部隊を機動的かつ効率的に運用しています。

けしまるがAEDを使っているイラスト

【図2】旧管轄区域を越えた出動による現場到着時間等の短縮イメージ

旧管轄区域を超えた出動による現場到着時間等の短縮イメージ

令和2年には、西大友出張所と国府津出張所が統合され成田出張所として新設されたことにより、管内全体で見たときの災害(リスク)カバー率の向上と現場到着時間の短縮が実現しています。また、岡本出張所と山北出張所の建て替えが行われ、消防施設としての耐久性と時代に合わせた機能向上が図られました。

⑵ 初動体制の強化

ア 火災第一出動とバックアップ体制

車両・部隊が統合されたことで第一出動における部隊規模の拡大(6隊⇒10隊)と予備消防力の両方が同時に増加しています。
第1出動体制が広域化前後で6隊から10隊に増加し。第2事案が発生した場合にも広域化前以上の出動部隊数で対応可能。

イ 大規模災害への対応力の強化(自治体間の情報共有と災害対策本部連携)

「順次指令メール」によって建物火災の発生地となる市町の防災部局と消防団に対するメールが一斉発信され迅速な対応が可能となっているほか、非常災害時に立ち上げられる消防統括本部が運用する統括本部システムを利用したネットワークにより、2市5町の災害対策本部や消防団と双方向での情報共有が可能になっています。また、激甚災害における緊急消防援助隊などの受援体制を一元的に管理します。

⑶ 活動要員の増強、業務の専門化・高度化

ア 組織体系の統合

組織全体の機能が統合され重複投資が解消されました。人員の有効配置が可能になり、消防需要に合わせた組織体系の改編が行われています。

【表】広域化前後の組織体系の変化

(令和5年4月1日現在)

【広域化前】 ▶▶▶ 【広域化後】
小田原市消防本部 足柄消防組合
消防本部
消防指令センター
1 1 1
事務部署(日勤) 3課1係(※1) 3課(※2) 7課(※3)
署所 6署所 5署所 10署所
部隊及び隊員編成例
例)山北出張所
消防隊(2人)、救急隊(3人) 
計5人
※兼務隊(災害先行型出動)
消防隊(4人)、救急隊(3人) 
計7人
※専任化した部隊出動
  • 1 消防総務課、警防課、予防課、管理調査係
  • 2 消防総務課、警防課、予防課
  • 3 消防総務課、予防課、警防計画課、救急課、情報司令課情報管理係、小田原消防課、足柄消防課

イ 部隊の高度化・専門化

3隊の救助隊を署所の地域特性に合わせて、高度化・専門化させました。

【表】広域化後の救助隊の改編(高度化・専門化)

救助隊の区分 高度救助隊 特別救助隊
配置の基準 中核市 人口10万人以上
救助資機材の基準 高度救助資機材 救助隊資機材プラスアルファ
対応事案 一般救助
高度救助資機材対応事案 水難救助 山岳救助
配置署所 小田原消防署 南町分署 松田分署

ウ 予防査察

防火対象物への火災予防の立入検査は、予防事務の日勤所管課(予防課、小田原消防課、足柄消防課)だけでなく警防課の部隊にも拡大。違反状況の改善率の向上により施設利用の安心安全に繋がっています。

【表】広域化前後の査察部隊数の変化

【広域化前】▶▶▶ 【広域化後】
小田原市消防本部 足柄消防組合
日勤部署 1 1 3
当直部署 0 0 22
合計 2 25

⑷ 経費削減

ア 消防救急デジタル無線の整備事業

平成26年4月に消防救急デジタル無線の基地局整備が完了しています。令和2年4月には、高機能指令台の更新により部隊統制などの性能が強化されています。また、令和2年には、無線電波の不感地帯の対応としてIP無線機及び衛星通信電話が警防部隊に配備されています。
広域化前では、それぞれが無線基地局を3から4基ずつ整備する必要があるところ、地域統合により合計4基でカバー可能に。

イ 重複装備の解消(はしご車)

3台のはしご車を両消防署の地域特性に合わせて1台ずつ配備。
広域化時点で3台あったはしご車を、その後の改編によってそれぞれの消防署管轄の地域特性に合わせたタイプ(30メートル級タイプと屈折式タイプ)で1台ずつの配置に合理化。

ウ 広域消防組織の運営費と分担

広域消防に係る運営事務は、足柄1市5町の消防事務が小田原市に委託され、運営経費は広域消防事業特別会計として2市5町で分担されています。

(単位:千円)

直近の令和4年度の広域消防特別会計の決算額は、約44億円となっています。

組織規模に対応した消防組織運営の業務管理は、小田原市に整備されている情報システムの活用のほか、各専門部局との間での実務調整により組織運営と各種事業の管理が図られています。

人事管理 労務管理、人事評価、人材教育
財務管理 財政計画、会計管理
情報共有 行政ネットワークシステム(基幹系ITシステム、情報系ITシステム)
行政計画 小田原市総合計画、小田原市行政改革実行計画、小田原市消防本部消防計画ほか
実務調整 本庁各課における消防行財政運営の実務調整

⑸ 組織の活性化(キャリアデザインと教育機会の拡充)

部署が増加し専門化されたほか、配置署所の地域特性が広がったことで職員個々の業務経験の拡大と専門性の向上に繋がっています。また、広域による人員規模の増加は、教育研修などの経験機会を広げ、人材能力の向上に繋がっています。

【広域化前】▶▶▶ 【広域化後】
小田原市消防本部 足柄消防組合
日勤部署 4 3 7
当直部署 14 12 22

⑹ 広域化後の取組

ア 柔軟な部隊運用

高齢化の進展やコロナウイルスの影響により、通常編成の救急隊が全隊出動してしまう状況が発生しています。消防車と救急車の兼務対応隊や日勤救急隊の創設による対策のほか、さらに救急事案が集中したときには、臨時の部隊編成によって非常用救急車を運用しています。

過去10年間の救急出動件数・搬送人員の推移(小田原市消防本部管内)
-小田原市消防年報から抜粋-

出動件数 搬送人員 死亡 重症 中等症 軽症 その他 軽症比率
平成25年 14,646 13,375 269 1,206 5,752 6,145 3 45.90%
平成26年 15,011 13,724 263 1,290 6,403 5,768 42.00%
平成27年 15,276 13,900 280 1,363 6,322 5,935 42.70%
平成28年 15,416 13,775 284 1,373 6,511 5,606 1 40.70%
平成29年 16,029 14,158 280 1,340 7,042 5,496 38.80%
平成30年 16,588 14,543 266 1,307 7,284 5,686 39.00%
令和元年 16,427 14,374 257 1,329 7,313 5,475 38.10%
令和2年 14,702 12,890 309 1,208 6,471 4,902 38.00%
令和3年 15,430 13,272 294 1,143 6,673 5,162 38.90%
令和4年 18,632 15,236 279 1,239 7,532 6,186 40.60%
令和5年 14,754 令和5年9月30日現在。令和4年同期比で約1,000件増加。
  • その他:病院以外の場所への搬送(接骨院、警察等)

イ 地域の応急救護体制

応急手当指導員制度を足柄地域にも広げ、定期救命講習の受講機会を増やしたことによりAED(自動体外式除細動器)の取り扱いの受講者数が増加しています。
定期救命講習受講者数の推移のグラフ。令和4年度までの定期救命講習の累計受講者は、2545人となりました。

ウ 緊急防災・減災事業債の活用

庁舎施設の建替えについては、消防広域化事業に対して国が財政措置する緊急防災・減災事業債を活用しています。

エ 女性職員の活躍推進

女性の当直環境が整備済みである署所数は、管内10署所のうち7か所です。
当直勤務の施設や服制、雇用環境について女性職員に対応した整備が計画的に進められており、現在では、職員数に占める割合は県内でもトップクラスです。

4 今後の課題

私たちを取り巻く環境は、近年の世界的な異常気象だけでなく人口減少や超高齢社会などによる急激な変化の中にあります。消防も救急件数の急激な増加や災害態様の変化に対応していくほか、老朽化する施設や車両の更新も合わせながら消防力を維持させていかなければなりません。また、併せて職員の定年延長や女性職員の活躍推進、働き方改革などによる組織体制の変革も求められています。消防では、広域化によるスケールメリットと効率化を引き続き図っていき、時代の変化に合った持続可能な消防組織の実現に向けて取り組んでいきます。
救急件数の推移と将来予測

その他

この情報に関するお問い合わせ先

消防:消防総務課 政策調整係

電話番号:0465-49-4420

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電話:0465-33-1300(総合案内)

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