所信表明・施政方針

令和6年度施政方針(令和6年2月14日)

1 はじめに、2 市政運営の基本方針

3 重点施策の取組【教育・子育て】

3 重点施策の取組【環境・エネルギー】

5 むすび

3 重点施策の取組【医療・福祉】

3 重点施策の取組【地域経済】

3 重点施策の取組【まちづくり】

3 重点施策の取組【防災・減災】

3 重点施策の取組【歴史・文化】

4 まちづくりの推進エンジン

 

1 はじめに
 私は、令和2年5月に第23代小田原市長に就任いたしました。当時は一度目の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の発令中であり、世間は不安に包まれておりましたので、市民の命と暮らしを守るため「生活を守る、事業者を守る、教育を守る、地域医療を守る」の4本の柱を掲げ、感染症対策を最優先に取り組んでまいりました。並行して、2030年に「世界が憧れるまち“小田原”」を作るための準備も行い、令和4年に第6次小田原市総合計画「2030ロードマップ1.0」を策定いたしました。総合計画では「豊かな環境の継承」を土台とし、「生活の質の向上」と「地域経済の好循環」の具現化をまちづくりの目標に掲げるとともに、推進エンジンとして「行政経営」、「公民連携・若者女性活躍」、「デジタルまちづくり」を掲げ、様々な取組を推進してまいりました。
 2030年に「世界が憧れるまち“小田原”」を実現するという目標に向けた政策の進捗に、今、まさに手ごたえを感じているところです。この流れを止めることなく、小田原の更なる成長を促進してまいります。
 元日に発生しました令和6年能登半島地震において、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された全ての方々にお見舞い申し上げます。本市では、ニーズに応じた被災地支援として、公共施設での義援金の受付や支援物資の搬送、被災地への職員の派遣等を実施しております。災害は、いつどこで発生するのか誰も知ることはできません。今回の災害で改めて有事の際にも市民の皆様をしっかりと守ることができる体制等について平時から備えることの重要性を痛感いたしました。
 令和5年度を振り返りますと、5月8日に感染症法における新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類感染症に変更されました。北條五代祭りや酒匂川花火大会が4年ぶりに従来の規模で実施され、いずれも過去最多の来場者数を記録したほか、人口動態につきましても社会増が継続しているなど、これまで様々な方法により発信してきた小田原の魅力を多くの方々に感じていただけていることを実感しています。地域での各種活動もコロナ禍以前の規模で再開されており、私自身これまで以上に多くの方々と対話する機会に恵まれました。資源ごみ回収拠点の設置や高齢者等を対象とした家庭ごみ戸別収集の実証事業、移動支援の実証事業である「おだタク・おだチケ事業」等については、いずれもいただいたご意見から見えてきた地域課題を解決していくために実施したものです。また、生活の基盤である安心でおいしい水道水をこれからもお届けするため、本市水道事業の基幹施設である高田浄水場の再整備に向けた工事を本格的に進めてまいります。
 総合計画の推進エンジンに位置付けた公民連携やデジタルまちづくりについても多くの取組を実施してまいりました。公民連携については、様々な事業者と災害協定や包括連携協定を締結するとともに、民間提案制度によって豊島邸や旧曽我支所の利活用が開始しました。デジタルまちづくりについては、行政文書管理の電子化といった行政DXを進めるとともに、「書かない窓口」の実現や、防災アプリ「おだわら防災ナビ」の運用開始、おだわらデジタルミュージアムのオープン等、市民の利便性が向上するデジタル化を進めてまいりました。
 「世界が憧れるまち“小田原”」の実現に向け、芽が出始めた多くの取組をこれからも丁寧に育ててまいります。

2 市政運営の基本方針
 令和6年度は、第6次小田原市総合計画「2030ロードマップ1.0」第1期実行計画の仕上げの年となります。第1期実行計画における各種事業の進捗状況を踏まえつつ、第2期実行計画の策定作業を進めてまいります。
 全ての市民が住み続けたいと感じ、国内外の人たちが行ってみたい、住んでみたいと憧れるまちになるため、引き続き小田原の魅力を最大限に磨き上げ、その魅力を発信するとともに、子育て分野等まちを持続可能とする取組に注力してまいります。
 昨年、小学6年生から「2030年の小田原の未来を考えよう」をテーマとした提案を受けるとともに、中学校において小田原版STEAM教育をモデル校で開始するなど、子どもたちが自分たちの住むまちについて考える機会が増えています。こうした機会も捉えながら、第3期子ども・子育て支援事業計画の策定に着手するほか、地域の学びの拠点としての新しい学校づくりを更に加速させるなど、未来を担う子どもたちが夢や希望を持てるまちに向け取り組んでまいります。加えて、小児医療費助成の対象年齢の拡大や帯状疱疹ワクチン接種費用の一部助成の開始、地域での日常の移動支援に関する取組を継続するなど、生涯にわたって幸せと安心感を得られるまちに向けた施策を推進してまいります。
 今取り上げた施策以外にも、様々な施策を総動員していくためには、多様な主体との連携が重要であることから、これまで以上に多くの方々との対話の場を設け、市民ニーズを捉えつつ、現在のまちの姿やこれから目指すまちの姿、2030年までの道のりを皆様と共有し、成長する小田原を共に創造してまいります。

3 重点施策の取組
 令和6年度の市政運営に当たり、第6次小田原市総合計画「2030ロードマップ1.0」の実行計画に位置付けた重点施策に沿ってご説明申し上げます。

【医療・福祉】
 安心の地域医療体制につきましては、コロナ禍で築いた関係性を生かしながら、地域の医療機関等との連携を更に推進していくため、地域課題の共有や課題解決に向けた協議等に主体的に取り組んでまいります。市立病院では、安定的に良質な医療を提供するため、令和5年度中に策定する経営強化プランに基づいて引き続き健全経営及び持続可能な地域医療提供体制の確保に努めてまいります。また、令和8年春の開院を目指して1月9日に本体工事に着手した新病院建設については、地域医療介護総合確保基金等の様々な資金も活用し、安全かつ着実に進めるとともに、医療DXを推進し、遠隔ICUの導入やダビンチ手術による医療の質の向上や効率化、患者待ち時間の短縮等に取り組んでまいります。
 地域共生社会の実現につきましては、アウトリーチ等を通じた伴走型支援を充実させるなど、支援関係機関の連携・協働による包括的な支援体制づくりを進めてまいります。また、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、生きがいづくりの促進や高齢者支援体制の充実、介護サービスの提供等に取り組むとともに、障がい者が生きがいを持って地域とつながり自立する力を育むことができるよう、障がい者支援・相談体制や障がい者サービスの充実、障がい者権利擁護等の取組を進めてまいります。
 健康寿命の延伸につきましては、高血圧対策を着実に推進させるために特定健康診査受診率向上や生活習慣病重症化予防の保健事業に取り組むとともに、地域の通いの場や各地区のまちなか健康相談での保健指導の実施に加え、様々な機会を捉え、健康に関する普及啓発を実施するなど保健活動の充実を図ってまいります。また、誰もが取り組める新たな健康づくりの場としてあり方を検討している健康増進拠点について、基本構想に基づき、事業手法を検討するなど基本計画策定に向けた準備を進めてまいります。

【防災・減災】
 地域における国土強靭化の推進につきましては、地域防災計画を改正することにより、事前防災・減災と発災時の対応能力を強化いたします。具体的な取組としては、避難所等にマンホールトイレを整備するなど避難者の生活環境の確保に向けた防災拠点の整備や新たに策定した災害時備蓄計画に基づいた備蓄体制の整備、発災時の効率的な情報共有・発信のための情報伝達手段の全体的な見直し等を実施してまいります。また、防災アプリ「おだわら防災ナビ」や河川氾濫予測災害感知システム等のデジタル技術を活用し、市民に漏らさず情報提供ができる体制を構築してまいります。さらに、令和6年能登半島地震の震後対策の困難な状況を踏まえ、本市でも、激甚化・頻発化する自然災害等に対応するため、令和5年3月に改定した都市計画マスタープランの都市防災の方針に基づき、平時から災害が発生した際のことを想定し、被災後に迅速な復旧・復興を図る事前準備として、可及的速やかに事前復興まちづくり計画の策定に向けた取組を進めてまいります。
 地域防災力の強化につきましては、災害協定の締結をはじめとした地域、事業者、行政の連携を更に強化するほか、いっせい総合防災訓練や5月に予定している県市合同水防演習の実施により、災害時のリスクや対応を市民と共有することで、市全体の災害対応力を向上させてまいります。あわせて、平時における防災知識の普及啓発や、モデル地区で作成している地区防災計画が、他の地区でも作成されるよう支援することで、発災時のリスクや対応を正しく理解できる環境を整え、自助・共助の精神を持つ防災意識の更なる意識向上を図ってまいります。

【教育・子育て】
 質の高い学校教育につきましては、教職員の負担軽減も配慮しながらステップアップ調査の対象校を全小中学校へ拡大するとともに、小田原版STEAM教育の令和8年度の全中学校での完全実施に向けて導入支援対象校を拡大してまいります。また、引き続きICT支援員の派遣や各種研修を実施するなど、教員のスキルアップを支援しICT活用教育を推進してまいります。あわせて、令和5年12月に策定した新しい学校づくり推進基本方針をもとに、新しい学校づくり推進基本計画及び新しい学校づくり施設整備指針の検討を進めるほか、今後の水泳授業及び学校プールのあり方検討の一環として、民間スイミングスクールを活用した水泳授業とともに、三の丸小学校を拠点とした水泳授業を試行的に導入いたします。さらに、給食調理員の労働環境の改善の観点から、国府津学校給食共同調理場と富士見小学校の2施設の給食調理場に空調設備を整備してまいります。
 子ども・子育て支援につきましては、子ども・子育て会議を開催し、こども基本法で定める市町村こども計画に位置付けることも視野に、第3期子ども・子育て支援事業計画を策定するほか、おだわら子ども若者教育支援センターにおいて、妊娠・出産期から青壮年期まで、切れ目のない総合的な相談支援を行ってまいります。また、子育て世帯の経済的負担を軽減するため、小児医療費助成の対象年齢を、令和6年10月診療分から満18歳の年度末まで拡大するほか、物価高騰に伴う保育所等の副食費値上げ分の軽減を継続するとともに、低所得の妊婦に対する初回産科受診料の助成を開始いたします。そして、産後ケアについて、利用者負担を軽減しつつ、利用回数の上限を拡充するとともに、宿泊型及び訪問型のサービスを開始いたします。さらに、保護者の疾病等により一時的に養育が困難になった児童を施設で預かるサービスを新たに実施するほか、障がい児等に対し、早期から相談支援を行うための体制を強化し、誰もが安心して子育てができる環境を整えてまいります。また、子どもの安全対策として、現在小学校8校で導入している「おだわらっ子見守りサービス」を、順次、全小学校に導入してまいります。家庭教育支援につきましては、地域や行政、学校、事業者等、社会全体で家庭を支える必要があることから、国や県の動向を踏まえ、こどもまんなか社会の実現に向けて、子育て支援とともにより実効性のある支援のあり方について引き続き検討してまいります。
 幼児教育・保育の質の向上につきましては、令和5年度に公立保育園で開始した紙おむつの回収を民間保育所等へ拡大するほか、保育士宿舎借上支援事業について、保育所当たりの対象人数の上限を撤廃するとともに、養成施設との情報共有を行いながら、保育士の確保に向けた保育所運営の課題解決に努めます。また、幼保の一元化について庁内検討を進めつつ、公私幼保の職員を対象とした実践事例の紹介や意見交換、有識者による講演等の研修会を実施するなど、職員のスキルや意識向上への動機付けを行うとともに、公私の幼稚園・保育所に導入した園務システムを活用し、保護者連絡の迅速化や保育記録の充実化等、教育・保育の質の向上に努め、職員の働き方改革に取り組んでまいります。橘地域の認定こども園に関しましては、既存施設である下中幼稚園を下中小学校に移転し、運営を継続しながら、令和8年4月開園に向けて、新たな園舎の設計、既存施設の解体等に取り組んでまいります。あわせて、保護者のニーズや私立幼稚園の意向等を踏まえながら公立幼稚園のあり方を検討してまいります。

【地域経済】
 企業誘致の推進につきましては、引き続き企業誘致推進条例に基づいて、新たに本市へ立地する市外企業や拡大再投資を行う市内企業を支援してまいります。また、市外事業者に小田原のビジネス環境をPRすることで、地域を活性化するための投資を呼び込んでまいります。鬼柳・桑原地区工業団地に関しましては、第8回線引き見直しにおいて引き続き工業系保留区域に位置付けられることを前提とした上で、整備に向けて関係者と協議を行ってまいります。 多様な働き方環境の整備につきましては、Work Place Market ARUYO ODAWARAを中心に、ビジネスやオープンイノベーションの創出に取り組んでおり、企業からのオフサイトミーティングの相談等、働くことに関する幅広い相談に応じる中で新しい働き方の機運を高めてまいります。また、市内における様々なテレワークやワーケーション環境を提供することは、市民を含め都市部からの誘客に寄与していることから、今後も豊かな自然環境や各種施設を最大限に活用しながら、更なる魅力創出や活性化を図ってまいります。
 地域資源を生かしたビジネス展開につきましては、地域経済振興戦略ビジョンと、地域経済好循環推進条例を両輪として地域経済の循環を促進し、地域経済活性化を図ってまいります。また、美食のまちの推進につきましては、令和5年7月に設置した美食のまち小田原推進協議会において協議を行いながら事業を展開し、小田原の食文化を磨き上げ、観光客の誘客等に努めてまいります。さらに、地域ブランド確立のため、湘南ゴールドや梅、いちご、タマネギ等の農産物や高鮮度な地魚等の水産物の魅力と認知度が向上する取組を実施するとともに、漁港の駅TOTOCO小田原を拠点とした情報発信に引き続き努めながら、小田原漁港内における水産市場施設再整備の検討を市場関係者等と一体となって進めてまいります。あわせて、令和5年度に引き続き、アメリカ・シリコンバレーにおいて、本市が誇る、ものづくりや観光情報を発信する期間限定の企画展や、現地事業者との商談期間を設定し、市内事業者と現地事業者をつなげる取組を進めてまいります。

【歴史・文化】
 歴史・文化資源の魅力向上による交流促進につきましては、歴史的価値の高い小田原城跡(あと)等の史跡の保存・活用を図るため、御用米曲輪の整備のあり方について調査を行い、有識者による議論と研究を深めてまいります。小田原城につきましては、魅力向上と積極的なPRにより、誘客に努めるとともに、小田原城址公園における電線地中化事業を継続するなどの環境整備に努め、来訪者の安全性や快適性の確保に努めます。公民連携による歴史的建造物の利活用につきましては、清閑亭や豊島邸において、民間事業者のノウハウを生かしながら更なる魅力の向上と回遊性の促進を目指します。また、旧松本剛吉別邸及び皆春荘の庭園整備工事を行い、利用者の安全性や邸園の魅力向上に努めてまいります。
 文化・スポーツを通じた地域活性化につきましては、おだわらカルチャーアワードを引き続き実施し、文化によるまちづくりを推進してまいります。小田原三の丸ホールにつきましては、令和7年度中に指定管理者制度に移行するための準備を進めてまいります。スポーツ環境の整備につきましては、引き続き既存スポーツ施設や新たなスポーツ施設のあり方について検討し、スポーツ施設整備基本計画を策定いたします。
 世界とつながる機会の創出につきましては、多文化共生の地域社会の実現等を目的に開催されてきた「外国人による日本語弁論大会」を神奈川県内で初開催いたします。外国人から広く意見や考えを聴き、他の国や地域の文化に触れることで、自国や小田原を見つめ直す機会を市民等に提供し、多文化共生に対する意識向上と国際交流の活性化を目指してまいります。また、行政サービスの多言語化に努めるとともに、国や県、民間団体との連携による地域日本語教育を促進するほか、公立幼稚園、小中学校への外国語指導助手(ALT)の派遣や小中学校での海外の学校等とのオンライン交流を実施し、言語や文化への体験的な理解の深化を促進してまいります。

【環境・エネルギー】
 再生可能エネルギーの導入促進につきましては、2030年のカーボンハーフ、2050年のカーボンニュートラル、いわゆる脱炭素社会の実現に向け、気候変動対策推進計画に基づき、市民や事業者の再生可能エネルギー設備の導入を支援するとともに、引き続きゼロカーボン・環境共生推進本部において、公共施設への再エネ・省エネ設備の導入をはじめとした庁内一丸となった取組を推進してまいります。また、脱炭素先行地域に選定された提案事業の実現に向け、国の交付金を活用し、地域エネルギーマネジメントの仕組みを構築するとともに、本市独自の補助制度や積極的な公民連携による取組を引き続き進めてまいります。ゼロカーボン・デジタルタウンの創造につきましては、地球規模の課題となっている地球温暖化に対して、本市からその取組を加速させるため「究極のゼロカーボン」と「社会変化に適応した豊かな暮らし」の両立を「最先端のデジタル技術」で支え、社会課題の解決を図りながら幸せを実感できる暮らしを体現する新しいモデルタウンを創ってまいります。事業化に向けては、財務省と市により基本構想に基づいた開発条件を設定した上で、国が二段階一般競争入札を実施することで、市が直接用地を取得することなく開発を誘導し、用地取得から開発までを全て民間資金により実現することを目指してまいります。
 地域循環共生圏の構築につきましては、自然環境と市民が共生できるまちを目指し、環境保全活動に係るプラットフォーム機能を担う、おだわら環境志民ネットワーク等と連携し、身近な環境課題への対応や、森里川海がひとつらなりとなった豊かな自然環境の恵みからもたらされる地域資源の魅力向上に取り組んでまいります。
 森づくりにつきましては、豊かな森林を次世代へ継承していくため、「伐(き)って、使って、植える」という森林資源の循環を構築するとともに、関係者と連携して小田原産木材の継続的な活用を図り、木のまちおだわらの実現に向け、市民や児童等に対する森林・林業の普及啓発を実施してまいります。また、これまでの事業で養成してきた「森のせんせい」を市内小学校での森林環境学習に派遣するなどして、市民参加による森づくりを推進してまいります。

【まちづくり】
 小田原駅・小田原城周辺のまちづくりにつきましては、市街地環境の改善や都市防災の強化、街なかへの居住促進のため、関係権利者で組織されたまちづくり協議会が市街地再開発の検討を進めている東通り・大乗寺周辺地区において、市街地再開発事業にあわせた都市計画道路の整備に向け、引き続き合意形成に努めてまいります。西口地区においては、令和5年度に策定する基本構想に基づき、安全で快適な都市空間を創造するため、広場機能の拡充と隣接する市街地再開発との一体的な整備に向け、国の補助金を確保した上で、広場の利用実態調査等を実施し、必要な機能等について検討を進めてまいります。また、公・民・学が連携した組織であるアーバンデザインセンター小田原(UDCOD(ユーディーシーオーディー))につきましては、引き続き地域からのまちづくり相談への対応や都市空間デザインの視点からの調査・研究に取り組んでまいります。さらに、三の丸地区の整備構想の具現化に向けては、市民会館跡地等活用計画との整合を図りながら、小田原城天守閣の眺望を確保した広場を整備するため、令和5年度に開催した市民や事業者とのワークショップ等での意見を反映しながら策定する基本構想を踏まえ、引き続き整備に係る基本計画を策定するとともに、概略設計を行ってまいります。
 地域特性を生かしたまちづくりにつきましては、かまぼこ通り周辺地区、銀座・竹の花周辺地区及び国府津地区において、地域資産を活用したまちづくり活動を引き続き支援するとともに、他地域への展開も視野に取組を進めてまいります。景観計画重点区域に位置付けたかまぼこ通り周辺地区につきましては、外観修景の支援等により良好な景観への誘導を図ってまいります。海を生かしたまちづくりにつきましては、漁業と多様化する海洋性レクリエーションが共存できる海の利活用に向け、関係者同士の意見調整を行うとともに、江之浦漁港機能強化基本計画に基づき、臨港道路の拡幅に向け、基本設計業務に着手いたします。また、公民連携により地域特性と海を生かしたまちづくりを一体的に展開していくため、令和5年度から取り組んでいる早川周辺エリアに続いて、令和6年度は御幸の浜周辺を対象としたエリアブランディング構想事業に着手いたします。地域の移動手段の維持・確保につきましては、令和5年11月から実証的に開始した「おだタク・おだチケ事業」を拡充させながら引き続き実施するとともに、路線バスの空白時間帯が生じている地域や、高齢者を中心に駅・バス停から離れた地域での移動の課題に対応するため、令和6年3月に策定する地域公共交通計画に基づいた新たな移動支援策に計画的かつ重点的に取り組んでまいります。その際、神奈川県が県西地域で検討を進める自動運転車両の実証実験に係る路線調査等とも連携し、新たな技術の活用を目指してまいります。また、神奈川県が整備を進めている都市計画道路穴部国府津線、城山多古線、小田原山北線、小田原中井線の4路線は、まちづくりの骨格となる重要な道路であることから、あらゆる機会を捉えて、関係各方面に対し要望活動を展開いたします。伊豆湘南道路につきましては、神奈川県西部と静岡県東部を結ぶ第3の東名とも言える重要な社会インフラとなることから、伊豆湘南道路建設促進期成同盟会の関係市町と緊密に連携を図りながら積極的な要望活動を展開し、実現に向け国等へ働きかけてまいります。また、道路等の維持管理において、限られた職員数で業務を効率的に進めるために、公民連携による包括的民間委託の導入可能性調査を実施いたします。住宅ストック活用の促進につきましては、令和5年3月に改定した空家等対策計画に新たに位置付けたワンストップ窓口や不動産無料診断等の実施により、空家等の市場流通が促され、一定の効果が現れ始めています。更に空家等対策を強化するため、空家等対策の推進に関する特別措置法の改正に対応し、総合的に推進してまいります。街区公園の再整備につきましては、地域と意見交換をしながら策定した再整備計画に基づき、早川地区の山根公園を再整備いたします。

4 まちづくりの推進エンジン
 市民との情報共有につきましては、広報紙、ホームページ、SNSをはじめ、様々なメディアを活用し、市の情報を積極的かつ複層的に発信するとともに、広く市民の声を市政に反映させるため、市民通報アプリ「おだわら忍報」を活用するほか、市長への提案や市民と市長の懇談会等により、市民ニーズを的確に捉えてまいります。
 効率的な行財政運営につきましては、第3次行政改革実行計画を着実に推進することで、将来を見据えた行財政運営に取り組むほか、第6次小田原市総合計画「2030ロードマップ1.0」第2期実行計画の策定作業に取り組んでまいります。
 人材の確保・育成・活用につきましては、本市の求める職員像にふさわしい人材の確保に向け、引き続き様々な機会や情報ツール等を活用するとともに、研修による個人の能力開発や意識改革を進めます。また、「ハラスメントを起こさない・許さない」職場に向け、ハラスメント撲滅プロジェクトチームのもと、職員への意識啓発の更なる充実や、有識者の参画のもと公平で迅速なハラスメントの対応ができる体制を整備するなどの取組を推進することにより、職員がハラスメントのない環境で生き生きと働くことができるよう、全力を挙げて取組を推進してまいります。
 公民連携につきましては、おだわらイノベーションラボを拠点とし、民間提案制度の実施や包括連携協定の締結等により、公民双方の資源を活用しながら取組を行ってまいります。また、それぞれの地域における主体的かつ持続可能な地域運営を実現するため、地域の皆様からいただいた意見を踏まえ、今の時代に対応した地域運営のあり方を展望するとともに、自治会運営の支援や地域コミュニティ組織の活動を推進することで地域の皆様と課題解決に取り組んでまいります。
 若者・女性活躍の推進につきましては、おだわら若者応援コンペティションやおだわらMIRAIアワードの実施により、引き続き若者の強みや活力が発揮される場を創出していくとともに、女性活躍推進優良企業認定制度「小田原Lエール」を活用したワーク・ライフ・バランスを実現できる職場づくりの促進、様々な立場の女性が交流し、自身のキャリアを考えることができる機会の提供等、職場や地域等のあらゆる場において、誰もが自分らしく働き、暮らすことができる環境の整備に努めてまいります。
 SDGsの推進につきましては、本市の理念に賛同するおだわらSDGsパートナーと共に、SDGsの取組を展開するほか、SDGsに関するイベントの開催等を通じて、次世代に向けた普及啓発を図ってまいります。
 デジタルまちづくりにつきましては、令和5年度に国の交付金を活用して構築した地域ポイント事業等、人と人がつながり、まちのにぎわいを創出する事業を継続して運用してまいります。また、スマホ教室をはじめ、一人ひとりに寄り添ったデジタルデバイド対策により、誰一人取り残さないデジタル化の実現に向け、引き続き取組を進めてまいります。

5 むすび
 以上が令和6年度における市政運営の方針並びに重点的に取り組む施策であります。
 令和6年度は、第6次小田原市総合計画「2030ロードマップ1.0」第1期実行計画の最終年度であり、これまでの成果を更に広げていくために令和7年度から開始する第2期実行計画の策定作業を進めてまいります。
 私が市政運営において何よりも大切にしていることは、「市民の命と暮らしを守ること」であり、この思いは変わることはありません。
 市民の命を守るため、発災時の対応能力や地域防災力の強化等により、市全体の災害対応力を向上させるとともに、生活の基盤となる、高田浄水場の再整備と新病院建設を着実に進めてまいります。また、子どもたち、子育て世帯の多様なニーズに応えながら取り組んできた教育・子育て施策を、引き続き推進することで子どもが夢や希望を持って成長できる環境を整えてまいります。さらに、入込観光客数や観光消費総額は令和4年に過去最高を記録し、令和5年もそれを上回ることが見込まれ、小田原のまちににぎわいが戻ってきています。更なるにぎわいをまちに呼び込み、地域経済を循環させてまいります。
 小田原の多様な地域資源を未来に継承していくためには、市民力や地域力といった人の力が必要不可欠です。地域や団体の皆様との意見交換では、コロナ禍における事業中止等を経て、人と人とのつながりが途切れてしまい担い手がいない、従来のやり方がわからないという声を多く耳にしました。担い手が不足していることは、地域活動のみならず第1次産業等の経済活動においても同様です。従来の方法を踏襲するだけではなく、今後も継続していける最適な手法を模索し、導入するといった柔軟でチャレンジングな考え方が重要です。コロナ禍を経験した今だからこそ見えてきたこうした課題に対して、真摯に向き合いながら、地域の多様な主体と共に、私も一緒になって汗をかき、知恵を出し合いながら解決に取り組んでまいります。また、価値観が多様化している社会情勢であるからこそ、年齢、性別、国籍、障がいの有無などにかかわらず、誰もがその人らしく生き生きと暮らすことができる共生社会の実現に向けた取組も、これまで以上に進めてまいります。そして、それぞれが持つ個性や魅力が十分に発揮され、小田原に住む誰もが幸福を感じることができるといった、市民一人ひとりのウェルビーイングを向上させる視点を持ちながら市政運営に取り組んでまいります。
 そして、健康増進拠点の整備や小田原駅西口地区におけるまちづくり、ゼロカーボン・デジタルタウンの創造、それぞれが目指すまちの姿を明らかにした上で、2030年に向かってまちがにぎわい成長していることが実感できる状況を地域全体で作っていきながら、「世界が憧れるまち“小田原”」の実現に向けた更なる挑戦を続けてまいります。
 以上をもって、令和6年度の施政方針とさせていただきます。議員各位をはじめ、市民の皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。



令和6年2月14日                                                                             
                                                                                                   
                                                                                                      小田原市長 守 屋 輝 彦

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