生活保護行政のあり方検討会(平成29年2月~3月)

小田原市では、生活保護担当職員が不適切な表記が記されたジャンパーを着用し業務に従事していたこと等を捉え、本市における生活保護行政についての検証と今後の改善方策を取りまとめるため、有識者の参画を得て、「生活保護行政のあり方検討会」を開催しました。
検討会からの改善策の提案を受け、さまざまな取組により生活保護行政の改善を図っていきます。

「生活保護行政のあり方検討会」からの改善策の提案を踏まえた本市の取組

「生活保護行政のあり方検討会」からの改善策の提案を踏まえ、本市の取組を取りまとめました。
生活保護の担当のみならず、部局内や部局間の連携、多様な主体との連携等により、ひらかれた生活保護行政に向けた改善を図っていきます。

改善に向けた取組進捗状況(平成30年4月30日現在)

改善に向けた取組進捗状況(平成31年4月1日現在)

生活保護行政に関するアンケート調査(平成30年3月~4月・10月~12月)

生活保護行政の改善に向けて、市民(利用者)の意見を把握し、今後の参考にするため、2種類のアンケート調査を実施しました。

●生活保護・生活支援施策改善のためのアンケート調査
・実施期間 平成30年3月~4月
・実施方法 郵便による送付、回収(無記名)
・対象者  市民10,000人(無作為抽出)
・回答数  3,973件(回答率39.7%)
●生活保護利用者アンケート調査
・実施期間 平成30年10月~12月
・実施方法 郵便による送付、回収(無記名)
・対象者  生活保護利用世帯2,190世帯
・回答数  1,070件(回答率48.85%)
市は、これらのアンケート調査から次のような課題認識を持ち、引き続き生活保護行政の改善に取り組むこととしています。

1 生活保護・生活支援施策改善のためのアンケート調査から
(1) 生活困窮者への支援とセーフティーネットの確保
 ジャンパー事件に関して、市の立場や行為を擁護する意見が少なくなく、さらに、生活困窮者に対する冷徹で侮蔑的な意見も散見されました。市はこうした意識の広がりを憂慮すべき現実として受け止めた上で、改めてすべての市民の暮らしに寄り添い、質の高い福祉サービスの提供に向けて不断の改善に取り組むことをもって、セーフティネットへの理解と信頼を得ていくことが必要と考えます。

(2) 法制度や市の取組に関する広報周知
 市の改善の取組や自立支援の新たな制度などに対して、市民の関心が相当に低いことが分かりました。また、憲法の理念に基づき国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じた必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長するという生活保護法の趣旨も浸透しているとは言い難い状況にあります。市としては、法制度や改善の取組の幅広い情報提供に努め、困窮者に寄り添うという生活保護行政の基本的な姿勢に理解を求めていくことが必要と考えます。

(3) 様々な悩みを抱えた市民に寄り添う支援体制の構築
 生活困窮に限らず、日々の暮らしに何らかの不安や悩みを抱える人の割合は、性別や年齢に関わりなく多いこと、その一方で、生活上の不安や悩みをごく身近な人以外に相談する人が少ないことも明らかになりました。既存の制度・サービスや、単独の機関では対応できない問題も多くあり、それらを社会として的確に捉え、必要な相談・支援につなげる体制づくりが必要と考えます。

2 生活保護利用者アンケート調査から
(1) 改善の取組の継続
 ジャンパー事件の発覚から1年を経過した時点でのアンケート調査においても、事件に対する批判的な意見が6割を超えました。その一方で、各種の改善の取組(ケースワーカーの対応、保護のしおりの見直し、支援課通信など)に対しては、評価いただく意見が多くありました。市としては、今後も利用者の批判的な意見を真摯に受け止めながら、改善の取組を着実に進め、利用者との信頼関係の構築に努めていくことが必要と考えます。

(2) 母子世帯が相談しやすい環境の整備
 母子世帯の利用が少ないことに関して、「相談に行きたくない」、「情報が不足している」などの意見が多く見られました。パーティションの設置や、女性職員の増員など相談しやすい環境づくりに努めていますが、今後も制度の周知と相談環境の整備に努めていくことが必要と考えます。

(3) 相談支援の充実に向けた取組
 相談窓口の対応や市から提供される情報に対して肯定的に受け止める意見が多く、生活保護を利用することで自身によい影響があると感じるという意見が多くありました。市としては、窓口対応については否定的な意見もあることを忘れず、より多くの人に相談しやすかったと感じてもらえるような対応に努めていくことが必要と考えます。

(4) 制度や情報の周知に関する取組の改善
 自身の健康や老後の生活設計などについて、大半の人が不安を抱えながら生活しており、そのことを誰にも相談しない人も少なくないことが明らかになりました。利用者の多くは、今後の見通しが立ちづらい状況にあり、社会的な孤立も懸念されることから、友人や家族との交流について聞き取りをしながら支援していくことが必要です。また、身近な人から保護制度の情報を入手することが多いので、様々な人への制度の周知に努めていくことが必要と考えます。

「保護のしおり」の見直し(平成29年4月~平成31年3月)

「生活保護行政のあり方検討会」からの報告書では、「保護のしおり」を、利用者の視点に立ち、分かりやすく自尊感情を傷つけない表記へと見直すことが提案されました。
これを受けて、市では全面的にしおりの見直しを行い、合わせてホームページの見直しも行いました。「保護のしおり」については、暫定版として活用し、全庁的な意見なども集約しながら確定版へとつなげていく予定です。
また、今後も市民や利用者の視点に立ち、表現や内容をより理解していただけるものとなるよう、「保護のしおり」やホームページともに適宜見直しを行っていきます。

主な変更点

  • カラー印刷化
  • 挿絵の挿入
  • ルビの挿入
  • 用語や表現の修正 など

「生活保護のしおり」の見直し(平成31年4月)

平成29年4月の全面的なしおりの見直しとホームページの見直しの実施以降、関係者から寄せられたさまざまなご意見を参考に、より良いものとなるよう見直し作業を行い、平成31年4月に「生活保護のしおり」を改訂しました。
今後も引き続き、適宜見直しを行っていきます。

主な変更点

  • タイトルの変更
  • 自立支援の内容について追加
  • 資産の保有について内容を追加
  • 保護を利用するかたの義務について、一部表現の修正

旧・保護のしおり

新・保護のしおり(暫定版) 平成29年4月~平成31年3月

新・生活保護のしおり(平成31年4月~)

 

生活保護行政のあり方検討会報告書(平成29年4月)

平成29年4月6日(木)、4回にわたる生活保護行政のあり方検討会での検討を踏まえ、取りまとめられた「生活保護行政のあり方検討会報告書」が、井手座長より加藤市長に提出されました。

全4回の会合等の経緯

生活保護行政のあり方検討会を次のとおり開催しました。

第1回会合

日時 平成29年2月28日(火)午後1時20分~3時20分
場所 小田原市役所 3階 議会全員協議会室
主な内容 生活保護行政の状況確認、問題点の洗い出し

小田原市長 加藤 憲一 冒頭あいさつ

 有識者の皆様、本日はお忙しい中、ご出席いただきありがとうございます。それぞれ大変お忙しいお立場にもかかわらず、快くお引き受けいただきまして、心からお礼申し上げます。
 生活保護行政のあり方検討会につきましては、本市の生活保護担当職員が不適切な表記が記されたジャンパーを着用し、業務に従事していたこと等を捉え、本市における生活保護行政についての検証と今後の改善方策を取りまとめるため、有識者の皆様のご参画を得て、開催するものです。
 このたびの件の問題は、不正受給の可能性があたかもすべての保護受給者にあるかのような認識をもたれる不適切な表現が記されたジャンパーを製作し、生活保護受給者を含めた市民の前で着用していた事実、そして10年にわたってこのジャンパーが着用され続け、その行為に対する内部での見直しや異論が出てこなかったことにあると考えており、生活保護制度を利用する権利を抑制することにつながるのではないかという当たり前の感覚が欠如していたと言わざるを得ません。
 そこで、このことの深い反省に立ち、生活支援の現場に携わる職員だけの問題とせず、組織全体として、市民一人ひとりに寄り添う職務を遂行するための意識付けを行うとともに、生活困窮者をとりまく諸問題の改善により一層取り組んでいかなければならないと考えております。
 本検討会における、検証及び改善方策の内容については、私たちの日々の仕事の仕方、ケースワークの取組方、市民の皆さんとのコミュニケーションのあり方など、色々なレベルのものが提示されることになると思いますが、それを一つ一つ間違いなく実行に移していく。どこから見てもおかしくない、生活支援業務の体系、業務のあり方を、この機を捉えて構築してまいりたいと考えております。
 そして、このたびの件を、小田原市全体が、「いのちを大切にする小田原」であるということをしっかりと外部に発信し、私たちの胸にも刻みつけていく、強力なモメンタムにしていかなければなりません。
 現在、高齢化の進展と相俟って、生活保護が必要な方々が増え続ける状況の中、その背景や温床となっている格差社会、分断社会、貧困化にどう対処していくのか。行政の役割として、地域に雇用の場を確保し、経済活性化への取組を進め、支援が必要な方々をお互い様の気持ちで支え合い、経済格差が貧困の連鎖に繋がる現状を断ち切っていく。このような取組を進めていくことが、このたびの件に対する、より本質的な対応にもなると考えています。
 有識者の皆様には、ご専門のお立場から、ご意見を十分に述べていただくとともに、本市職員とともにご議論いただき、本市の進むべき適切な方向付けをお願いしたいと存じます。
 本検討会は、年度末までの短期間に集中して行うことになります。お忙しい中、誠に恐縮ですが、なにとぞよろしくお願い申し上げ、簡単ではございますが、私のあいさつとさせていただきます。

座長(井手 英策 氏) 冒頭あいさつ

 今回の問題が複雑なのは、不正受給を厳しく取り締まるべきだという納税者の声と、生活保護受給者の権利を守れという声、いわば、ふたつの正義がぶつかりあっている点だ。
 不正受給は納税者から見ればムダ使いの極みだ。だからこそ、「不正受給はクズだ」というジャンパーを着ていた職員にたいして、よくやったという声があがる。だが反対に、多くの受給者が不正を働いているかのような間違った雰囲気が作られ、これに人権団体が反発の声をあげ、人間どうしの対立が深まっていく。
 私はこう考える。多くの日本人が生活不安におびえながら、なけなしのお金をやりくりして、税を払っている。このお金が正しく使われるよう求める声があがるのは当然のことだ。だが、今回の犠牲者は、不正をまったくおこなっていないにもかかわらず、長期間にわたってあのようなジャンパーを着た職員の訪問を受け、屈辱的な思いをした生活保護受給者だった。彼らの声なき声に耳を澄まさなければならない。市職員の行為を安易に正当化してはならない。これが私の基本的な理解、議論の出発点である。
 しかし、ケースワーカーを非難して、とかげのしっぽ切りをし、それで幕引きを図るわけにはいかない。ケースワーカーがああいう行動に出た背景にメスを入れなければ答えは見えてこないからだ。
 彼らの役所のなかでの立場はいかなるものだったのか。耐え難いような労働環境はなかったのか。苦しみの叫びをあげるチャンスはあったのか。生活支援課も含めた全庁的な風土、雰囲気に問題はなかったか。もしかすると、生活保護受給者に対する態度と同じような態度が別の場所で市民に向けられているかもしれない。あるいはジャンパーこそ作らなくとも、同種の問題が全国のあちこちで起きているかもしれない。
 この会議の焦点はあくまでも生活保護行政のあり方だ。だが、この問題が突破口となり、より住民目線に近い、質の高いサービスを効果的に提供する行政、納税者が納得できる社会への道筋がひらかれるかもしれない。幸い、従来であれば、行政が非常に嫌がるような、素晴らしいメンバーがそろった。小田原市の本気さを感じたし、だからこそ背水の陣の思いで、座長の役目を引き受けた。小田原市民はもとより、全国の生活保護受給者、ケースワーカー、そして多くの日本人が希望を感じられる会議となるよう、この場にいる全員のみなさんに活発なご意見とご協力をお願い申し上げる。

議事概要

会議資料


第2回会合

日時 平成29年3月4日(土)午後1時00分~3時00分
場所 小田原市役所 7階 大会議室
主な内容 問題点の洗い出し、問題点の特定

議事概要

会議資料


第3回会合

日時 平成29年3月14日(火)午後1時00分~4時00分
場所 県西地域県政総合センター(小田原合同庁舎) 2階 2D会議室
(小田原市役所 6階 601会議室から変更になりました)
主な内容 特定した問題点の議論、改善方策の検討

議事概要

会議資料


第4回会合

日時 平成29年3月25日(土)午後7時20分~9時20分
(当初の時間(午後7時00分~9時00分)から変更になりました。)
場所 小田原市役所 3階 議会全員協議会室
主な内容 改善方策の検討、取りまとめの検討

会議資料


生活保護行政のあり方検討会 出席者名簿

有識者
猪飼 周平 一橋大学大学院社会学研究科 教授
○井手 英策 慶応義塾大学経済学部 教授
櫛部 武俊 一般社団法人釧路社会的企業創造協議会 副代表
森川 清 弁護士
和久井 みちる 元生活保護利用者
市職員
神名部 耕二 小田原市企画部副部長
下澤 伸也 小田原市企画部行政管理課長
小澤 寛之 小田原市企画部職員課長
遠藤 佳子 小田原市市民部副部長
杉山 博之 小田原市福祉健康部副部長
栢沼 教勝 小田原市福祉健康部生活支援課長
  • ○印は座長
  • 一般傍聴の定員は30名(予定)ですが、傍聴希望者が席数を超えた場合は抽選とし、会合の開始15分前に実施します。傍聴希望者は、会合の開始時間15分前に集合してください。
  • 報道関係者は、会合の開始10分前までに会場にお越しください。傍聴証を交付します。撮影(映像・写真)は冒頭のみとし、有識者のうち和久井みちるさんの撮影は不可とします。


職員向けのアンケート回答一覧(平成29年2月実施)

「生活保護行政のあり方検討会」において、議論の資料にするため実施した職員向けのアンケート回答一覧を公開します。
アンケート概要
目的
本市生活保護行政の検証及び改善方策を検討する「生活保護行政のあり方検討会」における議論の資料とするため。
対象
調査票1 平成19年度以降の保護係職員、保護係OB職員 75人
調査票2 全職員(医療職を除く) 1,488人
期間
平成29年2月20日~2月23日
方法
無記名方式(庁内ネットワークシステムのアンケート機能を使用)
回答状況
調査票1 回答者数:61名(回答率81.3%)
調査票2 回答者数:977名(回答率65.7%)

小田原市生活保護行政のあり方シンポジウムの開催(平成29年4月)

平成29年4月30日(日)、シンポジウム「利用者と支援者の壁をこえていく」を開催しました。
開催日 平成29年4月30日(日)
時間 午後2時~3時45分(午後1時30分開場)
場所 市民会館 大ホール(小田原市本町1-5-12)

生活保護行政に関する検証会の開催(平成30年4月)

市では、「生活保護行政のあり方検討会報告書(平成29年4月)」に示された改善策の提案に基づいて、さまざまな取組を進めてきました。取り組みを始めてから1年、生活保護行政の状況を有識者の皆さんとともに検証しました。
開催日時 平成30年4月30日(月・休) 14時~16時
場所 おだわら市民交流センターUMECO(栄町1-1-27) 会議室1~3

この情報に関するお問い合わせ先

福祉健康部:生活援護課 生活援護係

電話番号:0465-33-1463

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