清閑亭利活用の経緯について
新しい清閑亭の利活用についてご説明します。
国指定史跡小田原城跡清閑亭土塁
特に、南側の竹林付近は、堀、土塁、かきあげが良好な状態で残っており、かつての小田原城の一端をうかがい知ることができるたいへん貴重な場所です。
一方、清閑亭が建っている北側にあたる平坦部は、近代以降の切土・盛土による造成を受けており、遺構は残っていません。盛土については、平成29年の調査時に深さ70㎝までは近代以降のものであることが確認されており、更に深くなる可能性もあります。清閑亭が建っている場所は、戦国時代の痕跡はほとんど残っていませんが、近代小田原に開花した別邸文化を理解するという意味ではたいへん貴重な場所となっています。
国登録有形文化財清閑亭
かつて小田原藩士の屋敷地であった場所を、明治39年に黒田長成侯爵が購入しました。清閑亭の建物の正確な建築年は明らかではありませんが、大正初期の建築物と考えられています。その後、黒田家小田原別邸として使用されましたが、昭和16年に浅野侯爵家へ売却されました。浅野家では、自邸として使用したことから、家財を納める蔵や炊事場を増築しています。この蔵の増築により黒田長成が愛した石庭の趣がなくなってしまいました。
昭和38年、敷地と建物は第一生命保険相互会社に売却されました。現在の通用門やアプローチは、この時に完成したものです。保養施設として活用されたことから、玄関庇や屋根、畳廊下柱、手摺、電気施設や風呂などの改修が順次行われました。
平成17年に、清閑亭は国登録有形文化財に登録され、平成20年に市が第一生命保険相互会社から土地を取得した際に、この建物の寄贈を受けています。
民間提案制度とは
民間提案制度は、事務の効率化や効果的なサービスの提供を主な目的に、民間事業者が持つ技術やノウハウを公共サービスに生かす手法として、多くの地方公共団体が導入しています。本市では、公共施設の利活用に関し、平成30年度に策定した公共施設再編基本計画に基づき準備を始め、令和2年度に初めて導入しました。
プロポーザル方式が事業者を募集する際に、仕様を作り業務内容を提示し、それに基づいて提案をする制度であるのに対し、民間提案制度は、仕様書等により分野や業務内容を特定せずに、民間事業者のアイデアで幅広く提案を募集する制度です。採用された提案は、市と事業者の詳細協議の中で対話により改良されていくことも想定しています。
初年度である令和2年度は、旧大窪支所、旧片浦支所、旧曽我支所と清閑亭の利活用に関する提案を募集しました。
新しい形の文化財の保存・活用手法への挑戦
従来、文化財の管理保全は、臨時職員を雇用しての直営方式や委託、指定管理制度、財団による管理等の手法を用いて行われてきました。
今回の民間提案制度を活用した公民連携による文化財の保全・活用は、公費支出を抑えつつ、文化財の価値や魅力を将来にわたって継承するための新しい手法です。文化財を、人の営みの中で、活用しながら守り、次世代にその魅力を伝えていこうとするもので、全国的にも珍しい先進的な取り組みです。
清閑亭の利活用については、随時、市議会にも報告をしています。
<主な報告事項>
- 令和6年4月16日「清閑亭の利活用の経緯について」
- 令和5年12月4日「清閑亭の利活用の進捗状況について」
- 令和4年4月22日「清閑亭の詳細協議の進捗について」
- 令和3年 9月 8日「清閑亭の民間提案募集の審査結果及び旧内野醤油店の利活用について」
- 清閑亭庭園への門に鍵がかかっていて入れず、声を掛ける方法も分からずに帰ってしまった人もいるとのご指摘については、建物の安全管理上の必要性から門を設置していますが、見学を希望する方に分かりやすいように、案内表示の看板を設置しました。なお、門は以前の一般公開時から設置しております。
- 送迎のための車が方向転換をする際に、近隣の民地を使用しているとのご指摘については、民地との境界の市有地に転回禁止の看板を設置いたしました。
- 清閑亭利用者が道路で喫煙しているとのご指摘については、敷地内喫煙禁止及び路上喫煙をご遠慮いただきたい旨の看板を設置いたしました。
- 厨房から騒音がするとのご指摘については、4つ設置された換気扇のうち、最大のものに消音装置を設置し、環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の規定に基づく騒音に係る環境基準を下回っていることを確認いたしました。
- 敷地内清掃時のブロワーの音が大きいとのご指摘については、ガソリン式のブロワーからバッテリー式のブロワーに変更し、消音に努めました。また、利用時間も最小限としております。
- 近隣住宅へのプライバシー配慮については、表門より主屋へ向かう坂を登りきったところに目線を逸らすために、人止柵や止め石を設置いたしました。
- 小田原別邸料理清閑亭のオープンに合わせて設置した県道沿いの立て看板が死角となり、通行の妨げになって危ないとのご指摘については、地域の方を含む関係者が現地立ち合いを行った上で、移設いたしました。
小田原市職員措置請求書の提出について
令和6年4月30日に市民より「事業者の選定プロセス、文化庁への申請、厨房等の増設に至るまでの経緯、工事の実態など含めた国指定史跡と国登録有形文化財の保全、本件建物等賃貸借契約の内容等の適正について調査を行うとともに、調査結果を前提として、清閑亭の利活用プロジェクトを再検討するとともに、関連する契約の見直しを行う」ことを請求内容とした小田原市職員措置請求書が小田原市監査委員あて提出されました。
小田原市監査委員による監査の結果について
地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査が実施された結果、小田原市は以下の勧告を受けました。
なお、監査結果の詳細につきましては、添付資料をご覧ください。
【勧告の内容】
1.清閑亭の利活用に係る提案募集実施要領の清閑亭特記事項で禁止していた厨房等の増築を認めたことについて、外部の専門家等を交えて詳細を再調査するとともに、 その適否について3か月以内に検証すること。
2.上記 1 による市長の再調査及び検証の結果、長の裁量権の逸脱又は濫用がなかったということであれば、速やかに適法な状態にするための措置を、また、長の裁量権の逸脱又は濫用があった場合は、必要な措置を講じること。
3.送迎用車両を共同管理地に駐停車させていることについて、速やかに契約書等により明文化すること。
4.少なくとも「お披露目会」の日以降2月末日までの貸付料相当分の支払いを求めるための措置を講じること。
小田原市職員措置請求に係る勧告に基づき講じた措置について
小田原市職員措置請求に係る勧告(令和6年6月27日付け監査第98-1号)について、以下の措置を講じました。
なお、講じた措置の詳細については、添付資料をご覧ください。なお、措置の概要は次のとおりです。
【講じた措置の概要】
勧告1について
清閑亭の利活用に係る提案募集実施要領の清閑亭特記事項で禁止していた厨房等の増築を認めたことについて、外部の専門家を交えて、本市企画部コンプライアンス推進課が再調査及び検証を行った結果、「本件契約条件の変更が、公募において明らかにされた契約条件を恣意的に変更し、選定された本件事業者を著しく有利に取り扱い、公募という手続方式を採用した趣旨を没却する結果を招来する違法なものであるとまでは言えないものと言うべきである。」との結論となりました。
なお、再調査及び検証の中で、厨房等の増築という契約条件の変更の適否に疑義を生じさせる要因とされた事項(①民間提案制度に関する知識・理解不足、②事務手続き上の不備による情報伝達不足)については、真摯に反省し、今後の業務の改善に生かしてまいります。
勧告2について
市が所有する土地に第三者の建物(増築建物)が建っていることについて、速やかに当該増築建物に係る事業者から市への所有権移転に関する協議を行い、適法な状態にするための措置を講じることとしました。
勧告3について
送迎用車両を共同管理地へ駐停車させている状態について、小田原市財産規則第19条第2項に基づき、 行政財産使用許可申請による許可書を交付することにより、使用についての条件を付して明文化しました。
勧告4について
令和6年2月27日(お披露目会の日)から同月29日までの貸付料相当分について、小田原市財産規則第33条の2において準用する第25条第1号の規定に基づき、月額の貸付料の半額の支払いを事業者に対し求めることとしました。
小田原市職員措置請求に係る勧告に基づき講じた措置における市長コメント
勧告の中で一番の懸案事項でありました、提案募集時に禁止していた厨房等の増築を、事業化の協議の過程で市が認めたことについては、「違法なものであるとまでは言えない」との結論となりましたが、市の事務の進め方を起因として事業者も巻き込み市民の皆様に強い疑念や心配を抱かせ、住民監査請求を受ける事態にまでなったことについて、大変重く受け止めています。
清閑亭利活用の事業者である株式会社JSフードシステムの皆様には、当時の市の対応により、営業に関してご迷惑をお掛けすることとなり、大変申し訳なく思っています。
今後も官民連携により、歴史的建造物の利活用を通じた本市の活性化に、取り組んでいきたいと考えています。
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この情報に関するお問い合わせ先
文化部:文化政策課 文化政策係
電話番号:0465-33-1707