9日、早朝に小田原を出立、東京へ。庁内プロジェクトチーム(PT)を中心に検討を進めている、鬼柳・桑原地区の今後の整備と保全の在り方に関してご意見などを伺うべく、各所をお訪ねした1日でした。
豊富な水量のある、鬼柳・桑原地区の水田環境
まずは、中野区にあるキリンホールディングス(株)をお訪ねし、小田原高校の大先輩でもある代表取締役会長CEOの磯崎功典さんとお話をさせて頂きました。今後の日本の食料自給や、生物多様性など環境との共生といった観点からの、地域農業の保全や支援について、ご高見を伺うことが出来ました。幅広く食品を扱う企業グループのトップであり、ご実家である下曽我の農業に今も自ら携わるお立場から、「食」を支える農の大切さ、地域にある農地の重要性を強く認識されておられます。現在、経団連の農業活性化委員会の委員長のほか、農水省内の小委員会にも関わっておられるなど、国の農業政策や企業の農業関連の取り組みに具体的に関わるお立場でもあります。
柑橘や梅も含め、元来豊かでありながら現在その存続が危ぶまれている小田原の農業の現状については、磯崎会長も強く懸念されています。環境として貴重であれば尚のこと、まずはその保全に力を尽くすべきだとのご意見でした。また、そうした動きについては企業も関心を抱いており、何らかの企業チームのようなものが組めたら協力を得られるのでは、とのご見解も。今後、引き続き大所高所からご助言頂くことをお願い申し上げました。
次に、港区にある世界自然保護基金(WWF)ジャパンへ。鬼柳・桑原地区の貴重な生物や植物の分布などについては、現在市で生物相調査を行っていますが、その状況報告と、今後の取り組みに対するご助言などを伺いました。環境保全に関心の高い企業などの参画を得て行われている国内各所でのプロジェクトの様子をお聞きしたほか、鬼柳・桑原地区のように、地権者である農家の皆さんの思いと、生物多様性の観点からの希少性の、いずれをも大切にしながら進めていくべきことに関し、様々な人たちと幾つもの保全事業に携わってこられた知見から、貴重なご意見を伺うことが出来ました。
最後に、中央区にある日本自然保護協会へ。協会の理事長である土屋俊幸さんには、市で開催している「持続可能な地域社会のデザイン」と題した一連の講演&対談の企画にて、4月に小田原にお越し頂いた経緯があります。今回もその流れで、国内で先行してネイチャーポジティブなどに取り組んでいる地域の事例を伺いつつ、鬼柳・桑原地区に関する現在の様子などをお伝えしアドバイスを頂いたものです。
同協会のネイチャーポジティブ担当主任である高川さんからは、WWFでのご意見と同様に、農家の皆さんの現状に十分な配慮が必要であることを前提に、同地区の生物相や水田環境がいかに貴重・希少であるかについて、その価値を明らかにすること、加えて、同地区が育んできた歴史や文化をしっかり評価することも大切との、傾聴に値するご意見を頂きました。