所信表明・施政方針

令和3年度施政方針(令和3年2月17日)

1.はじめに
2.市政運営の基本方針

3.先導的な取組

4.分野別の取組

5.むすび


1 はじめに
世界は今、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という未曾有の試練に直面しています。わが国では、令和3年1月7日、神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県に二度目となる緊急事態宣言が発出され、未だ収束の時期を見通すことが困難な状況が続いており、本市においても地域医療や地域経済に大きな影響を与えております。ひっ迫する医療現場の最前線で懸命に命を救うことに尽力いただいている医療関係者の皆様をはじめ、私たちの暮らしを支えてくださるエッセンシャルワーカーの皆様、さらには、この難局に立ち向かって奮闘しておられるすべての皆様に、改めて敬意と感謝の意を表します。
一度目の緊急事態宣言後、令和2年5月に私が市長に就任して、まずもって着手したものが、市民の命と暮らしを守るための新型コロナウイルス感染症対策でありました。「生活を守る、事業者を守る、教育を守る、地域医療を守る」の4本の柱を掲げ、市立小中学校の給食費3か月分の無償化、おだわらっこ応援券やおだわら梅丸商品券の発行、中小企業事業者等支援金の対象拡大などの支援策を打ち出し、スピード感を持って実施してまいりました。また、令和2年10月には、新型コロナウイルス感染症への対応をきっかけとし、本市、神奈川県、神奈川県立病院機構の3者で、小田原市立病院と県立足柄上病院の連携と協力に係る基本協定を締結し、地域医療連携の新たな一歩を踏み出しました。
一方、コロナ禍において、リモートワーク、ワーケーションなど新しい働き方や暮らし方が注目されている中、都心にアクセスしやすい交通の利便性や豊かな自然環境などの魅力を持つ本市への移住者が増えており、令和2年6月以降は人口の社会増が続いております。
そして、令和2年12月のミナカ小田原のグランドオープンに続き、令和3年は、新たな文化・芸術の拠点となる小田原三の丸ホールや観光資源の活用を図る拠点となる小田原市観光交流センターがオープンすること、延期された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることは、本市の文化、スポーツのさらなる振興が図られ、新たな賑わいの創出をもたらすなど、地域経済の活性化に大きく寄与するものと考えております。
さらに、まちづくりや地域の課題解決を行政の力だけで成し得る時代は去り、市民、企業、大学など、多様な民間との連携により創り上げるべき時代となった今、本市が有する高い市民力や地域力に加え、民間力が正にその真価を発揮する時を迎えたものと考えております。
混沌とした時代ではありますが、こうした人口増の兆しやこれまで積み重ねてきた様々な取組の成果といったものが、あたかも雲間から降り注ぐ希望の陽光のように射し込んでいます。私は、先人達から受け継がれてきた小田原の変わらぬ魅力に、私たちが創生していく光を融合させ、小田原の新たな価値を創造していく、そして小田原の潜在力を最大限に発揮させることができれば、必ずや、「世界が憧れるまち“小田原”」という希望を実現することができるものと確信しています。

2 市政運営の基本方針
【新型コロナウイルス感染症対策】
令和3年度の市政運営においては、何よりもまず、新型コロナウイルス感染症から市民の命と暮らしを守るため、引き続き「生活を守る、事業者を守る、教育を守る、地域医療を守る」の4本の柱に基づき、これまでの取組の経験を生かして、的確でスピード感のある政策を展開してまいります。
県から令和2年9月に高度医療機関として認定を受けた市立病院では、感染対策を強化した専門病棟において、一定の病床数を確保しながら重症患者の診療を行うとともに、圏域内の他の医療機関との協力や役割分担をする体制を整え、さらなる医療体制の充実を図ってまいります。加えて、新型コロナウイルスワクチン接種の実施については、令和3年1月に新設した組織を中心に、関係機関と綿密に連携しながら、迅速かつ着実に進めてまいります。
また、緊急事態宣言に伴う営業時間の短縮や不要不急の外出自粛の影響により、事業収入が減少したにもかかわらず、国及び県の支援対象とならない市内事業者の支援を速やかに開始し、事業の継続と雇用の維持を図り、小田原の経済を守ってまいります。
その上で、目下のコロナ禍というピンチを小田原の潜在力を開花させるチャンスと捉え、ポストコロナを意識しながら、新しい日常「ニューノーマル」に対応した市政運営としてまいります。国も、そして世界も進めるデジタル化や脱炭素化の実現に向けた取組に、この小田原の地から果敢にチャレンジし、コロナ禍においても、誰一人取り残さない持続可能な地域社会を実現してまいります。

【「世界が憧れるまち“小田原”」の実現】
私は、「世界が憧れるまち“小田原”」の実現に向け、「豊かな環境の継承」という暮らしの土台に、誰もが安心できる医療体制や魅力的な教育環境等を備える「生活の質の向上」と、働く場や雇用環境の整備とともに、交通の至便性や多様な素晴らしい地域資源などを有する小田原のポテンシャルを生かした「地域経済の好循環」の両輪を持続的に回していくことを基本方針とする考えであります。
ポストコロナの時代において、小田原に行ってみたい、住んでみたい、住み続けたいと思っていただくためには、人々の暮らしが安心と希望に満ちていなければなりません。そこで、「生活の質の向上」においては医療・福祉と教育を、「地域経済の好循環」においては企業誘致を、「豊かな環境の継承」においては環境・エネルギーを、先導的に注力していく4領域として掲げてまいります。
そして、公民連携とデジタル技術の活用を、市政運営を力強く加速させていく2つの推進エンジンとして位置付けてまいります。若者や女性の感性や発想力、民間の経営力などを公民連携という形で開花させていくとともに、最新のデジタル技術を医療や教育、防災等の分野に取り込むなど、未来志向の課題解決の取組を積極的に行ってまいります。
こうした基本的な考え方を共有していくため、令和2年度末には、「世界が憧れるまち“小田原”」を実現する「2030(ニセンサンジュウ)ロードマップ」を策定し、市民の皆様にお示ししていきます。ここでは、市政運営で先導的に注力していく、医療・福祉、教育、企業誘致、環境・エネルギーの4領域において、2030年のあるべき姿や、そこに至る工程を取りまとめてまいります。
あわせて、2030ロードマップと連動した庁内体制も整えてまいります。令和3年度の組織・機構では、推進エンジンの体制として、公民連携と若者・女性活躍を推し進める「未来創造・若者課」と、デジタル化によるまちづくりを推進する「デジタルイノベーション課」を新設するほか、小田原への人の流れを創出していく「移住定住係」の新設、広報広聴業務を迅速かつ戦略的に展開する市長・副市長直轄の「広報広聴室」の設置などの改編を実施いたします。
このように、令和3年度は、「世界が憧れるまち“小田原”」の実現に向けた実質的なスタートの年になります。小田原の地で、より多くの方が安心して活躍できる環境を整えるためにも、本市域内での取組に終始するのではなく、県西地域や県を越えた圏域の視点を持ち、国や県とのさらなる連携も図りながら、私たちの暮らしを豊かでより一層便利なものといたします。そして、様々な機会を捉えて、国内外から人や民間企業を呼び込み、結果として人口20万人規模の都市を目指してまいります。

3 先導的な取組
令和3年度の市政運営に当たり、本市として先導的に注力していく領域ごとの取組についてご説明いたします。

【医療・福祉】
地域医療体制につきましては、民間や県の医療機関のほか、介護・福祉施設等との連携を深め、公民個々の持つ特徴を生かした役割分担と関係強化により、県西地域が有する地域医療の力を最大限に引き出してまいります。また、市立病院では、今後も持続可能な病院経営を行っていくため、令和3年4月に経営形態を地方公営企業法の全部適用に移行し、病院事業管理者のもと、より自立的な経営に取り組むとともに、令和2年12月に策定した新病院建設基本計画に基づき、令和8年度の新病院開院に向けて必要な事業を進めてまいります。
地域共生社会の実現に向けましては、効果的かつ横断的な組織体制を整えて、取組を推進してまいります。具体的には、地域の見守りやサロン活動などの主体的な取組が広がっている現状を捉え、住民ニーズに対応した持続的な活動となるよう支援を継続してまいります。また、複合的な問題を抱える個人や世帯が増えている状況に対応するため、福祉に関わる様々な関係機関との連携を強化するとともに、福祉まるごと相談窓口での相談支援に加え、地域へのアウトリーチを通じて一人ひとりの問題解決に寄り添う伴走型の地域福祉相談支援等を充実させてまいります。
健康づくりの取組につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や健康二次被害を防止するための取組を引き続き実施してまいります。また、高齢者の保健事業と介護予防について、保険者による切れ目がないよう、一体的実施事業として取り組み、健康寿命の延伸を推進いたします。さらに、健幸ポイント事業や県と連携した未病の取組とともに、城下町おだわらツーデーマーチの開催や地域でのスポーツ活動を通じて、健康維持や生きがいづくりを進めてまいります。

【教育】
教育環境の充実に向けた取組では、ICTの効果的な活用により、多様な子どもたちの力を引き出し、子ども主体の学習を進め、学力向上を図ります。また、学力や非認知能力の伸びに着目した調査をモデル校で実施し、新学習指導要領が求める児童生徒の資質・能力の育成につなげてまいります。
あわせて、総合教育会議などにおいて教育大綱や学校教育振興基本計画の見直し作業に取り組むとともに、家庭教育支援のあり方の検討を進めてまいります。また、公立小学校の35人学級への段階的な移行という国の方針に先駆け、これまでの小学校1・2年生に加え、3年生の35人学級の実現を図るため、少人数指導スタッフを増員します。
幼児教育・保育につきましては、公立認定こども園の整備に向けた調整や公民幼保の保育者がつどっての意見交換会の開催により、質の高い就学前教育・保育などの子育て環境の充実を図ってまいります。

【企業誘致】
企業誘致につきましては、雇用機会の創出による移住促進と人口流出の抑制を図るとともに、本市への投資意欲の促進と市内企業への発注機会の増加につなげることを目的に、企業誘致推進条例の一部を改正し、小田原の強みを生かした市内産業用地への誘致や新たな工業団地の整備推進に取り組んでまいります。また、産業用地や操業環境に関する企業ニーズを把握し、企業誘致や操業維持・拡大につなげるため、積極的な企業訪問などに取り組んでまいります。
サテライトオフィスの誘致に向けましては、専門家の知見も取り入れながら誘致戦略を策定するとともに、都心にビジネスプロモーション拠点を設置し、都心の民間企業とのマッチングやシティプロモーションの機会を増加させることで、効果的な誘致活動を展開してまいります。
また、コロナ禍における新しい働き方に対応するため、小田原箱根商工会議所や地元金融機関等と連携して、新しい働き方に関する協議会を立ち上げるとともに、小田原のポテンシャルを生かしたテレワークやワーケーションの環境整備などを推進してまいります。
そのほか、産業振興と就労環境の整備として、市融資制度等による中小企業の経営支援、早期離職抑制の意識啓発や説明会の開催などにより、市内企業への就職と定着を図ってまいります。
また、農水産物など小田原の豊かな地域資源を生かし、「美食のまち」をテーマに掲げ、小田原の魅力を発信するとともに新たなビジネスの創出を目指してまいります。
【環境・エネルギー】
環境・エネルギー分野の取組につきましては、令和2年10月に、小田原市、箱根町の行政、議会、自治会及び小田原箱根商工会議所の7団体が共同で宣言した小田原・箱根気候変動ワンチーム宣言を踏まえ、2050年までのCO2排出量実質ゼロに向けて、気候変動にも対応した環境負荷の小さい再生可能エネルギーの導入拡大を推進します。
具体的な方策として、積極的な公民連携により、再生可能エネルギーと蓄電池を活用した分散型エネルギーシステムである地域マイクログリッドの構築・運用を一部エリアで始めるなど、地域で効果的に再生可能エネルギーを活用する仕組みの構築・拡大に向けて取り組んでまいります。
また、自然環境の再生と保全に係る課題解決の取組を経済的・社会的に価値化し、人と資金が循環する地域循環共生圏の構築を図ってまいります。さらに、小田原が誇る豊かな森林を次世代に継承するため、おだわら森林ビジョンを策定し、森林整備をはじめ木材利用や森林環境教育・木育など、森づくりと人づくりを進めてまいります。

【公民連携(若者・女性活躍)】
公民連携の取組につきましては、デジタル化やSDGsの取組に関わる民間企業、大学や研究機関等に加え、若者や女性などの多様な主体による新たな力の連携で地域課題を解決し、まちにイノベーションを引き起こす拠点「おだわらイノベーションラボ」をミナカ小田原内に開設します。
加えて、民間企業等において、各分野の第一線で活躍している専門人材を事業コーディネーターとして登用し、高い専門性と先進性を兼ね備えた民間のノウハウを生かして、事業担当課と連携しながら、本市が抱える課題の解決を図ってまいります。
また、公民連携の取組として、これまでに民間企業や大学等との連携協定を締結してきており、令和2年度は、風水害発生時の避難所として民間施設を利用することとした、下府中地区自治会連合会、株式会社ダイドーフォワードとの連携協定のほか、自動運転やドローンといった先端技術分野に関する協定を慶應義塾大学SFC研究所と、地域課題の解決や教育・研究機能の向上に関する協定を横浜国立大学と締結いたしました。今後は、医療やライフサイエンス、健康、福祉の分野も視野に入れ、民間企業や大学等が有する資産や強みと本市の課題を照らし、積極的に働きかけることで関係性を構築しながら、生活の質の向上や地域経済の好循環に寄与する連携を推進してまいります。
若者・女性活躍につきましては、若者や女性の感性や発想力をまちづくりに生かしていくため、小田原をフィールドとして若者や女性が活動する機会や、SDGsの取組を通じて次世代が活躍する機会を創出していくとともに、市独自に創設した女性活躍推進優良企業認定制度(小田原Lエール)や相談体制の充実などにより、女性活躍の推進に取り組んでまいります。

【デジタルまちづくり】
デジタル化の取組につきましては、市のデジタル化推進本部や公民連携によるデジタルイノベーション協議会において、教育、医療、防災など、様々な領域におけるデジタル技術の活用を検討するとともに、これらの取組を加速するための手段の一つとして、国のスーパーシティ構想の区域指定にエントリーいたします。
デジタル技術の活用は、持続可能で活力あるまちづくりを進める上で欠かせない手段であり、ICTやビッグデータなどの活用により、サービスを効率化することや地域における課題解決能力を高めることで、市民生活の質の向上を図ってまいります。加えて、行政手続のオンライン化やワンストップ化など、業務プロセスのあり方を改革するデジタル・ガバメントを推進するとともに、市内外の民間企業、大学等の研究機関や金融機関などの多様な主体との協働や、国及び県との緊密な連携によりデジタル化を推進することで、地域の魅力と活力を向上させてまいります。
デジタル技術は近年急速に進展していることから、時流をしっかりと捉えるために、専門的な知識を有するデジタル・エグゼクティブ・アドバイザーや民間企業から幅広く助言を受けながら、デジタル化の進め方を取りまとめるなどして、市民が実感できる便利で快適な市民生活の実現と都市としての競争力を高めてまいります。

4 分野別の取組
これまで述べてきた先導的な取組のほか、令和3年度に取り組む分野別の主な取組について、3つの柱に沿ってご説明いたします。

(1)生活の質が向上するまち
地域福祉の取組につきましては、長引くコロナ禍の影響を強く受ける生活困窮者の自立支援を促進するほか、高齢者や障がい者の権利擁護のため、成年後見制度の利用支援を推進してまいります。
高齢者福祉の取組につきましては、高齢者の自立支援に軸足を置き、社会参加や介護予防等の施策を総合的に推進するとともに、高齢者の健康課題に対応するため、重症化リスクが高い方に対する保健指導等を実施してまいります。また、働く意欲のある高齢者の能力や経験が生かせるよう、地域における就労促進などの取組を推進してまいります。
障がい者福祉の取組につきましては、本市の障がい者施策の基本となるおだわら障がい者基本計画の策定に着手するほか、障害福祉サービス事業所における行動障がいを伴う障がい者の受入れを促進するための制度創設や災害時の障がい者の避難確保、就労支援としての農福連携の取組などを進めてまいります。
新たな人権課題への対応につきましては、人権施策推進指針等の改定作業を行い、すべての市民がお互いの人権を尊重し、共に生きていく地域社会を構築してまいります。
防災の取組につきましては、全国各地で起きた激甚災害を教訓に、国土強靭化地域計画や津波防災地域づくり推進計画の策定による事前防災・減災事業の強化に取り組んでまいります。また、防災行政無線の更新にあわせて、情報伝達手段の全体的な見直しを行い、市民に漏らさず情報提供するための体制構築に向けた計画策定を行うとともに、災害時に要配慮者が円滑に避難できる体制や安心して過ごすことができる避難所を整備するなど、市民の命を守るための安全・安心なまちづくりを進めてまいります。いっせい総合防災訓練においては、地震をテーマに、コロナ禍を意識した公民一体の災害時体制の確認やボランティア支援といった実践的な訓練を実施いたします。また、地震対策として、住宅の耐震化を促進するほか、耐震改修促進計画の改定準備を進めてまいります。さらに、近年の大型化する台風や局地的豪雨による浸水被害の軽減に向け、河川の改修や適切な維持管理を進めてまいります。
消防・救急体制の充実に向けましては、山北出張所の再整備に向けた設計業務や、荻窪出張所の機能改善、次期署所再整備に取り組むほか、感染症対策資機材を充実させるとともに、救急隊員の質の向上などに努め、救命率の向上を図ってまいります。さらに、消防団第1分団待機宿舎の建替えを進めてまいります。
安全・安心の地域づくりの取組につきましては、空家等対策の継続のほか、防犯活動や交通安全活動を支援してまいります。また、地域や関係者と協力して消費者被害を未然に防ぐ活動を強化してまいります。
子育て環境の充実に向けましては、おだぴよ子育て支援センターのミナカ小田原への移転を契機に、地域における子育て支援サービスのさらなる充実を目指し、子どもたちが健やかに成長できる環境づくりを進めてまいります。また、おだわら子ども若者教育支援センターでは、妊娠期から青壮年期までの切れ目のない支援の確立に向け、新たに子育て世代包括支援センター分室を設置し、さらなる機能の拡大に努めてまいります。
青少年の育成につきましては、子どもの居場所づくりなどへの支援のほか、青少年の意思決定力や社会参画への意識を向上させ、次世代のまちづくりの担い手育成につなげる事業を実施してまいります。また、放課後児童クラブの利用児童数の増加などに対応するため、三の丸小学校ほか4校で改修工事を行います。
教育環境の整備につきましては、子どもたちの安全で安心な生活環境を整えるため、校舎や屋内運動場の屋根改修等の工事のほか、外壁劣化に対する打診調査と部分改修を実施してまいります。
学校給食センターの建替えにつきましては、設計・施工一括発注方式、いわゆるデザインビルド方式での事業者選定に向けて、プロポーザル等を実施してまいります。また、学校給食費については、教職員の業務負担軽減や保護者の利便性向上などを図るために、令和3年度から市の会計に組み入れる公会計方式で実施してまいります。
協働による地域経営の取組につきましては、市民力、地域力を生かした課題解決の取組を継続し、民間企業との連携も推進してまいります。また、自治会加入や担い手育成の支援等を推進するほか、地域事務局の自立に向け、支援を継続してまいります。さらに、おだわら市民交流センターUMECOを拠点として、地域課題の解決に向けた、市民活動のさらなる活性化を図ってまいります。
広報・広聴の取組につきましては、広報紙、ホームページ、テレビ、ラジオ、SNSなどの媒体を活用し、市の施策や事業に関する情報をタイムリーに発信するほか、広く市民の声を行政に反映させるため、市長への手紙や市民と市長との懇談会などにより、市民ニーズを的確に捉えてまいります。
市税及び国民健康保険料等の納付につきましては、市税等納付促進センターによる早期の納付勧奨、滞納処分の厳正な執行などを進めるとともに、市民の利便性向上のため、スマートフォンアプリを使用した収納方法を導入します。また、戸籍住民窓口においては、これまで要望が寄せられていた死亡に伴う諸手続に関する不安解消と負担軽減を図るため「ご遺族手続きサポートコーナー」を開設し、よりご遺族に寄り添った対応をしてまいります。

(2)地域経済が好循環するまち
観光の取組につきましては、密を回避して移動する手段としてニーズが高まっているレンタサイクル事業の強化や、令和3年6月にオープンする小田原市観光交流センターを拠点としたまち歩き観光を促進するなど、回遊性の向上に取り組んでまいります。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を一つの契機として、コロナ禍により減少した観光客数の回復に取り組んでまいります。
歴史資産の保存と活用につきましては、歴史的価値の高い小田原城跡(あと)や石垣山等の史跡を保存し、活用を図るため、来訪者の安全性や快適性を確保しながら、御用米曲輪などの史跡整備を行うとともに、史跡の公有地化等を実施してまいります。加えて、かまぼこ通り周辺や板橋地区などにおける歴史的・文化的資源等の魅力を最大限に生かした街なみ形成に向け、必要な支援や制度を検討してまいります。
商業の取組につきましては、身近なところで住民の生活を支えている商店街の魅力や、買い物客の利便性向上につながる商店街の取組を支援してまいります。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、地域経済の回復に向けた必要な対策を経済団体とも連携しながら実施してまいります。
農業の取組につきましては、本市農業の将来像を示す新たな農業振興計画を策定し、担い手の確保や農地の保全などを推進することで地域農業の振興を図るとともに、農業生産のみならず、日常生活にも悪影響を及ぼしている野猿をはじめとした鳥獣被害の対策を、県等と連携して進めてまいります。
水産業の取組につきましては、市営漁港の機能強化基本計画の策定や水産市場施設の再整備について検討していくほか、漁港の駅TOTOCO小田原を情報発信の拠点とした水産物の消費拡大と認知度向上の取組を推進してまいります。
文化・芸術の取組につきましては、文化によるまちづくり条例に基づいた基本計画を策定するとともに、令和3年9月にオープンする小田原三の丸ホールを中心に、産業や観光等との連携を図りながら多彩な事業を実施して、文化振興のみならず魅力あるまちづくりに取り組んでまいります。また、中央図書館におきましては、地域資料コーナーの開設や予約棚システムの導入など、利用者サービスの向上に努めるほか、熱源設備等の改修により、良好な環境を提供してまいります。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組につきましては、協定締結国の事前キャンプの受入れのほか、聖火リレーやパラリンピックのライブサイトなどにより、機運の醸成を図るとともに、地域の活性化につなげてまいります。
SDGsの取組につきましては、民主体のSDGs実行委員会や140を超えるSDGsパートナーと連携して、経済・社会・環境の循環につなげていくほか、スマートフォン等で利用できるポイントアプリ「おだちん」を通じて、SDGs活動の実践を後押ししてまいります。
都市セールスにつきましては、プロモーションサイトや公式インスタグラムなどの各種媒体を通じて、本市の多様で豊富な地域資源や小田原暮らしの魅力を情報発信してまいります。

(3)豊かな環境を継承するまち
持続可能な資源循環型の社会構築につきましては、紙の分別徹底を進めるほか、段ボールコンポストの普及に努め、燃せるごみの削減を推進するとともに、食品ロスやプラスチックごみ削減に向けて市民意識の向上を図り、廃棄物の減量化・資源化に努めてまいります。
公共施設再編と老朽化施設の長寿命化の取組につきましては、公共施設再編基本計画に基づき、災害対応も念頭に置いた施設の機能・配置の適正化を進めるほか、施設の管理水準を総体的に向上させるためのマネジメント体制の実現、民間提案制度を活用した施設の効率的な利活用などを推進してまいります。
快適で魅力ある生活空間づくりにつきましては、国府津駅自転車駐車場の整備に取り組んでまいります。また、市街地環境の整備・改善を図り、街なかへの定住を促進するため、優良建築物等整備事業の活用を図りながら、ゆとりある住宅の供給や都市防災の強化に寄与すると認められる民間再開発事業への支援を行ってまいります。
緑化の取組につきましては、地域の緑化団体への支援や小田原駅周辺ほか市内各所の緑化を推進してまいります。公園の整備管理につきましては、公園施設を計画的に改修するとともに、身近な公園プロデュース事業などに取り組んでまいります。
安全で円滑な地域交通の充実に向けた取組につきましては、幹線市道等の整備のほか、歩道のある市道交差点の安全対策などを進めてまいります。また、都市計画道路穴部国府津線、城山多古線、小田原山北線、小田原中井線の4路線の整備について、各方面に要望活動を展開するとともに、伊豆湘南道路につきましては、神奈川県西部と静岡県東部を結ぶ新たな東西軸となる構想路線であることから、伊豆湘南道路建設促進期成同盟会を通じ、その実現を国等へ働きかけてまいります。
上下水道事業の取組につきましては、令和3年4月に水道局と下水道部を統合し、事務事業の効率化や災害対応の強化、市民サービスの一層の向上を図ります。上水道では、早期の耐震化と将来的な維持管理費の削減を図るため、高田浄水場再整備事業を推進するとともに、老朽化した施設や管路の更新、重要管路の耐震化等を進めてまいります。下水道では、未普及区域の整備や老朽管きょの更新、緊急輸送路下等の重要な管きょの耐震化、不明水の削減に向けた取組などを行ってまいります。

5 むすび
以上が令和3年度における市政運営の方針並びに取り組む施策であります。
私は、市民の皆様に小田原の将来に安心と希望を持っていただけるよう、中・長期的な視点に立った未来志向のまちづくりを進めていく考えであり、そのための工程表となる「2030ロードマップ」でお示しする未来の小田原の姿を実現したいと考えております。
その上で、あらゆる分野の政策に総合的に取り組んでいくため、新たな総合計画の策定を1年前倒しし、令和4年度からスタートさせるべく、その準備に取りかかってまいります。
とりわけ注力をしていく先導領域の分野には、専門人材等の外部の知見や民間の資源を積極的に取り込むとともに、行政内部に新たな組織を立ち上げて、事業の実効性と機能性の高い体制を整えるなど、市民の皆様の目に見える形で市政運営を進めてまいります。また、10年後、20年後の未来の小田原を牽引していく若者や女性が活躍しやすい環境を創り、その視点を市政に反映できるように努めてまいります。
令和2年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、大きな変化を余儀なくされた1年となりました。働き方やライフスタイルなど、これまで当たり前だと思われてきた常識が一変した一方、従来にはなかったビジネスや、これまで気が付かなかった新たな価値観などが生まれてきております。
このパラダイム・チェンジともいえるポストコロナの時代にあって、私は市長として自ら先頭に立ってリーダーシップを発揮し、あらゆる世代が安心して暮らすことのできる希望あふれる「世界が憧れるまち“小田原”」の実現を目指して市政を推進してまいります。
議員各位をはじめ、市民の皆様方のご理解とご協力を賜り、共に新時代へ前進するという、私の決意を述べまして令和3年度の施政方針とさせていただきます。

令和3年2月17日

                                       小田原市長 守 屋 輝 彦

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