市長コラム

2023年12月21日(木)

市長コラム(令和5年12月21日)「軽井沢風越学園視察」

 11月28日に、長野県軽井沢町の「軽井沢風越学園」を視察しました。
 風越学園は、楽天グループの創業メンバーだった本城慎之介氏が創設した、幼稚園と義務教育学校(小・中学校)が一体となった私立学校です。
 講義中心の画一的なカリキュラムではなく、子どもも大人も「つくる」経験を積み重ねていくことで、全ての子どもたちの自由に生きる力と、自由を相互に承認する感度を育む、という理念のもとに2020年(令和2年)4月に開校しました。子どもをこの学校に通わせたいと「教育移住」する方も多く、今、日本でも注目されている学校の一つです。

 現在、本市の「新しい学校づくり推進事業」に取り組んでいる栁下教育長、井上教育委員をはじめとする教育委員会の職員とともに、今回は午前・午後の授業や昼休みの様子を見学するだけでなく、岩瀬校長先生(校内でのニックネーム:ゴリさん)ほかスタッフの方々や子どもたちからもたくさん話を伺うことができました。
 また、ゴリさんのファシリテートによって、風越学園で体感したことが「新しい学校づくり」にどのようにフィードバックできるか、という対話の時間を持つこともでき、今後の事業推進に大変参考になりました。
(学校は、目の前に浅間山が広がる自然豊かなエリアにあります)

 校内に入ると、いわゆる学校の図書室とは一線を画した、巨大な本棚と大量の蔵書に圧倒されました。学園の「核」とも言えるライブラリーです。
 蔵書数は約3万5千冊。現在も年2千冊ほど蔵書を増やしているそうです。司書スタッフは1名常駐しており、子どもたちそれぞれの「探究の学び」に役立つ本を提供してくれます。
 司書スタッフは、授業のカリキュラム作りにも深く関わっており、学園にとって非常に重要な存在だそうです。
 また、本は子ども、保護者が自由に借りることができます。たくさんの子どもたちが、何冊もの本を小脇に抱えて歩いているのが印象的でした。

 学園では、「つくる」、「探究する」という文化が子どもたちにもスタッフ(学園では教職員をスタッフと呼んでいます)にも日常的に根付いています。自身の「やりたい」を究める「マイプロジェクト」もその一つです。
 ライブラリーのそばに、大小様々な水槽が並ぶスペースがありました。ある生徒が近くの川などから捕えた魚をここで飼育しているそうです。驚いたのは、水槽や温度管理に必要な設備などを、生徒自身が申請して獲得した団体などの助成金を使って整備しているということ。
 「やりたいことをやる」ために必要なものは何か、それを得るために必要なことは何か、ということも含めて自らが掘り下げて取り組んでいく、校内のあちこちでそうした「マイプロジェクト」の過程や成果を見ることができました。
 体育館にあるバスケットゴールも、バスケットゴールがほしいと考えた生徒が、ボードを工房で自作し、設置したそうです。
 工房をはじめとする、いわゆる特別教室の集合体「ラボ」には、道具や材料が使いやすく並べられています。子どもたちが使いたい時に使い、使った後はきちんと片付けができる仕組みには感心しました。
 外では、ある生徒に声をかけられて、できたばかりだという秘密基地を見せてもらいました。風を避けるために掘られた横穴の中は、寒くないよう床には藁が敷かれ、玄関もありました。一人で作ったとは思えない立派なつくりで、私も子どもの頃はこのような遊びをたくさんやっていたなと懐かしく思いました。

 授業の様子も通常の学校とは少し異なります。午前中は「土台の学び」という教科学習が行われています。教室以外のスペースでも授業が行われており、教科書ライブラリーの本やパソコンなどを組み合わせながら、講義を聴くだけではなく、一人ひとりが積極的に学習を深めようとしている様子が見られました。
 昼休みは、とあるプロジェクトのランチミーティングにお邪魔しました。
 異なる学年の子どもたちが集まり、プレゼンの準備などを進めています。その中の9年生(中学3年生)の2人に、進路のことなどについて聞きました。
 正直、勉強に少し不安はあるものの、この学校で学んだ「探究する」ことを大事に、進学先も考えたいとのことでした。
 午後は、2学年1グループで取り組む「テーマプロジェクト」が行われます。
 スタッフが年間を通して4つのテーマ(3カ月に1つ)を設定し、教科横断的な学習を組み合わせながら、一人ひとりが自分なりの問いを立てて、自分なりの答えを求めて探究していきます。
 あるグループは、災害時を想定した校内での宿泊訓練に向けて、仮設トイレの試作。あるグループは、音の研究から発展したラジオ番組作り。またあるグループは、軽井沢町の町制100周年を記念した和菓子を作り、グループごとにフィードバックをしています(作る前に、季語や和菓子の歴史について、ライブラリーの本でたくさん勉強したそうです)。哲学をテーマに、一人ひとりが自分たちの問いをひたすら思索するというグループもありました。
 ゴリさんに促され、何人かの子どもたちに何を学んでいるのかと尋ねましたが、どの子も自分の言葉で、何を学んでいるのかを分かりやすく話してくれることに驚かされました。
 風越学園は、当初は公設民営を目指していたそうですが、様々な制度の壁があり、私立として開校した経緯があります。この学園での学びが公教育にも展開されていくことを目指して、長野県教育委員会との人材交流や、教員向けのラーニングセンターも運営しているそうです。

 現在の公立小中学校では行われていない、行うにはハードルが高いと思われる光景も少なからずありましたが、同時に本市の「新しい学校づくり」の参考となる気づきもたくさんありました。 今回の視察で体験・体感したことを生かし、「新しい学校づくり」をはじめとする本市の教育施策に役立てていきたいと思います。
○参考:軽井沢風越学園ウェブサイト https://kazakoshi.ed.jp/
 

2023/12/21 17:07 | 未分類

 
 

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