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2019年12月23日(月)

弧の会の日本舞踊を観て

 久しぶりに日本舞踊の舞台を観劇しました。
 令和元年8月31日に小田原市民会館大ホールで開催された、おだわら文化事業実行委員会が主催する「日本舞踊家集団・弧の会 コノカイズム」です。

 今回私は小田原市民学校の生徒として、舞台全体が良く見える一階左後方の席で観劇しました。
 この公演に先立って、令和元年6月30日に清閑亭で開催された「第20回文化セミナー『小田原と日本舞踊のこれから』」の中で小田原市在住の日本舞踊家泉徳保(いずみ とくほ)さんは、戦後の小田原での日本舞踊の変遷を御自身の体験と共に事細かに語られた上、最後に一曲演舞を披露されました。
※泉徳保さんは、3歳の時に初舞台を経験し、16歳で泉流の名取となり、日本舞踊を生業として生きていくことを決め、19歳(1988年)で泉流師範となりました。1998年の弧の会発足時からのメンバーであり、今回の「御柱祭」では、素踊(衣装を着けずに男性の場合、紋付の着物と袴で踊ること)による表現にも挑戦しました。
 その動きはしなやかで美しく、「ああ、日本舞踊ってやっぱり優雅で良いな」、と思わせてくれました。
 弧の会は、泉さんをはじめ、日本舞踊の男性師匠12人が流派を超えて集結した集団です。いやが上にも、弧の会の公演への期待が高まります。
 
 男性ならではの力強い演舞は、女性向けの演目が基本的に多い日本舞踊の中でもは、全くの異色だと言えます。
 今回のプログラムは、「若獅子」、「酒餅合戦」、「御柱祭」の3つ。
 初めて弧の会の舞台を観る私としては、一体どんな舞台になるのか、本当に楽しみにしていました。
 結果、期待以上の男性だけによる今までにない新しい日本舞踊を見せていただくことができ、大変満足しました。圧倒的迫力でした。
 中でも御柱祭は、照明だけで御柱を想像させるという斬新な手法で、祭の迫力を舞台の上に見事に再現されていました。
 小田原では一回だけの公演でした。 本当に素晴らしい日本舞踊という伝統芸能の一端を観ることが出来て、幸せだなぁと思いました。
 一回の本番の為に、床張りもかなりの作業だったと聞きました。また、舞台照明の為にも、新しい会場では相当時間を費やしてリハーサル等されたことが想像出来ます。
 でも同時に、一回切りじゃもったいないな、とも思いました。演者の体力の問題もあるのでしょうが、1日2回公演や数日間の公演にして、より多くの人に観て欲しいな、と私は 思いました。

 一般的に日本舞踊に対する関心や認知度は高いとは言えず、残念で仕方がないです。
 歌舞伎も能等もそれぞれちゃんと演舞場を持っているのに、なぜ日本舞踊には気軽に観劇ができるような専用の演舞場がないのでしょう?
 伝統芸能ではありませんが、お笑いの吉本はルミネthe吉本等、全国に数多くの独自演舞場を展開し、若手とベテランを混ぜ合わせて出演させ、日夜実践稽古を積み重ねさせています。
 また、長崎のハウステンボスの中には、宝塚に似た歌劇団があります。格安でミニ宝塚気分を味わえる素敵な場所です。 年中公演をやっていて、年間パスポートで毎日のように観に来るファンもいるそうです。1日パスポートでも入場でき、良い席は+500円、+1,000円の追加料金が発生しますが、その分特別感を味わうことができます。webでも予約出来ます。
 それらと同じように、いつでも必ずそこに行けば、日本舞踊を観ることが出来る場所があれば良いのになぁ、と私は思います。
 もっと各自の個性をアピールし、アイドルの48グループ等と同じようにブロマイドやサイングッズ等を販売しても良いのかも知れません。
 日本舞踊は「チントンシャン」、「しゃなりしゃなり」だけではなく、今回の公演の演目のようにダイナミックであったり、コミカルであったり、と色々な可能性を秘めている楽しい世界です。どのようにすれば、いかに上手に日本舞踊を知らない方々にアピールできるのかを考えさせられた公演でした。
※なお、このレポートは、令和元年度「おだわら市民学校専門課程『地域の文化力を高める』」の受講者である井上さんが作成したものです。

2019/12/23 15:01 | 伝統芸能

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