
今、西海子(さいかち)小路は桜並木が満開で、見事なピンクのトンネルができています。田中光顕伯爵の別邸であった「小田原文学館」の庭の桜も満開で瀟洒な洋館に映えています。この小田原文学館を会場に、3月20日〜4月24日までの期間で特別展示『牧野信一とサクラの花びら』展が開催されています。
牧野信一(まきの しんいち)は、今年生誕120年、没後80年を迎える作家で、明治29年(1896)11月に小田原藩士族の緑町の家に生まれました。父親は単身渡米してしまい、祖父母の手で育てられました。小学校の頃に外人宣教師から英会話を習いましたが、それも会えずにいる父親のいるアメリカへ渡りたいという想いがあったのかもしれません。明治42年(1909)に県立第二中学校(現小田原高校)へ入学しました。同期に、後の小田原市長となる鈴木十郎がいました。信一は鈴木十郎と終生の友となりました。大正3年(1914)18歳で早稲田大学高等予科に入学し、大正5年(1916)に早稲田大学へ入学しました。早稲田大学英文学科で学ぶ傍ら文学に関心を持ち、同じく早稲田に入学した鈴木十郎と創作を語り合ったそうです。
この従兄弟同士の2人について、牧野信一生誕120年、牧野邦夫没後30年を記念して、4月16日(土)と17日(日)に「牧野信一生誕120年、牧野邦夫没後30年記念イベント」が、小田原市民会館で開催されます。16日には、明治学院大学教授で美術評論家の山下裕二先生が『牧野邦夫の画業について〜リアリズム・幻視・土俗性〜』というテーマで講演され、17日には、朗読家の蔀英治氏による記念朗読会『「熱海線私語」〜牧野作品から浮かび上がる小田原の近代〜』が行われます。17日には、女鹿伸樹氏による「外郎売」の口上も併せて上演されます。