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2019年12月26日(木)

「花とともに」(著者 飯田和)の紹介

「花とともに」著者 飯田和 「花とともに」著者 飯田和 
 今回紹介する著書「花とともに」(以下著作という。)はかなり古い出版であるが、この著作を知ったきっかけには、第11回シダ植物鉢植展(令和元年10月11日-14日に開催)と講演会演題「シダを詠む楽しみのグラフィティ」(講演:元国立科学博物館研究官中池敏之氏)の中で、著者飯田和先生が本年5月に逝去されたことと、併せて著書「花とともに」を遺されたことの報告があり、著作が前記のシダ植物鉢植展に展示されたことにより、中身を拝見する機会が与えられ、著作に好印象を抱いたためである。
著書「花とともに」の所在について
 上記の講演会の中では、著作は国会図書館に収納されているので見ることができるであろうと説明されたが、その後何としても読みたくなり、アマゾンなどの大型書籍取り扱い会社にあたるも、新・中古書籍ともになんら情報がなく、暫くしてから小田原市の図書館検索システムにて検索を試みた。その結果、何と4冊が小田原市の図書館・支所に収納されていることを知り、直ちに借用を申し出て、本レポートを書くきっかけとなった。
著者飯田和先生のご略歴
 飯田和先生は、小田原市民であればご存知の方も多いと思うが、小田原市の小・中学校の教諭、中学校の校長、教育委員会の後、NPO法人子どもと生活文化協会(CLCA)に関わり、後にCLCAの会長に就任された。また、著作の中にも記載されているが、植物関係の著名な方々との交流もあった模様で、得た種々の事柄が著作に表されているようである。さらに、弊職が著作を探す過程で「飯田先生は、私の生物の先生でした。」と話す人がおり、人なりが想像され、著作にも現れている。
参照(略歴に関する):飯田和(2008).花とともに 子どもと生活文化協会
花材「ざくろ」のイラスト花材「ざくろ」のイラスト
「花とともに」についての構成など
 著作は、春、夏、秋、冬の四季に章立てされ、おのおのの季節で春(15)、夏(18)、秋(18)、冬(14)と合計65件の花材をとりあげ、各花材には精密なイラストと各花材にまつわる話題からなるエッセイで構成されている。
花材「ざくろ」の部分拡大図花材「ざくろ」の部分拡大図
 イラストは飯田先生独自の画法が採られ、近年の植物図鑑のように、カラー写真を用いて花材を見せるのではなく、花材の外側の輪郭や葉脈のような部分は実線を用いているが、あとの部分はすべて点の密度を加減することによって、色彩の濃淡・立体感を表現する手法を用いており、いかに黒色が濃い部位でも塗る手法を一切用いていない。この結果、花材の色情報はないが花の構造は理解が容易であると思われる。
 また、エッセイ部分は画一的な内容ではなく、個々の花材について独自の記述が多く、例えば秋編の「ざくろ」の記述では、原産地、漢名の由来が述べられ、言葉「紅一点」に漢詩を引用してざくろの花を表す言葉であるなどのエピソードに触れている。また、ざくろには花ざくろと実ざくろとがあり、子どもの頃ざくろの実は甘酸っぱいとの思い出と、意外なことに人の肉の味がするという話を聞いたとの記憶が飛び出したりというふうに各花材で色んな視点からの話題があり読み物としても面白い。
あとがき
 花好きの人だけではなく、この著作を読まれると穏やかな気持となると共に、取りあげられた花材に出合いたくなることでしょう。弊職はこの著作に取りあげられている花材のいくつかには巡り会っているので、残りの花材には機会を見て探し当てたいものと思っている。
 著作を遺してくれた飯田和先生には、生前にお目に掛かりたかったが、感謝を申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。
文献詳細
 書 名 花とともに
 著 者 飯田和(かのう)
 出版人・発行所 NPO法人子どもと生活文化協会(CLCA)
 発行日 平成20年6月21日
参考文献
 「花とともに」の出版に先立ち発行された「木声花詩(著者飯田和)」がある。併せて拝読されることをお勧めする。

森啓次:記

2019/12/26 14:39 | その他

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