インタビューvol.4
エリアごとの個性を読み解き、群島のような小田原の全体像を捉える
UDCODでは、都市形成史の視点から板橋や国府津エリアを対象に研究をしている東海大学建築都市学部准教授の稲益祐太さん。
専門とされているイタリアの都市との違いも踏まえて、小田原の特徴などを伺いました。
専門とされているイタリアの都市との違いも踏まえて、小田原の特徴などを伺いました。
広報紙に関連記事が掲載されています。
稲益 祐太さん(撮影場所:国府津国道1号沿い)
都市形成史は、どのような研究ですか?
都市が作られてきた過程から、特徴を明らかにする
都市がどのように作られてきたのか、その過程を解き明かすのが、私が専門としている都市形成史という研究です。
ほとんどの都市は、一時期にすべて完成したのではなく、長い時間をかけて段階的に作られ今の姿になっています。その積み重ねが混ざり合った状態なので、この建築様式、この路地の作り方、この街区の作り方はどの時代の特徴だろうかということを、一つずつ紐解いていきます。
同じ時期にできた城下町であっても、その後の発展の過程はそれぞれ違います。発展過程の重なりが都市の個性を作っていくので、都市形成史は、都市の特徴を明らかにする研究ということになります。
ほとんどの都市は、一時期にすべて完成したのではなく、長い時間をかけて段階的に作られ今の姿になっています。その積み重ねが混ざり合った状態なので、この建築様式、この路地の作り方、この街区の作り方はどの時代の特徴だろうかということを、一つずつ紐解いていきます。
同じ時期にできた城下町であっても、その後の発展の過程はそれぞれ違います。発展過程の重なりが都市の個性を作っていくので、都市形成史は、都市の特徴を明らかにする研究ということになります。
誰もが都市の形成を担っている
主にイタリアの歴史的な都市を研究しています。組積造の文化ということもあり時代の積み重ねが目で見てわかりやすく、イタリアでの研究を通して、長い時間をかけて都市が出来上がることの魅力を感じました。
都市は、著名な建築家やデザイナーだけが作っているのではなく、各時代の人々が手を加え多くの人の手で作り上げた結果です。誰もが都市を作り上げるメンバーの一人であって、間接的にでも美しい都市を作ることに携わっていると言えると思います。
都市は、著名な建築家やデザイナーだけが作っているのではなく、各時代の人々が手を加え多くの人の手で作り上げた結果です。誰もが都市を作り上げるメンバーの一人であって、間接的にでも美しい都市を作ることに携わっていると言えると思います。
プーリア州バーリ市の旧市街
美しい都市とは?イタリアと日本の違いは?
「ビューティフル」と「クリーン」
イタリアと日本では、美しさの基準が違うように感じることがあります。
日本の場合は、美しい都市、綺麗なまちというのは「清潔」つまり「クリーン」であることを指すことが多いように思います。しかし、 イタリアの場合は「ビューティフル」。ボロボロで汚れていても、その時代にしかできない建築であれば、それは美しい芸術作品となる。だから、ボロボロなら修復すればいい、汚れているなら綺麗にすればいいという判断がされやすい。 「クリーン」が基準の場合は、ボロボロで汚れてしまったら価値がないので、壊して新しくしようとなりやすいですね。
日本の場合は、美しい都市、綺麗なまちというのは「清潔」つまり「クリーン」であることを指すことが多いように思います。しかし、 イタリアの場合は「ビューティフル」。ボロボロで汚れていても、その時代にしかできない建築であれば、それは美しい芸術作品となる。だから、ボロボロなら修復すればいい、汚れているなら綺麗にすればいいという判断がされやすい。 「クリーン」が基準の場合は、ボロボロで汚れてしまったら価値がないので、壊して新しくしようとなりやすいですね。
長編物語のイタリア、短編小説集の日本
イタリアにも人口増加に伴い新しく作られた郊外住宅街があり、日本とあまり変わらないまちなみもあります。
日本との違いは、「ビューティフル」な古いまちの中心部には手を加えない判断をしていることです。もちろん建て替えもあるのですが、一気に更地にすることはなく、新旧が混在しています。
日本の場合は、古いまちをリセットして「クリーン」にしてきたので、歴史の積み重ねを感じづらくなっています。もちろん「クリーン」は素晴らしいことで、イタリアは汚くて嫌になることもあるんですけどね。
イタリアの都市は、第1章、第2章と物語がずっと続いていて、日本の都市は短編小説集のような印象です。
日本との違いは、「ビューティフル」な古いまちの中心部には手を加えない判断をしていることです。もちろん建て替えもあるのですが、一気に更地にすることはなく、新旧が混在しています。
日本の場合は、古いまちをリセットして「クリーン」にしてきたので、歴史の積み重ねを感じづらくなっています。もちろん「クリーン」は素晴らしいことで、イタリアは汚くて嫌になることもあるんですけどね。
イタリアの都市は、第1章、第2章と物語がずっと続いていて、日本の都市は短編小説集のような印象です。
建物の修復は都市再生の重要な手段(建物に足場が掛けられ改修工事が行われている)
小田原には、どのような特徴がありますか?
多様でミステリアス
小田原は日本の同規模の都市の中でも、様々な歴史が混在して残っているまちだと思います。
小田原城のイメージが強いですが、それだけではなく、明治以降の発展の過程、鉄道の歴史、箱根とのつながり、一次産業の歴史など、少しずつ残っています。 そして、産業があり、なりわいが根付いていること。私は、都市は生産と消費の両方がある方が魅力的だと思っていますが、小田原には両方あります。消費だけに特化した場所になってしまっている都市は、刺激的ではあるけどどこか退屈。
小田原には、歴史に加えてこのように様々な要素があること、この多様さこそが魅力です。「城下町」などの一つの言葉で語るのではなく、時代の積み重ねの上になりわいや暮らしが続いていること、まちが生きていることを伝えられるといいのではないでしょうか。
ミステリアスで多面的な人って魅力的ですよね?まちも同じだと思います。
小田原城のイメージが強いですが、それだけではなく、明治以降の発展の過程、鉄道の歴史、箱根とのつながり、一次産業の歴史など、少しずつ残っています。 そして、産業があり、なりわいが根付いていること。私は、都市は生産と消費の両方がある方が魅力的だと思っていますが、小田原には両方あります。消費だけに特化した場所になってしまっている都市は、刺激的ではあるけどどこか退屈。
小田原には、歴史に加えてこのように様々な要素があること、この多様さこそが魅力です。「城下町」などの一つの言葉で語るのではなく、時代の積み重ねの上になりわいや暮らしが続いていること、まちが生きていることを伝えられるといいのではないでしょうか。
ミステリアスで多面的な人って魅力的ですよね?まちも同じだと思います。
群島のような小田原
UDCODの活動では、現在、板橋エリアと国府津エリアを対象に研究しています。また、少し前の歴史の方がまちの中に痕跡を見つけやすく、市民の皆さんに身近に感じていただきやすいので、近代の歴史、特に昭和の変化に着目しています。
あえて中心部ではないエリアを選択したのは、小田原が群島のように見えたからです。小田原は、城下町だった中心部以外にも、閑静な住宅街、港町、農村など異なる個性を持つエリアが点在しています。これらのエリアがそれぞれ小さな島で、その島々が関係しあい、小田原という群島を形成しているかのようです。
小田原は多様なだけに全体を捉えにくい面もありますが、一つ一つの島の特徴を分析することで、小田原という群島全体の特徴を解き明かしたいと思っています。
あえて中心部ではないエリアを選択したのは、小田原が群島のように見えたからです。小田原は、城下町だった中心部以外にも、閑静な住宅街、港町、農村など異なる個性を持つエリアが点在しています。これらのエリアがそれぞれ小さな島で、その島々が関係しあい、小田原という群島を形成しているかのようです。
小田原は多様なだけに全体を捉えにくい面もありますが、一つ一つの島の特徴を分析することで、小田原という群島全体の特徴を解き明かしたいと思っています。
国府津では国道1号沿いの街並みの調査を行っています
建物を一軒一軒、東海大学の学生がスケッチし現状を記録します
稲益 祐太(いなます ゆうた)
東海大学建築都市学部 准教授
東京都生まれ。2005年法政大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程修了、2012年法政大学大学院工学研究科博士課程満期退学。大学院在学中、イタリアのバーリ工科大学に留学。久留米工業大学建築・設備工学科特任講師を経て現職。
専門はイタリア建築史・都市史。
この情報に関するお問い合わせ先
都市部:都市政策課 都市デザイン係(UDCOD事務局)
電話番号:0465-33-1758