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2014年09月26日(金)

小田原かまぼこの老舗!株式会社脇谷商店の脇谷和孝社長から聞いた、小田原かまぼこが食べたくなる話

今や全国に名を馳せ、お正月のおせちにも欠かせない小田原を代表する名産の一つであるかまぼこ。現在は小田原かまぼこは地域ブランド化され、小田原蒲鉾協同組合の組合員企業13社が、それぞれの持ち味を生かして地域を盛り上げています。
しかしながら、私たち小田原っ子はかまぼこが名産である事を知りつつも、それ以上の事を知らない方も多いのではないでしょうか?そこで今回、小田原っ子にも改めて小田原かまぼこを知って貰うべく、株式会社脇谷商店社長の脇谷和孝さんにお話を伺いました。
社長の脇谷和孝さん社長の脇谷和孝さん
■わきやは魚屋から始まりました■
 
創業から110年余りになりますが、初代から数えて私で5代目になります。会社も工場も自宅も一緒の所にあって、製造や販売を毎日見ていると、将来は私もかまぼこ屋になるんだな、と自然に考えていました。両隣には元々本業としてかまぼこ屋を始めた伊勢兼さんのようなお店もありますが、山上さんは米屋、わきやは魚屋が始まりです。安易な発想ですが、かまぼこという商売は儲かるんだな、という事で魚屋からかまぼこ屋になりました。当時は保存技術が乏しく、かまぼこのあまり売れない夏場は副業として塩辛や氷を売っていました。
■地下を流れる天然水は蒲鉾作りに適した水なんですよね。軟水より硬水で、ミネラルが豊富なんです■
 
小田原かまぼこは主にグチを使用するのは昔からの伝統です。そして水は箱根丹沢山系を水源とする地下水を使っています。この水の成分がかまぼこ作りに適した水なんですよね。軟水より硬水で、ミネラルが豊富なんです。ミネラルをほどよく含む水が蒲鉾にはいいんです。また昔は魚肉をすり鉢を使用して杵ですり潰していましたが、大量生産の転換期に、すり鉢でする工程や、板付けといって板の上に魚肉を盛る工程は機械化されています。
 
現在、市場に流通する小田原かまぼこと題する商品には、リテーナ成形という利益重視の製品があります。これは加水したゼリーのような魚肉だと考えて頂くと分かりやすいのですが、板の上にのせてもどろっと流れてしまうほど柔らかい、水で増量し蒲鉾を反対にしたような型があって、そこに魚肉を入れ蒸したものです。小田原かまぼこだと1本1,000円くらいするところを、リテーナだと100~300円ほど、そのような小田原かまぼこを規制したくて地域ブランド認証をとり、リテーナ成形と、組合13社の小田原かまぼこは違いますよということをアピールしました。リテーナ成形そのものは確固とした製造技術ですが、小田原かまぼこをつくるための技術ではございません。
 
組合13社は小田原蒲鉾十か条を定めております。組合員企業同士お互い切磋琢磨し合い、小田原蒲鉾の歴史と伝統を守りながら、小田原蒲鉾の発展や品質保持に努力を惜しまず、地域ブランドに更なる磨きをかけております。
■たとえ同じ材料、同じ調味料を使っても味や固さに違いが出てきます■

かまぼこを蒸す前の工程に、擂潰と言って、すり鉢で魚肉を擂る工程があります。何分間か魚肉だけで擂り、そして次の塩擂りという工程で塩を入れると、魚のたんぱく質がより擂り潰され、魚肉繊維がより複雑に絡み合い、粘りのある状態になります。最初に魚肉だけで何分擂るのか、塩はどのタイミングで入れるのか、擂り具合を見て、もしくは時間で入れるのか、塩を入れてから何分擂るのか、調味料は何分後にいれるのか、全体で擂り始めから擂り上がりまで何分なのか、すり始め、すり上がりの温度は何度なのか。また、かまぼこを蒸す工程には坐り(すわり:比較的低温で蒸す)という工程があります。その後に本蒸し(高温で蒸す)をするのですが、企業によって坐り、本蒸しを何度で何分かけるのか、その違いがかまぼこの弾力の違いになります。
そういう細かいノウハウがそれぞれの企業にあって、たとえ仮に同じ材料、同じ調味料を使っても味や弾力に違いが出てきます。
 
わきやのかまぼこは他のかまぼこ屋さんよりも固く弾力があります。それはあえて固くしているわけではなくて、昔からの製法を活かして固さを維持しているんです。固いものより柔らかいものが好まれるのが現代の食の傾向ではありますが、昔ながらの弾力と味わいで私たちは勝負しています。かまぼこを普段からご家庭でも召し上がるような、食べ慣れている方が好んで購入されます。玄人好み、通好みのかまぼこと自負しております。
■かまぼこ屋の責務です■
 
全国的に見ると、小田原かまぼこは残念ながら家庭の食卓にはあまり上がらないのが実情です。対して仙台の笹かまぼこ、四国のじゃこ天、九州のさつま揚げなどは、ご家庭の冷蔵庫に普通にある、と聞きます。
 
私たちは地元に愛されるようなかまぼこ文化を1から作りなおさなければならないと思っています。それは単に安価で美味しい蒲鉾を提供することではありません。
 
小田原かまぼこ通り活性化委員会は2年ほど前に発足しました。目的はかまぼこ通りに賑わいをつくり、通りの活性化を図る事。僭越ながら、かまぼこ通りと銘打っておりますが、昔からある「かまぼこ通り」というキーワードを活かし、蒲鉾屋に限らず賑わいがあれば、現在経営困難な商工業者を持ち直せる。そこで商売ができ収入があるならば、後継ぎ問題も解消でき、今ある空き店舗には商売を試みたい若者に出店を促す事ができる。通りの商工業者が賑わいで得られた利益を通りに還元し投資する事で、小田原用水や、柳の植わる風情を感じる景観や街並みを整備できれば、より魅力ある通りに磨き上げられるとともに、今ある空家に住みたい方が増える。さらには日本文化に根差した魅力ある教育までをサポートできれば、若い世帯が増え子供も増える。その過程では、商工業者の潤いは自治会に還元すること。幸地区、万年地区ほか各自治会の課題である自治会費の減少、世帯数の減少、子供の減少、独居老人へのサポート体制、などの問題点を包括的に解消できるものと信じ、活動しております。
1年目は小田原市の後援のもと大学講師を招き、ワークショップや議論を続けていました。2年目は、具体的に施策を打たなければなりません。毎年開催する小田原かまぼこ桜祭りでアンケートを実施した際、小田原市民の中でかまぼこ通りを知る方は3割だということが分かりました。まずは知らせるイベントを開催しましょう、という事で行われたのが先日の「かまぼこワッショイ」です。台風も近づき天候が不安定な中、来場者は2000人を越えました。まずは大きな失敗なく、地道に小さな成功を積み重ねること、この成功は地元企業のご支援、ご協力のみならず、新しい発想でイベントを盛り上げて下さった方々など、多くの方々のご協力があったからこそだと痛感しております。
今後の人口減少による消費の落ち込みは、今でさえ苦しい商環境悪化のスピードをさらに増してゆきます。我々の活動、活性化のスピードとの戦いともいえるでしょう。一方、私個人、荷が重過ぎて折れてしまうかもしれませんし、言うほど何もできず、自分の商売で一杯一杯かもしれません。様々な考え方がある中で、不況のなか今の商売を諦め、転換することも一つの考え方です。私にも子供がおりますが、子供が自分の意思で継ぐ継がないは別として、かまぼこ屋をやりたい、やらせてくれよ、と言われるような前述の夢のような環境をつくる事、選択肢の一つとして残す事は、小田原かまぼこ屋として生まれ育った者の責務と思います。
 
お話しを聞かせて頂いた後、わきやさんの小田原かまぼこを購入しました。私の冷蔵庫にも普段小田原かまぼこがあるわけではありませんが、話を聞いていてとても食べたくなり、実食。そうか、この食感、この魚の風味が、いい材料、水に拘った小田原かまぼこの味わいなんですね。
ステキなお話を聞かせて下さった脇谷さん、どうもありがとうございました。
■…ところでこんな事も聞いてみました■
 
当初予定していた本文に入れられなかった話の他にも面白い事を沢山教えて頂いたので、こちらでぜひご紹介します。
 
◆わきやさんの小田原かまぼこには、極上、特上、謹上がありますが、それぞれの違いはなんでしょうか?
 
魚種・すり身の質の違いです。骨や皮から遠い所の魚肉の身質は特に滑らかで白度も高いんです。内臓や骨、皮に近いところは黒い皮が入ったり品質がばらついたりする事もあります。白く弾力があり美味しい蒲鉾をつくるには、良質な魚肉を使用しなければなりません。
また当店ではグチ、タラをブレンドして作っており、グチの量が多いものほど等級が上になります。
ちなみに極上が等級が一番上で、一番固く味わい深いですね。昔の小田原蒲鉾は噛めばギシギシと音がするほど固く、噛むほどに旨味が広がったと聞いております。そのような蒲鉾を現代に伝えるべくお造りしております。
特上、謹上もグチ、タラの割合の違い、天然水の使用量の違いにより、味わい、弾力、しなやかさに違いがあり、謹上が一番しなやかです。水一つでも変わってくるんです。水で延ばすのは増量するためではなく、よりしなやかにするためです。
◆いかの塩辛は糀入と生漬(きづけ)とどちらの方が売れてるんですか?

これが面白いもので、本店では7:3で糀入が売れていて、卸売先では7:3で生漬のほうが良く売れるんですね。
本店は、リピーターの居る環境、駅前はリピーターの居ない環境も関係しますが、生臭い塩辛が苦手なお客様が、糀入の塩辛を召し上がった時、糀の上品な甘味で、肝の生臭さが消されているので、これなら食べられるわ、という事で買っていかれる方も多いんです。白づくりというんですが、いかの皮を全てむいて製造しております。耳から足まで、皮を全部むいているのはわきやだけかもしれません。
 
◆小田原以外では糀入りの塩辛って食べたこと無いんですが・・・!
 
聞くところによると、酔っ払ったみのや吉兵衛さんが、獲れ過ぎてしまったいかを大量に仕入れ、塩で漬けておけば腐らないと、塩漬しておいた。でも塩っ辛くて食べられないので、糀を入れたらうまい塩梅に発酵し、それを食べたところ美味しかったと、そこから糀入りの塩辛が始まったと聞いていますね。
◆ききかまが当てられません・・・。
 
   「ききかま」とは6種類の小田原かまぼこを、食べ比べてどこの会社のものか当てるという小田原かまぼこ桜祭りなどで行われるイベントの事です。
 
我々が最初に見るのは、色、形、これだけで食べないで分かります。かまぼこ屋さんが集まった時、やったことがあるんですが、食べたら絶対分かるんだから、食べないで当ててみましょうと(笑)
味だけで当てようとするから難しいんです。食べなれてない人からすると味の違いも僅差にしか感じられないと思うので・・・。絶対に皆さん形が違います。切られた断面の、高さのある所、ない所、山のカーブが垂直なのか、ちょっと外に出てるのか、色も真っ白、クリーム色の所もあれば、薄黒くなっている所もあるんですよ。
 
そう、私は自分の味覚を信じて今まで味だけで当てようとしていたのです…。
よーし!このアドバイスを元に次のかまぼこ桜まつりでは絶対利きかま当ててやるぞー!\(^^)/
(お茶 記)

2014/09/26 12:30 | なりわい

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