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2024年07月23日(火)

こんなところからお城が!

山手橋から県道74号線山手橋から県道74号線
お城の見えるところは貴重 ― 都市化に埋もれるシンボル

小田原に引っ越してきてから20年ほど経った。そのときは、どこからでもお城が見えるかもしれないという新鮮な期待があった。しかし、期待が裏切られることもしばしばあった。車で県道74号線を荻窪から城山方面へ山手橋をくぐると天守閣が見えてくる。さすが小田原と思った瞬間、大きな道路案内標識が風景を遮る。
国道1号を旧小田原市民会館前のT字路に向かうと、正面に大きな歩道橋がある。旧市民会館は解体されて歩道橋のみが残るが、天守閣への見通しはいいとは言えない。
お城通り右側から天守閣お城通り右側から天守閣
小田原駅東口お城通りからは旧建築群が新しい公共施設になるとして、通りの名にふさわしい感動的な通りを期待したが、天守閣がわずかに見え、右側の江戸情緒豊かな店の並ぶ通りからは東口駐車場という文字が目に付く。それでも、お城通りの左側を歩けば学校の屋上の向こうに天守閣が現れる。
八幡山古郭東曲輪から-北条から江戸をみる-八幡山古郭東曲輪から-北条から江戸をみる-
小田原は戦国時代の北条氏の領地であったため、お城は北条氏の遺構と思われがちだが、江戸時代に構築された天守閣は明治になって廃城となって取り壊されており、関東大震災により櫓や石垣も倒壊し、今見る小田原城は昭和35年(1960年)に鉄筋コンクリート造りで江戸時代の姿として外観復元されたものという。
三の丸ホール2階ホワイエから三の丸ホール2階ホワイエから
新しいお城展望も-小田原駅東口デッキから二棟の天守閣

それでも小田原城は小田原市のシンボルとして市民の拠り所だ。かつては、街道筋、路地、長屋、商家、侍屋敷、どこからでも見上げられる天守閣は、城下安寧の拠り所であったはず。今はどうか。街は発展し建物は立ち並び、高層建築が空の一角を切り取りつつあり、天守閣を仰げるところはだんだん少なくなってきている。それでも、お堀端通りはもちろん、青橋、八幡山古郭東曲輪からは、天守閣の威容が近くに望める。
東口デッキから見える窓に反射して現れる二棟の天守閣東口デッキから見える窓に反射して現れる二棟の天守閣
三の丸ホール2階大ホールホワイエ、東口図書館テラス、ラスカ小田原U-meテラス、小田原駅東口デッキからの眺望も素晴らしい。東口デッキからはミナカ小田原のガラス窓に反射した二棟の天守閣が望める。ここの夜景もいい。なぜか金次郎広場では見せてくれない。金次郎夫婦像の裏側に廻ると穴場があるが。石垣山からの遠望もいいという。県道74号線の標識はいただけないが、城山1丁目と2丁目をつなぐ山手橋からの眺望は絵になる。
幻想的な夜景も幻想的な夜景も
なりわい交流館前からなりわい交流館前から
ビルのすき間から天守閣が-歩いて探してみよう

街中に入ると天守閣を見つけることが難しくなる。本町から南町付近の国道1号からの隙間を探して歩いた。その隙間の一つになりわい交流館前がある。ビルと民家の間に黒い瓦屋根と鯱鉾が覗いていた。交流館の2階からは北側東隅のガラス戸越しに1ミリほど屋根が見えた。こういう天守閣の探し方も一興だろう。
飯泉橋西から-この景色も見納めかー飯泉橋西から-この景色も見納めかー
飯泉橋の西詰からお城が一瞬見えるという情報を得た。写真に収めてよく見たら、3年前に開業したばかりの14階の商業ビルとつい先ごろ完成した17階建てタワーマンションの間にかろうじて天守閣が威厳を保っている。角度も関係するのだろうが2つのビルより、38メートル余の天守閣が小さく見える。小田原駅前にさらに再開発ビルが計画されているという。飯泉橋からの小田原城は、ほどなく見えなくなるのではないかと心配である。
海が山がそしてお城も見えなくなる日-小田原城の今を記憶に

景観の良さを標榜にした高層ビルやマンションが続々と建つ。いっぽう、それによって今まで見えていたものが見えなくなる。海が、山が、そしてお城が見えなくなる可能性もある。景観計画というのがあるらしい。開発の対象にはこれでもかとばかり木を植えたり庭をつくったり水を湛えたりするのに意を注ぐように感じる。しかし、そこに縁のない市民にも配慮されているだろうか。ミナカ小田原14階の足湯に浸かりながら、君の背中にいる市民のことも慮って欲しい。
解体中の旧市民会館越しの天守閣解体中の旧市民会館越しの天守閣
小田原市民のシンボルとしての小田原城は、どこからでも見えて欲しい。今では天守閣を仰ぎ見ることのできるところは貴重だ。読者の家の窓辺、庭、ベランダ、カフェ、路地、すき間、近望、遠望、春夏秋冬、お城の見えるところで語り合うのも小田原市民の心だ。こんなところからお城が見えるという情報があれば文化政策課に知らせてほしい。写真でもスケッチでも。天守閣が見えなくなるかもしれない日に備えて。
文化政策課 電話:0465-33-1707
      メール:cultural-policy@city.odawara.kanagawa.jp

記:ゆきぐま

2024/07/23 09:13 | 生活

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