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2023年03月28日(火)

海の見えるグラス工房 “グラス・キャリコ”

丸いパイプの先には灼熱の赤いガラスの球。レールの上を静かに転がしながら「ブロー」と囁く声。そして愛おしそうに優しく息を吹き込む様は、壊れそうなわが子に命を授けるよう。
車の窓からいつも気になっていた“米国西海岸の雰囲気”を醸すグラス工房。岩沢 達・茜さん夫婦が営むグラス工房 “Glass
Calico(グラス・キャリコ)”を訪ねました。 ロケーションは小田原市前川。国道1号線沿いの国府津と二宮の中間辺り。箱根駅伝の往路4区、復路7区の中間点付近でしょうか。眼前に相模湾、三浦半島から房総半島、伊豆大島を遠望できる美しい場所に位置しています。群馬県藤岡市の出身の達さん、辻堂出身の茜さん。
2010年にショップをオープンして、のちの2014年に工房と炉を完成させて現在に至っています。グラス工芸に興味を持ったきっかけを達さんは「他の地域でガラス工場を見ていた時は特に何の感慨も印象もなかったんです。ですが、横浜のとあるグラス工房を見たときに、おぅッという感動を覚えてこの道に入りました」と話していました。

その後に茜さんと知り合い、期せずして達さんは静岡県伊東市に転勤。「長距離恋愛も大変だから、伊東と辻堂の真ん中辺」の小田原にショップと工房を構えて独立した由です。
しかし、独立への道はそれほど容易ではなく、長距離運転手などを務めて財政基盤を確立した、という努力家の達さん。 “吹き竿” 又は“ブロー・パイプ”と呼ばれるパイプの先に熱いグラスの球を付け、ゴォーと唸りを上げて燃え盛る“焼き戻し窯”(グローリーホール)に。“焼き戻し窯”は優に1000度を越える温度です。最初は真っ赤な球でしかないグラス。達さんの「ブロー」の声に茜さんが応えて優しく息を吹き込みます。“吹き竿”に付いたグラスの形を整え、何度も何度も“焼き戻し窯”に入れて、達さんはサイズを測るゲージを使いながら、完成形に近づけて行きます。
例えば、シャンパン・グラスでは別途に作った脚をつけ、余分な部分をハサミで切り落としたりもします。他の製品では、熱いグラス球に色粉を少し付けての色付けも。 出来上がった製品は、“徐冷炉”(内部温度480度)に入れて徐々に冷やしていきます。この時点の製品にとって480度は「ぬるく感じる温度」(達さん)。1日の仕事を終えた時点でスイッチを切り、明朝の炉からの取り出しを待ちます。“徐冷炉”から出されてもまだ熱い製品が冷えて人の手に渡る時が、 “製品” が“作品”に換わる時と私は理解をしています。お2人にとってグラス作りは熱い絆で結ばれた仕事だと感じました。グラスの壊れやすさも強い美の作品に向かっていく過程です。達さんに聞いてみました。「達さんは作家ですか? 職人さんですか?」と。 達さんは「私は、“グラスを吹く人”です」という答え。“グラスを吹く人”という新しい言葉に私は感動を覚え、且つ心意気を感じました。達さん・茜さんは、都内の百貨店や地方のギャラリーでも個展を開き、いまや人気と実力を兼ね備えたガラス作家です。これからも素晴らしい作品を作ってくれる事を確信しています。
 
押切のリュウ 記


Glass Calico(グラス・キャリコ)
※不定休・日、月休
住所:神奈川県 小田原市 前川539
電話:0465-87-5685
https://glasscalico.jimdo.com/

※ご来店の際は事前にお店へお問合せください。

2023/03/28 08:54 | 美術

2023年03月06日(月)

小田原ゆかりの刀剣展

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2月18日(土)から3月12日(日)まで、小田原城天守閣4階企画展示室において『小田原ゆかりの刀剣』展が開催されています(写真1)。

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2023/03/06 10:29 | 歴史

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