市長コラム

2023年07月07日(金)

市長コラム(令和5年7月7日)

 6月29・30日の両日にわたり、主に図書空間づくりと、民間による公民連携・若者活躍の取組に関する先進事例を視察しました。

 1日目は、大阪市が運営する「こども本の森・中之島(なかのしま)」に伺い、伊藤真由美館長から施設についてご案内いただきました。
 本年7月で開館3周年を迎える当施設は、建築家の安藤忠雄氏が、生まれ故郷のために施設を建設した後、大阪市に寄付したもので、空間の見せ方が特徴的な建物。この安藤建築を目的に海外の方も訪れるそうです。
 開設以来、コロナ禍の影響もあり、1日4回の入れ替え制(1回90分・予約制)での運営を行っており、毎回、親子連れをはじめとする多くの利用者が訪れています。館内は、12のテーマごとに壁という壁に本が並べられ、至る所に来場者の好奇心をくすぐる工夫が凝らされていました。 通常の図書館のように本の貸出しは行わず、施設内であれば、どこでも閲覧可能というルールになっており、子供たちのお気に入りの場所は、施設中央にある階段の両端とのこと。
 運営する大阪市は、図書館としてではなく、あくまで文化施設として位置付け、指定管理料をすべて寄付金で賄い、多くの無償ボランティアの方々が運営に当たっているそうです。子供たちに多くの本を手にしてもらう工夫などは、本市の図書館の取組のヒントになりそうです。

〇「こども本の森・中之島」ウェブサイト https://kodomohonnomori.osaka/
 次に伺ったのが、京都市にある私設図書室の「鈍考(どんこう)」。
 当施設は、本年2月に小田原市立中央図書館主催の講演会に講師としてお越しいただいたブックディレクターの幅 允孝(はば よしたか)氏が運営する会社が、本年5月に開設した施設。京都の市街から少し離れたヒノキ林の借景が美しく、傍に小川が流れる静かな場所に立地し、大変趣があります。
 施設のコンセプトである「時間の流れの遅い場所」を大事にするため、定員6名の予約制による時間入替を導入しており、施設内には幅氏が厳選した3,000冊の蔵書の中から気に入った本を手にゆっくりと閲覧することができます。
 利用者の多くは女性であり、読書や考え事をする時間をつくるために利用しているそうで、私が訪れた際も利用者のほとんどが女性でした。施設内外の雰囲気が素晴らしく、ここで過ごす時間を求めて遠方から多くの方々が訪れるのも納得しました。

〇「鈍考」ウェブサイト https://donkou.jp/
 次に伺ったのが、明治・大正の政治家であった山縣有朋の別荘で、京都市所有の「無鄰菴(むりんあん)」。
 京都市と指定管理者から、施設や庭園などについてご説明いただきました。   無鄰菴は、明治29年(有朋58歳)に造営された庭園で、東京目白の「椿山荘」と小田原の「古稀庵」とともに、「山縣有朋ゆかりの三庭園」と呼ばれています。
 施設の運営として、時期による変動料金制や夜間のライトアップ付きプライベート開放、視覚障がい者を対象にした見学会の開催、ファンクラブの運営、任意のボランティアによる運営補助など、様々な取組にチャレンジしており、本市にも大変参考となる話を聞くことができました。
 今回の視察を契機に有朋ゆかりの庭園とコラボレーションした取組の検討に入りたいと思います。

〇「無鄰菴」ウェブサイト https://murin-an.jp/
 2日目の最初に伺ったのは「京都市役所」。
 今秋、歴史的景観都市協議会の第50回記念大会が小田原市で開催されるにあたり、当協議会の会長でもある門川大作(かどかわ だいさく)京都市長を表敬訪問させていただきました。
 京都市役所本庁舎は、2021年9月に改修工事が終了し、その際、復元された「政庁の間」が会場となりました。
 和装振興を掲げる門川市長は、ほぼ通年和装で過ごされており、この日も和装でお出迎えいただきました。京都と小田原のつながり、前日に訪れた無鄰菴、文化を守ることの大切さなど、様々な意見交換をさせていただきました。
 次に、組織・働き方改革、若者の活躍支援など様々な取組みを行っている「京都信用金庫」と、その京都信用金庫が個人や地域の課題解決をするコミュニティを作ることを目的に整備した共創施設「QUESTION(クエスチョン)」に伺いました。
 京都信用金庫では、榊田隆之(さかきだ たかゆき)理事長から、対話の重要性や現場による人事評価、地域ブロックごとに権限を与えるエリア自治、20歳代の若手職員のみによる店舗運営、1,000件を超える社内プロジェクトの取組、ワークライフバランスにつながる各種取組など、新しい価値を創造する様々な取組について、貴重なお話をいただきました。
 今後もネットワークとコミュニティを大切にしながら、地域に豊かなコミュニティを育むための地域金融機関「コミュニティ・バンク」を目指していきたいという、榊田理事長の熱い思いに圧倒されるとともに、大変共鳴を受けました。
 また、社会全体で若者を支援し、人としての成長につなげてほしいという強い思いから、当金庫の河原町支店を改修する際、併設する形で整備された共創施設「QUESTION」では、施設の5階に学生が無料で利用できる「スチューデンツラボ」を設置。
 そこを運営する認定NPO法人グローカル人材開発センターの行元沙弥(ゆきもと さや)代表理事と、若者活躍について意見交換をするとともに、本市が新たな試みとして実施予定の「おだわらMIRAIアワード」への協力依頼をさせていただきました。
 京都市のような民間主導による若者活躍支援の取組は、公民連携に取り組む本市にとっては大変参考になります。今後も注目していきたいと思っています。

〇「QUESTION(クエスチョン)」ウェブサイト https://question.kyoto-shinkin.co.jp/

2023/07/07 11:12 | 未分類

 
 

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