
講談落語浪曲と話芸が好きな文化レポーター、備堂能満(びんどうよしみつ)が、今月開催の「柳家三三小田原落語会〜夏の大ホール公演〜」を、落語の世界から抜け出したような“アニキ”と“オイラ”の二人組の掛け合いでご紹介します。
先ずは、お馴染み、浪曲虎造節で。
旅行けば 相模の国の 小田原の 一筋(ひとすじ)伸び行く 東海道
道に沿いたる 街並みの 城に向かいて そびゆるは
黒鉄(くろがね) 雄々(おお)しき その姿 これぞ三の丸のホールでぇーすぅ。
さて、そこにやって来たのは珍妙な二人連れ。何やら楽し気におしゃべりの真っ最中だ。
『なんでだろーう、なんでだろう。こんなにワクワクするのはなんでだろう。』
「アニキ、ごきげんじゃないですか。その両の手でクネクネしているのは何ですか。」
『おめエー、知らねえのか。こいつはお子様にも大受けの、赤、青ジャージの二人組、泣く子も笑う陽気な兄さんたち、“テツandトモ”の鉄板芸よー。』
「ということは、2002年MI-グランプリで決勝に進出、2003年には新語流行語大賞を受賞した“なんでだろう”踊りの手振りってことですね。」
『なんだ、おめエ、よく知ってんじゃねえか。それに俺よりもなんだか詳しいな。』
「へへ、アニキ、こうやるんすよ、赤ジャージのテツさんの動きはそんなものじゃないですよ。こうね、もっとキレッキレなんですよ。おまけにあの顔も大事なんすよ。ステップだってこんな風にね。」
『ほう、やるじゃねえか。じゃあ、知ってるよな。もうすぐ小田原で生の“テツandトモ”の芸を楽しめる絶好の機会があるってことをよ。』
「はいな、アニキ、知らいでか。三の丸ホール恒例の三三落語会のゲストが“テツandトモ”なんですよね。オイラは、青ジャージのトモさんの歌とギター、こぶしのきいた節回しも大好きなんすよ。」
『本当にうれしいよな。三三落語会のゲストは毎度イケてるんだよ。前回初春公演の柳貴家雪之介も良かったなー。馴染みのなかった太神楽曲芸の面白さってのを存分に味わった。家族連れのお客さん、お子達も大喜びだったな。やっぱり、わかってらっしゃる。三三師匠のご推薦は間違いないね。』
「夕方からの落語会ってのもいいすね。昼間はお仕事でも、はな金の夜でしょ、笑って楽しんで、帰りに一杯やろうなんて、いいんじゃないですかー。ねえ、アニキ。」
『古典の人情噺から爆笑の新作物まで楽しみなネタはいっぱいあるが、三三師匠の怪談噺も評判なんだぜ。夏の会だからなあ。そりゃ、季節もんよー、ひんやりとした話ってのも聴きたいねー。今年は立川談春と一緒に三遊亭圓朝の怪談噺をやって各地で大受けだそうだ。小田原でもちょいと期待したいところだね。』
「ほら、アニキ、着きましたよ。あすこが売り場だ。これが今日の一番仕事。急がなくっちゃー、売り切れてなきゃいいけど。前の方は、っと・・・。」
『ええ、後ろの方だってよござんすよ。とにかく聴きたい、観たい、行きたいのが、柳家三三小田原落語会だ。最後の一枚まであきらめませんよってんだ。』
「落語会の帰りにヤ、ねえ、アニキ、こう、きゅーっと一杯、おいしいお酒もお願いしますよ。」
『・・・・おっと、やめておこう。また夢になっちまうといけねえ。』
「ええ、なんでそこだけ、“芝浜”・・・・。ねえ、アニキ、待ってよー。」
こんな“アニキ”と“オイラ”の面倒を見ている家主の伝兵衛さんからも何かあるそうです。この御仁、演芸ファンで、気に入ったことがあったらどうにもお伝えしたいようなのです。
「さて、柳家三三小田原落語会〜夏の大ホール公演〜を楽しみにしているミミちゃんのファンには御存知商売物(ごぞんじのしょうばいもの)。今回の公演のチラシは、まったく、イイね!ですなあ。三三師匠のお姿のバックに広がる写真の数々。漫画のコマ割りの如く吹き出しもあり、その表情仕草のいろいろと併せてライブ感も増しましですな。また、なんとその撮影は、演芸好きなら知らぬ者無しの 橘蓮二 氏.撮っては書いてと、演芸の世界に寄り添って、本当にいい仕事をなさっているお方。全く贅沢にできたチラシです。伝兵衛は大事にコレクションしたいと思っておりますよ。」
“アニキ”と“オイラ”も何とかチケットを手に入れたようです。良かったねー、間に合いました。伝兵衛さんもおカミさんを誘って出かけます。帰りには、皆でおいしいお酒も飲めるかな。