病理診断科

病理診断科

診療科紹介

病理とは病気の診断や原因の究明を目的とし、更に治療の根拠を示す医療の領域です。それを行う所が病理診断科で、臨床検査科に接してあります。当科は臨床科(標榜科)の1つであり、病理診断は医師免許が必要な『医行為』で、患者様と顔を合わすことがほとんどない病理医とよばれる医師が勤務しています。当科には常勤病理医 1 名と非常勤病理医 4 名が在職しています(スタッフ紹介参照)。 また、病理診断科配属の臨床検査技師は常勤技師 4 名、非常勤技師 1 名で、病理医と二人三脚で病理細胞診断に当たっています。病理診断科は中央診療部門として、すなわち診療活動の縁の下の力持ち的位置づけで活動しています。

診療内容


主な業務内容は組織診断、細胞診断、病理解剖、バイオマーカー検査で、認定病理検査技師、日本臨床細胞学会認定細胞検査士(臨床検査技師)の協力のもと専門性の高い診断体制を構築しています。

組織診断

組織診断とは主に生検(内視鏡検査等で患者様から 5mm 程度の小さな組織を採取する検査)と手術により切除された体の一部(組織)の診断で、患者様にもわかりやすい結果報告を行っています。
術中迅速組織診断は手術中に取り出された病気の一部(組織)を瞬間凍結し、特殊な器具を用いて直ちに標本を作製して、良性・悪性の診断や切除臓器の端に癌の取り残しがあるかなどを判定することによって、術式の決定や変更を提案します。手術術式などに影響する業務で、手術中の組織採取から診断報告までをできるだけ短時間(5~30分以内)で口頭連絡を行い、同時に報告書を発行するようにしています。 

細胞診断

細胞診断は体の一部、あるいは体から排出された細胞をガラスに塗りつけて、色付けをして顕微鏡で観察し、どのような細胞(病気)があるかを判定します。子宮の一部、喀痰、 尿、胸水・腹水、乳腺、甲状腺など様々な検査材料の細胞を検査します。 乳腺、甲状腺などの『しこり』の診断時には、この『しこり』を細い注射針で刺して細胞を直接採取します。国家認定を受けた細胞診断検査に携わる臨床検査技師が細胞診断標本全体をくまなく観察しますが、これは初期判定検査という最も重要な診断過程で、それをさらに病理医 (日本臨床細胞学会認定専門医・指導医)が最終診断して、より正確な判定を行っています。
組織診断と同様に細胞診断においても術中迅速細胞診断が行われる場合があります。両悪の判定が主に行われますが、短時間で結果報告ができる点で有用性の高い診断方法になっています。また、手術以外の細胞検体採取場所、たとえば内視鏡室で、悪性細胞が採取されているか否かの判定にも細胞診断が用いられることがあり、これを ROSE(rapid onsite evaluation、迅速細胞診)といいます。 

病理解剖

病理解剖は死因となった病気は何か、生前の臨床診断が正しかったのか、病気に対する治療効果の程度などを明確化し、将来に向けて治療法の改善、開発などに結び付けるため、ご遺族の承諾を得て行います。ご遺族の負担軽減のため検査技師の十分な準備や介助などにより、可能な限り短時間で行うようにしています。病理解剖には臨床研修医の見学や介助を必須としており、研修医のための重要な教育機会にもなっています。

バイオマーカー検査

バイオマーカー検査
近年、上記の組織・細胞診断に加えて、特定の医薬品の有効性や安全性を一層高めるために、その使用対象患者に該当するかどうかをあらかじめ確認する検査(コンパニオン診断)を行っています。当院ではコンパニオン診断が可能な免疫染色装置が新規導入され、 外部委託期間に依頼していたころに比較して結果報告も早く行えるようになり、治療開始までの時間が短縮されています。
写真は肺癌におけるコンパニオン診断である PD-L1(22C3)の免疫染色像です。腫瘍細胞における細胞膜の陽性像の割合を検討し、免疫療法薬の適応可能性を判断します。 がんの組織から多数の遺伝子を調べ、遺伝子変異を明らかにすることで、患者さん一人ひとりの体質や病状に合わせた治療を行う医療をがんゲノム医療と言います。神奈川県西部地域ではがんゲノム医療を行える施設がありませんでしたが、現在、がん患者さんに効果のある薬を届けられるように、がんゲノム医療を推進しております。がんゲノム医療では品質の高い適切に作製された組織材料が必要となりますが、病理診断科がその役割を担っております。

スタッフ紹介

当院の病理診断は常勤病理医1名(主任部長)、非常勤病理医4名で行っています。
氏名 役職名 資格等
横瀬 智之 常勤医師
(病理診断科 主任部長)
・日本病理学会病理専門医・分子病理専門医
・日本専門医機構認定病理医
・日本臨床細胞学会細胞診専門医・細胞教育研修指導医
・日本臨床検査医学会臨床検査管理医
・死体解剖資格
林 大久生 非常勤医師 ・順天堂大学医学部 人体病理病態学講座 准教授(医局長)
・日本病理学会認定専門医・研修指導医
・日本病理学会分子病理専門医・指導医
関 れいし 非常勤医師 ・戸田中央病理診断科クリニック部長
・日本病理学会認定専門医・研修指導医
・日本臨床細胞学会認定細胞診専門医・指導医
村井 聡 非常勤医師 ・昭和大学医学部 臨床病理診断学講座 助教
・日本病理学会認定専門医
大平 泰之 非常勤医師 ・昭和大学医学部 臨床病理診断学講座 助教
・日本病理学会認定専門医

診療実績(診断精度管理、学会・論文発表)

診療実績

2020~2024 年度までの5年間の病理検査部門の診断(検査)件数と病理解剖件数を下の表に示しています。 

年度 組織診断件数 細胞診断件数 病理解剖件数
2020 3,853 4,824 4
2021 4,173 4,903 11
2022 4,318 4,709 3
2023 4,410 4,458 4
2024 4,636 4,124 1

診断精度管理

外部精度管理と内部精度管理を行っています。
外部精度管理としては、正確な病理検査を提供する技術や検査精度を保つために、日本臨 床衛生検査技師会や日本臨床細胞学会関連の精度管理に参加しています。また、日本病理精度保証機構の年 2 回のサーベイに参加し、教育・研修会にも参加し、精度の確認と精度向上を行っています。
内部精度管理としては、臨床医と病理医、検査技師による臨床情報と病理検査結果の討論会も行っており、多職種間の十分なコミュニケーションを計るよう努力しています。また、技師が施行した超音波検査を中心に超音波検査を担当した技師と病理診断科所属技師による検討会も行っており、乳腺、肝臓、胆嚢、膵臓、甲状腺などの疾患を技師主導のもと定期的に行い、病理診断科と超音波検査を行っている生理検査室の技師間の連携を図り、的確な検査や診断が行えるよう努めています。病理医、検査技師の情報共有と精度向上のため、週 1 回勉強会を開催しています。

小田原市立病院

〒250-8558 神奈川県小田原市久野46番地 電話:0465‐34‐3175ファックス:0465‐34‐3179

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