骨粗鬆(しょう)症リエゾンサービスの紹介
高齢者の骨折
高齢者の骨折は転倒など軽い怪我で発生し、若い方では起きないような大きな骨に発生するため手術が必要となってしまうことがしばしばあります。その手術も骨がもろいため、非常に難渋します。また糖尿病や心臓病、脳梗塞といった合併症をお持ちの方が多いので手術すること自体もリスクがあがります。骨折では命に関わる病気ではないと考える方も多いと思いますが、代表的な大腿骨近位部骨折を受傷された方は死亡率が4倍になるとも言われています。
骨折を予防するには
骨折を予防するには大きく2つの対策が必要です。1つは転倒予防で、運動でロコモティブシンドロームにならないようにしたり、プロテクターで万が一転倒した際に怪我しないようにしたりすることです。もうひとつは骨粗鬆症の治療です。食事や運動で骨質を保つことは重要ですが、骨密度が低い方は投薬の治療が必要となります。
骨粗鬆症の投薬治療
かつてはカルシウム製剤やビタミンD製剤が主流でしたが、近年高齢者の骨折が増加の一途をたどっていることをみても、それだけでは骨折予防の効果は不十分と思われます。近年より骨質の改善効果の高い製剤が多く開発されています。内服剤が主流ですが、内服剤をうまく継続できない方や、重度な骨粗鬆症の方には注射剤を使用される場合もあります。大事なことは、1つは病態に即した製剤を使用すること、もう1つは投薬を継続することで、続けなければせっかくの薬の効果も発揮できません。
骨粗鬆症リエゾンサービス
リエゾンとはフランス語で連携や連絡という意味です。医療者というと医師や看護師を思い浮かべると思いますが、薬剤師、栄養士、理学療法士、その他多くの専門の職種があります。こういった多職種の医療者がチームになって治療のサポートをすることをリエゾンサービスといいます。また職種間だけでなく、他の医療施設や地域の医療サポートの方々の連携も含まれます。骨粗鬆症の治療はまず病気を理解し、薬の効果や副作用を知り、正しく使用し、なにより長期にわたり継続することが重要です。英国、豪州では、すでにこのようなサービスにより高齢者の骨折が減少傾向に転じており、本邦でも2014年に第1回の骨粗鬆症マネージャーの認定試験が開始されました。それに伴い、骨粗鬆症リエゾンサービスを導入する施設が散見され、効果が期待されています。
当院でのとりくみ
2016年3月より骨粗鬆症リエゾンサービスを立ち上げました。整形外科医、産婦人科医、病棟看護師、外来看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、事務員で構成されております。まだ始まったばかりのとりくみで、試行錯誤の状態ではありますが、少しでも高齢者の骨折が減るよう努力を続けてまいります。
骨粗鬆症リエゾンサービスの対象者
現在、骨粗鬆症に伴う大腿骨近位部骨折で当院に入院された患者様に限定して行っております。入院時に医師、看護師よりサービスの説明があります。希望者はその際お声がけいただければ幸いです。今後徐々に対象となる疾患を拡大していく予定です。
骨粗鬆症リエゾンサービスの内容
- 骨粗鬆症を問診や骨密度や採血で評価します。
- 骨粗鬆症について、患者様、ご家族に説明します。
- 投薬、食事、運動について専門職より説明します。
- 退院時に 1.のデータをまとめてお渡しします。転院先および退院後の治療にぜひお役立てください。