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2015年10月08日(木)

知られざるヴァイオリニストの世界

秋の月にうっとりと見とれ、虫の音を聞きながら秋の夜の風情を楽しむ季節となりました。
今回は小田原出身のヴァイオリニストの小野唯さんにヴァイオリニストの生活についてお話を伺ってきましたのでレポートします。
僕はクラッシックをCDやTVで聞くことはあっても、ホールでの演奏会に足を運んだことは無かったので、知らない世界を垣間見る事ができました。
小野唯さんは幼少の頃よりヴァイオリンを始めて、音大卒業後2年のロシア留学を経て現在フリーの若手ヴァイオリニストとして活動されています。

■演奏家の生活
僕は会社勤めなので毎日会社と家を電車で往復する生活なのですが、小野さんはふだんどのような生活を送っているのですか?
 
小野:
特定の活動以外は、スケジュールも出向く先もその都度変わります。練習と演奏会の事務作業は自宅で行っているので、家にいるからオフ日ですとは言いきれません。平日に昼まで寝られる日を作れたりはしますけどね(笑)。
車の免許は持っていないので、移動には公共の交通機関を利用しています。楽器を持っての満員電車は怖いので、楽器を守るために抱きかかえて乗るようにしたり、厳しいときは電車を数本見送ったりすることもあります。
 
楽器が潰されては大変ですよね(笑)。
演奏会はどれくらいこなしているのですか?
 
小野:
多い時は毎週あります。(手帳を見ながら)えーと、今は2月の演奏会まで予定があります。それから来春には年2回開催している「ロシアより」演奏会を予定しています。
 
もの凄く多くてびっくりしました。僕は月に1、2回ぐらいのペースで演奏会をしているのかと思っていたのですが全然違いました。それだけ回数があると練習している曲数も多くなるのではないですか?
 
小野:
そうですね、今練習している曲は20曲ぐらいあります。1曲で40分ほどの作品もあるので、大変です。
練習時間はその日のスケジュールや自身の調子によっても変動します。弾いたほうが実になる日は沢山練習しますが、作曲家や作品について勉強しないと進歩しないと感じた時は、調べものに費やす時間が多くなります。
 

演奏会と言っても色々あると思うのですが、どのような演奏会に出演しているのですか?
 
小野:
自主公演やオーケストラの演奏会、出演依頼をいただいた場での演奏です。イベント出演のご依頼をいただく事もあり、なかには主催企業さんのお客様やご招待客のみのプライベートコンサートに出演する事もあります。
 
それぞれどのような違いがあるのですか?
 
小野:
自主公演の良いところは、自分たちの好きな演奏会を作れることです。プログラムも弾きたい曲を選べるので、マイナーな作品に挑戦することも今の自分に合った作品を選ぶことも可能です。
会場の下見から予約、チラシの手配・宣伝、チケットの予約などを全て行うのは大変ですが、今はもう慣れてしまったので気になりませんし、会場のオーナーさんやチラシ制作のデザイナーさん、お客様と直接接することが出来るのを楽しんでいます。昔は事務作業と練習の両立に苦労しました。
 

全部自分でやらないといけないのですね。大変です。

小野:
オーケストラの良いところは、様々なオーケストラ楽器とでしか味わえない世界を体感できる事。指揮者から学ばせていただける事も山ほどあります。
月に1回程度、オーケストラ演奏会に客演出演等する機会があるのですが、常に様々なオーケストラと関わりが持てるので新鮮さや刺激を貰えます。
私はオーケストラに団員として所属しているわけではないので、大変なところは行く先々の演奏スタイルや個性に柔軟に対応しなければならない事でしょうか。短期間に多くのことに気を使います。
 
大勢の人と音を作る作業というのは練習も多くなって大変ですね。
 
小野:
本番中のアクシデントも稀にありますよ。オペラ公演中、とても重要な激しいシーンで指揮者の指揮棒が譜面台に当たり物凄い勢いで飛んできた事があります(笑)。
 
本番もすごく大変ですね(笑)。指揮者も演奏者も熱がこもった演奏しているということですね。

小野:
出演依頼をいただいたお仕事は、どのようなコンサートを作り上げたら喜んでいただけるのか、ふさわしいと思われるものを練る段階がとても面白いです。いつもと違うお客様に聴いていただけるのも新しい発見があり貴重だと思います。反面、本番当日まで会場の響きや雰囲気が分からない場合もあるのですが、そういう時は少し不安になります。
 
小野:
演奏会の他には、ヴァイオリンの指導。それからテレビや映画音楽のレコーディングのお仕事もあります。
 
サウンドトラックCDなどの収録ではないのですか?
 
小野:
そういったお仕事もありますが、私が今まで関わらせていただいたのはもっと断片的なものです。
テレビ番組や映画音楽って、一つの作品の中にも多様な音楽が扱われていますよね?その中の数曲の収録であったり、オープニングとエンディング曲のみであったり、一部のシーンのための収録です。
 
そう言えば同じ曲を違うシーンで使う場合も多いですね

■ストリートパフォーマンスでチャリティーコンサート
小野:
子供の頃から慈善活動に興味があり、チャリティーコンサートに出演したり、自ら企画したりしています。
東日本大震災の後、被災地の方たちを思うとしばらく楽器が弾けなくなりました。そんな時に友人から、義援金集めのストリートパフォーマンスに賛同してくれるヴァイオリニストを探している知人がいるとお話を貰い参加しました。
 
ストリートパフォーマンスですか?ちょっと想像できません。
 
小野:
メンバーはバレリーナ2人とソプラノ歌手と私の4人。電力無しに活動が出来る組み合わせでした。
新宿駅南口で行ったときは、アスファルトの上をトーシューズで踊るバレリーナと歌声とヴァイオリン。この組み合わせはこちらが思う以上に人々の気を引き付けるものであったようで、沢山の方が立ち止まり、踊りを見、歌詞と音に耳を傾け、寄付をしてくださいました。
すぐ後ろが道路で、排気ガスを出す車のエンジン音に溢れている場でのクラシックのパフォーマンスでしたから、皆さん驚いていましたよ。
 
それはみんなびっくりしてしまいますね(笑)。僕も観てみたかったです。
 
小野:
大学を卒業し留学を控えた時期に、相馬の野馬追の馬たちを支援する演奏会を行いました。
 
それはどのようなきっかけで行ったのですか?
 
小野:
相馬出身の方から、野馬追が地域に深く根付いていて人々の心の支えであるにも関わらず、震災の影響で馬たちに食事を与えることもままならない状況にあることを伺ったのがきっかけです。小さなことしか出来ないですけれど、動物の命を助けるお手伝いが伝統文化を応援することに繋がり、人々を笑顔にし勇気づけられたら良いなと思いました。
 
そのほかにはどうでしょうか?
 
小野:
帰国してからは、大磯で毎夏に行われている福島っこ保養プロジェクトに協力させていただいています。
一昨年は保養に来た方たちへの演奏の場をいただき、昨年と今年は大磯教会で開かれた保養プロジェクトの為のチャリティーコンサートに出演しました。
保養にくる子供たちとは、保養期間中に交流する機会をいただいています。
皆とても素直で、純粋な心と表情を見せてくれるので、この先も彼らの笑顔が続いてほしいなと思います。

モスクワの日本人学校の子供達とモスクワの日本人学校の子供達と

■音楽家として
先日かもめ図書館でコンサートされていましたね。僕のように普段コンサートに足を運ばない人向けにプログラムを考えないといけないと思うのですが、演奏会の曲はどのように決まるのですか?
 
小野:
自分で決めたり、共演者と相談したりして決める事が多いです。
出演依頼をいただいた公演では、リクエストをいただく事もありますが、リクエストのない場合はテーマやコンセプト、会場、演奏のタイミング、どのようなお客様に向けて演奏するのか等をお伺いしてから選曲します。

持ち曲ってどれくらいの曲数あるのですか?
 
小野:
曲数をあげるのは難しいですが、レパートリーとしては古典から近代、現代曲まで幅広く演奏しています。今はまだ演奏経験のない作品にも挑戦して幅を広げています。
 
クラシックって、それこそ数百年も作曲され続けていますからね。
 
小野:
演奏家は、楽譜から作曲家の言いたい事や時代背景、表現したい世界を読みとり、それを音にする媒体のような存在だと思っています。もちろん自分の感性や価値観、経験などがそこに加わることになりますが。
 
だから、同じ楽譜の曲でも演奏家によって奏でられる音楽が変わってくるのでしょうか?
音楽家として嬉しい事、つらい事はなんですか?
 
小野:
嬉しいことは、そのままですが音楽のある生活が出来ることです。
また、音楽がきっかけで、様々な人と知り合えてお話が出来ることや知ることの出来る世界が広がることです。
辛いときは、息詰っていて思うような演奏が出来ないときです。
自分の状態がすぐ音に出るので、ヴァイオリンを弾くことで気付かされるときもあり、問題と向き合う作業は辛いです。
 
最後に演奏家として将来どうありたいですか?
 
小野:
具体的な活動は模索中ですが、積み重ねてきた人生が音や演奏にじわじわと出てくるような人になりたいです。
あと、求められた時にそこにあった(居た)というような存在でいられたら幸せですね。
呼吸をするのと同じように、自然に、身近なものとしてクラシック音楽も感じていただけたら嬉しいです。
敷居が高いと萎縮されてしまったり、クラシック音楽は難しくて分からないという反応をいただいたりする事はありますからね。
 
お嬢様に思われるとか?(笑)
 
小野:ヴァイオリン=お嬢様に思われるのはずっと嫌でしたね(笑)。
“おんがく”なので、感じて心地よいと思うものには癒されたり救われたりしてほしいと思います。
苦しみを表現した作品もありますけれど、それも作曲家の人生や時代の歴史の一つです。
もっと見えないモノの価値が認められるといいなと思います。
 
今日はありがとうございました。
 
小野:
ありがとうございました。
 

●今後の活動予定
10月12日 "ロシアより"ヴァイオリン&ピアノ「プレ・コンサート」(茅ヶ崎)
10月18日 ブロッサム・フィルハーモニック・オーケストラ「第11回定期演奏会」(江東区)
10月25日 「十三夜観月会」内、出演(大磯/要予約)
11月1日 "ロシアより"ヴァイオリン&ピアノ「メイン・コンサート」(茅ヶ崎)
11月8日 "ロシアより"ヴァイオリン&ピアノ「メイン・コンサート」(三軒茶屋)
11月23日 「マリアコンサート」(調布/要予約)
詳細は、y.concert.info@gmail.com(小野)にお問い合わせください。

●小野唯さんプロフィール
 
小田原市出身。桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部、チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院研究科を卒業。
2011年小澤征爾音楽塾メンバー。別府アルゲリッチ音楽祭、インチョン&アーツ国際音楽アカデミー(韓国)など、国内外の音楽祭にオーケストラ出演。Mimir Chamber Music Festival(米・テキサス州)に招待され、弦楽四重奏で出演。
ソリストとして、バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」、K.アッテルベリ「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲(日本初演)」、ラロ「スペイン交響曲」をオーケストラと共演し、いずれも好評を博した。
これまでにヴァイオリンを故・白井英一、名倉淑子、V.イワノフ、G.フェイギンに。室内楽をA.メルニコフ、K.マスリューク、A.ヤンチシナに師事。
現在はソロ・室内楽・オーケストラ、レコーディング等の演奏活動の他、後進の指導を行う。
 
ブログ
http://ameblo.jp/yuiolin-1220/
 

2015/10/08 17:28 | 音楽


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