
“交響詩フィンランディア”(1899)で知られる作曲家のシベリウスによるヴァイオリン協奏曲です。ソリストのアレクサンドラ・コヌノヴァは、チャイコフスキーコンクール等の国際コンクールの上位入賞者として、世界的に注目を浴びているとは言え、まだ“知る人ぞ知る”と言っても過言ではない存在ですが、その奔放な響きを耳にした瞬間、このヴァイオリン奏者に巡り会えた幸せを感じた瞬間でした。三の丸ホール大ホールの神様を味方に付けて、そのヴァイオリンの響きは自由奔放にホールを満たしてくれました。
ヴァイオリンに限らず協奏曲の演奏で、楽章の途中の弾かない瞬間に、指揮者ではなくオーケストラの楽員とコミュニケーションを交わす(少なくともそう見えました)のを見たのは初めてですが、彼女から溢れ出てくる音楽は、その仕草の有無によらず、オーケストラと一体となって、三の丸ホール大ホールにシベリウスの音楽を奏でてくれました。
バーンスタインに学んだ指揮者のジョン・アクセルロッドは、この若くて奔放なヴァイオリニストを、自由に解き放ちつつ、前述の“交響詩フィンランディア”で象徴される様に、ウクライナとロシアに国境を接する静かなる大国、そして19世紀下旬から20世紀にかけてロシアの圧制下にあったフィンランドを代表するシベリウスの広大な世界を響かせました。