(写真6)3階のスリット窓正面は1階も2階も右から左まで全てガラス面で、ル・コルビュジエの唱えた建築5原則の「横長の窓」となっている。又、正面の3本の柱はピロティ構造にはなっていないが、外壁から浮き出た柱が1階から2階へ突き抜けてピロティのように見え、更に、3階外壁には柱の両側に細長いスリット窓を入れることで、建物全体に縦の直線が強調されてスマートである。3階は2階席上段への入口となるのだが、観客も滅多に行くことはない場所である。しかし、そのロビーに立ってみれば、細長い窓から射し込む光が天井と床に拡散して、微妙な陰翳を作り出していることに気付くだろう(写真6)。3階の狭いロビーにどう光を導くか、を設計者はいろいろ考えたはずである。そして、それは外観と室内への光の効果の両面性を考えた優れたデザインとなったのである。
また、1階と2階の間の外壁には張り出した軒を巡らして横方向の直線を形成し、建物に躍動感と安定感を与えている。これらの直線的で立体的な外観デザインは、県立音楽堂のデザインと極めて類似している。この外観の類似性から、小田原市民会館大ホールはル・コルビュジエの建築5原則の影響を強く受けて設計されたと考えたくなる。