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2026年05月29日(金)

西海子の帰路報告会

アーバンデザインセンター小田原
 昨年(2025年)11月、「西海子の帰路報告会」があった。主催はアーバンデザインセンター小田原(以下「UDCOD」という)と東海大学建築都市学部建築学科野口直人研究室。
 前々から都市計画や建築に少々関心をもっていたので、さっそく会場である西海子小路にある旧保健福祉事務所跡地に行ってみた。
 
子どもたちの手でつくるまち
ブロックづくりをする子どもたちブロックづくりをする子どもたち
 ちょうど会場の旧保健福祉事務所跡地に着いたとき、海岸の方から子どもたちが帰ってきた。西海子地区の子どもたちやボーイスカウト小田原第2団の隊員たちおよそ20人、袋から出てきたのはたくさんの素材(小石やシーグラスなど)。ふだんから身近な海岸で集めてきた素材だという。これらの素材を四角い枠に並べてコンクリート・モルタルのブロックをつくる。モルタルを捏ねる子、思い思いに並べる子、考え込む子、それぞれ生き生きと活動している。
出来上がったブロック出来上がったブロック
 出来上がったブロックは、この旧保健福祉事務所跡地の地面に残し、この広場を自分たちの手で地域の資源を使ってつくったという体験を通して、西海子のまちをより身近に感じることが期待されている。
会場の様子会場の様子
 西海子小路を挟んだ旧松本剛吉別邸と隣接した小田原文学館(白秋童謡館)には、西海子地域の模型も展示してあった。西海子に住む人々との交流を重ねてデザインした成果である。普段、なにげなく抜ける小道、古い石垣のある通り、かつて保健所のあった広場、歴史的な建物の佇まい、そこに西海子に生活する人々の日常と育まれた心があるのだろう。
模型で発見するまちの魅力
西海子地区の地域模型西海子地区の地域模型
 旧保健福祉事務所跡地の広場と西海子小路を挟んだところにある明治の政治家松本剛吉の別邸に、西海子地区の地域模型が展示されていた。おなじく小道を隔てた白秋童謡館にも300分の1の西海子地区全体の2M四方の模型が展示してあった。このような3次元に立ち上げたスタイロフォーム(※)の真っ白な模型を制作して俯瞰することで、この地域の特性や課題が浮き彫りになる。旧保健福祉事務所跡地や大蓮寺境内など、遊び場になるような場所や魅力的な場所が、地域のどこにあるのか見えてくる。過去に行なった宝探しのときに子どもたちが見つけてくれたそうだ。見学に来た小さな子が模型を指さして、「保健所があって大蓮寺があって、ぼくの家は木の生えているこの辺だ」と声をあげていた。「ここだよね。今は木は生えてないよね」とお母さん。
※スタイロフォーム:住宅の床・壁・基礎の断熱材やDIY材料などに使われている建材
ふたつの顔を持つまち ーいろいろな使い方
野外で成果報告野外で成果報告
 夕刻5時からは旧保健福祉事務所跡地にそびえる2本の松の木に大きな白布をかけた野外スクリーンが登場。西海子にふさわしい演出だ。夕闇が迫るころ、地区の人たちが会場に三々五々集まってきた。地域の人たちとともに地域の宝を探したりワークショップを開いたりしてきた成果をまとめた報告の動画上映である。祭りの掛け声から始まった動画、居神神社の巫女さんの舞に続く。「去年は子どもたちの西海子の宝探し、歴史的建造物、それらの資源を探し出して西海子ならではの使い方を探ろうとしてきた。西海子の地域は、昔は十字、今は南町とされている地域で自治会も複数にまたがっている。居神神社と松原神社の二つの神社の氏子がちょうど真ん中で分かれているのも興味がある。調査の過程でお祭りに参加して、この跡地や公民館が祭りの場として変化していく。お神輿の走るルートを辿ると、どこに広場があるなど街のいろいろな使い方が見えてくる。大蓮寺の境内も地域に開かれている。歴史的建造物である旧松本剛吉別邸も市民のイベントに解放されている」との説明があった。
地域の人たちによる跡地の使い方提案 ―西海子の帰路展
子どもたちが制作したモルタルの作品子どもたちが制作したモルタルの作品
 3月初め、旧保健福祉事務所跡地と旧松本剛吉別邸で開かれていた「西海子の帰路展 柔らかいものを集めよう 固いもので痕跡を残そう」というタイトルのUDCODの展示会に行ってみた。跡地の入り口の地面には、昨年11月の報告会で子どもたちが制作したモルタルの作品が誘導路のように配置されていた。跡地のなかでは、十字地区の人たちのグループが立ち上げた「十字で起こす保健所跡地プロジェクト」による「シテミテひろば」の告知が行われていた。広場には、UDCODの協力を得て、ハンモックや遊具が配置され近所の子どもたちで賑わっていた。旧松本剛吉別邸では、西海子の帰路でまとめ上げられた3つのコンセプト「通り抜けられるまち」「二つの顔を持つ場」「環境と共生する空間」を具現化した模型を学生が製作し、展示していた。通りから通りへ抜ける道、通る人(まち)と住む人の交流が促される住宅設計、起伏のある自然を取り込んだ空間設計など新しい開発像が提案されている。なお、「シテミテひろば」は、広場を開放し、世代を超えて自由に使ってみようという実験で、今年4月に開催された。
複雑化する都市の課題 更なるまちの魅力を
旧市民会館跡地にて旧市民会館跡地にて
 UDCODは、「公・民・学の連携により、複雑化する都市の課題を解決し、更なるまちの魅力向上を図り、デザインの視点を加えた新たなまちづくりを推進していく」ことを目的として、令和5年(2023年)3月に組織されたもの。設立の目的から読み取るに、複雑化する都市、まちの魅力とは、公の役割・市民の力・学術研究の成果、都市デザイン、新たな視点などのキーワードがある。これらを小田原の今、あるいは未来に当てはめるとどのような答えがでるか、期待されるところである。また、行政的な「町」でも賑やかな「街」でもなく、人と人の関わりとしての「まち」とすることが最近の「まちづくり」の潮流のようである。UDCODは、この西海子地区を始め、駅前周辺地区、豊川地区、板橋地区などにおいて展開されてきている。これらから敢えて共通項を求める必要はないが、より普遍性を高め、アーバンデザイン(この言葉も概念も理解に容易ではないが)によって生まれた成果が、住む人の日常になり、生活になり、100年先の小田原の文化となるよう、公・民・学の力が試されよう。500年前の小田原が今の小田原を形作っているように。
記:ゆきぐま

2026/05/29 10:23 | なりわい

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