氏康画像(早雲寺写し)
小田原北条氏三代目の氏康は、永正十二年(1515)氏綱の長男として生まれている。仮名(けみょう)の新九郎は、祖父早雲、父氏綱も名乗っていたもので、生まれながらにして嫡男の扱いだったのであろう。
氏康の初陣(ういじん)は享禄三年(1530)六月のことで、このとき十六歳である。十六歳ながら、扇谷上杉朝興を武蔵小沢原で破っており、名将の片鱗をみせている。
父の氏綱は、氏康に合戦のことばかり教えていたわけではなかった、このあたりが、北條氏飛躍の秘密がかくされていたところで、若いうちから一種の政治見習いをさせているのである。例えぱ、鎌倉の鶴岡八幡富に天文六年(1537)七月二十三日付の判物があるが、その署名のところを見ると、氏綱・氏康父子の連署となっている。氏綱は我が子氏康に責任を分担させることによって、自覚を高めさせようとしていたことがわかる。