大鳥居の笠木・杉・長さ12m現在、小田原市では黒田長成公爵の別邸だった清閑亭へのアクセス向上のため、「清閑亭周辺散策路整備計画」で歩道の拡張工事を進めています。そのため「報徳二宮神社」の表参道大鳥居を建て直して、位置を少し奥へ移動させることになりました。昭和4年(1929年)建立の大鳥居は鉄製銅巻きでしたが、新しい大鳥居は小田原らしく小田原の木材を用いることになりました。平成27年から「小田原辻村の森」で御用材の選定が行われ、12月に御用材の伐採が行われました。高さ32m、樹齢約300年の杉の大木4本が神事に則り伐採されました。これらの杉の木は、江戸時代の小田原藩藩主大久保家が植林したのだそうです。江戸時代の空気を吸ってきた木材なのです。小田原の大工職の方々により、御用材は製材・加工されて準備が整いました。そして、8月30日に、鳥居の最上部に据えられる「笠木」が市民の手により運搬される報徳祭「御木曳き」が盛大に開催されました。
「文化を伝える」とよく言われます。また「伝統を守る」とも言われます。どこの歴史ある町でも、文化を伝え守って、子どもたちにも体感して欲しいと願っています。しかし、今日の「御木曳き」と「本城舘引渡し」を見ていて、文化は守り伝えるだけではなく、創り上げていかねばならないのだ、と思いました。「御木曳き」は、小田原初めての行事でした。次は50年後です。
「本城舘」山車は、外郎家から地元自治会へ寄贈されて来年5月の祭りにお披露目されるそうです。小田原に新たな文化が生まれてきます。本城舘山車引渡しは、遠州森町とのご縁より生まれました。そして、地域を大切にする老舗である外郎家の山車の寄贈には、この少子化の時代に次の世代の子どもたちに向けたレガシーとなり、子どもたちが文化を大切にしていって欲しいと願う想いが込められています。文化は地域を越え、県を越え、国境をこえて広がり、そして人々をつないでいきます。小田原の文化が地域に留まることなく、より広い交流に繋がって欲しいと願います。それこそが、現代における文化の継承であり、文化の創造である、と感じた一日でした。(深野 彰 記)