レポーターブログバナー
2022年04月14日(木)

スクランブル・ダンスプロジェクトの講師、舞踏家の松岡 大さんにインタビュー(後編)

小田原在住4年目のRieです。


前回の記事で、スクランブル・ダンスの世界にどっぷり浸った感想をお伝えしました。幸運にも、スクランブル・ダンスプロジェクトの講師、舞踏家の松岡 大さんにお話を伺うことができました。
 
白塗りの舞踏を初めて鑑賞させていただいたことを伝えると、「どうでした?」と、松岡さんから逆質問。
「こ、怖くなかったです……」と、あまりに直球すぎる返答をしてしまい、顔から火が出そう!
「ハハハ、よかった」と笑う松岡さんに救われます。
今回の作品『Score』についてあれやこれやとお尋ねすると……、
「僕は踊りを作るときに、ひとつの意味をもたせないようにしていて。最後のイメージは仰る通り海なんですけど、お客さんがひとつの解釈しかできないような作り方はしないようにしています。どう見えたかは、それぞれお任せします」
Photo by 木村雅章Photo by 木村雅章
……ハッ! 野暮な質問だった!
「感じるままでいいんだ――」、正気を取り戻しました(苦笑)。
お話を伺って、驚いたことが3つありました。
1. 音楽の中に小田原囃子と本小松石を叩く音を使用
今回の作品を見た文化レポーターの先輩から、「音楽の中に、お祭りのお囃子の音がしたでしょ? あれは小田原囃子だと思う。“カンカンカン!”という音は、真鶴で採れる本小松石を叩く音かも」という情報を得ていました。
松岡さんに確認すると、その通り! 今回オリジナルの音楽を作られた音楽家の武田直之さんが、現場に出向いて収録した音を取り入れたそう。開館記念事業ならではの作品となっていたわけです。
2. スクランブル・ダンスメンバーとの練習は当日のみ。ほぼ即興!
出演したメンバーとは、事前に何度も練習を重ねて本番を迎えたと思いきや、なんと当日約1時間半のリハーサルのみ!
「スクランブル・メンバーは音楽がかかると踊り出しちゃう。自分の中でイメージを動きに変換するのが得意なんですよ。例えば“クラゲの動きはこうだよ”と、あらかじめ決めたものもいくつかありますが、アドリブに近いですね。それと、これまで何度も一緒に踊ってきて僕の中にこの人がこのシーンに出てきたらこんなことをやってくれそうだなというイメージがあるので、それを配置します。予想以上にうまくいって、僕自身ビックリしているんですよ」
3.白塗りの松岡さんを見たのは、メンバーもほぼ初めて
「僕を見てウケてましたね。裸ん坊、おばけ、とか言われました(笑)。実は今まで、白塗りだとメンバーと壁ができてしまうような感じがしてやっていなかったのですが、こだわらなくていいかなと思えてきて。みんなとの関係は築いているから、トライしてみようと。カッコつけすぎても、新しいものは生まれないので。退場するとき、白塗りで車椅子を押す自分ってシュールだな〜!って思いました(笑)」
Photo by 木村雅章Photo by 木村雅章
なんてカッコいいのでしょう!
見た目や自分のこだわりではなく、メンバーとの絆、トライを優先する考え方がとても素敵だなと感じました。
スクランブル・ダンスプロジェクトだけでなく、小田原市の「アウトリーチ事業」にも協力してくださっている松岡さん。
アウトリーチとは、子どもたちの創造力や感性を刺激し、豊かな情操を育むことを目的として、専門家の方が市内の小・中学校に出向き、質の高い芸術文化に触れる機会を創出する事業です。
今回の公演を見て心によぎったのは、「障がいがある人のほうが自由に踊れているのではないか――」ということ。
「自由に踊っていいよ」といわれても、私だったらどうしていいかわかりません。
「小学生も最初は動けません。“自由に“という意味が分からないんですね。だから足場を組むように順番に自由さを作っていきます。足踏みから始めて、手で円や四角を描いてみたり。イメージやリズムをひとつずつ積み重ねたのちに、“ここが動かせる! こんなことができる!”って気づいていくんです」
あぁ、子どものころに教わりたかった……。
互いの自由を尊重することの大切さを頭ではわかっていながら、周りの目を気にしたり、違う人を見ると何か言いたくなったり……。そうしていつしか、自由とはかけ離れた大人になってしまったのではないかと。
「ワークショップで、周囲をずっと走り回っているメンバーがいるんですけど、彼にとってはそれがダンスなんだと解釈しています。 “ダンスとはこういうもの”と決めつけることが無意味だなって、スクランブル・ダンスで学ばせてもらったんです。ダンスの捉え方って、もっと広くなっていいと思うんですよね」
スクランブル・ダンスメンバーや小田原の子どもたちが、ああしよう、こうしようと自分で考えて生み出す「個人」の力を育てるために、今後も活動していきたいと話す松岡さん。
小田原発祥のスクランブル・ダンスプロジェクトを、もっともっと盛り上げていきましょう!
★お知らせ
松岡さんが講師を務めるスクランブル・ダンスプロジェクトのワークショップが、小田原市観光交流センター内、イベントスペースで開催されます。見学だけの参加もOKとのこと。
1回目/2022年4月30日(土)14:00〜16:00
2回目/2022年5月14日(土)10:00〜12:00
詳しくはこちらをご確認ください。
https://landfes.com/sdp-workshop2022/

2022/04/14 18:04 | ダンス

ページトップ