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2016年01月12日(火)

小田原ならではのアーティスト イン レジデンス〜すどう美術館〜(前編)

11月20日(金)から12月17日(木)にかけて、すどう美術館、尊徳記念館、市民会館などを会場にして「第3回西湘地区アーティスト イン レジデンス」が開催されました。
「アーティストイン レジデンス」、聞き慣れない名称です。国内外のアーティストが地域に滞在をしながら作品を制作することで、自身の経験を豊かにし、地域の人とも交流することでアートの普及につなげる芸術活動です。
■西湘地区アーティスト イン レジデンス
3回目となる今回は、海外5人、国内6人のアーティスト11人が招待されました。滞在期間中、アーティストたちは同じホテルに宿泊し、小田原市内を散策し、歴史や文化に触れたり、市民と交流したりしながら、この地でしか描けない『小田原ならではの芸術作品』を生み出していきます。
■制作と交流
小田原市尊徳記念館内での制作期間は11月20日(金)から11月29日(日)。この会場では地域の人々や子どもたちに向けて、アーティストとの交流や芸術に親しむことのできる企画が用意されていました。
アーティストが制作しているところを見ることができる「制作公開」や、作品づくりのあれこれなど、自由に話が出来るシンポジウム「アーティストと話そう」、地域の子どもたちを対象としたワークショップ「世界をちぎって、貼って、コラージュペインティング」や、特別企画としてバイオリンとギターのコンサートも行われました。
完成した作品は実行委員会に寄贈された後、展示段階に入ります。
「展覧会Exhibition ARIO」は、12月1日(火)から12月10日(木)まですどう美術館で、12月12日(土)から12月17日(木)は小田原市民会館で開催されました。
このように、「アーティスト イン レジデンス」とは、招待アーティストが滞在したその地に住む人たちと交流を図りながら制作が行われ、実行委員会によって展覧会が開催されるという、地域と芸術家が密接に関わる中で生まれ芸術作品が地域に残っていく素晴らしいシステムなのだということを今回初めて知りました。
■小田市民会館での展覧会
展示作品は50点ほど。会場にはアーティストによって作品となった『それぞれの小田原』が展示されており、ゆったりした落ち着ける雰囲気を醸し出していました。アクリル画やコラージュ等の大作に交じり、一夜城の風景画やホテルから見た駅周辺の夜景、石のオブジェなど、どれも心にすっと入る作品でした。
 
菅沼稔さんの「No.1511」はキャンバス一面色彩だけの内面を表現した作品。近づくと中に何かが描かれているのが分かり、観方によっては、森の中にも、海底にも観えて、小田原の森へと海へとイメージの世界が広がる作品です。
村上健太さんの「経年劣化 ≠価値下落」は電力王・松永安佐ヱ門(号:耳庵)が建てた老欅荘をモチーフにしていました。老欅荘は近代小田原三大茶人の一人「耳庵」が晩年、居宅として過ごした建物です。見取り図からインスピレーションを受け、直角の日本の畳文化を柔らかい色調で描きます。コンセプトは、建築は劣化はするが価値が下がるものではないということ。キャンパスを正方形にくり抜いた作風は、まるで茶人「耳庵」の遊び心をうかがい見るようです。わび・さびを入れつつも桜色がかった畳の上で、茶の湯ときめく楽しい絵です。
「Landscape with a tree and Fuji mountain hommge Hokusai 1」は富士山を見て衝撃を受けたというスペインの男性アーティストVictor Albaさんの作品です。私が日常見馴れている風景そのままの収穫後の田園と箱根連山の背からその雄姿を現す描写です。その中に、『快晴』の証し、朱オレンジの夕焼けが細長く染まって描かれています。浮世絵師・葛飾北斎「富嶽三十六景」の代表作で名高い「凱風快晴」の赤富士と同じく、自然、四季ある日本の美しさが描かれた作品には感慨一入です。

展示作品で一番大きい作品は80号。1号が葉書サイズで計算していただくと、どれだけ大きいかわかります。短期間でこれほどの感動と『小田原ならではの作品』を地域に残してくれたアーティストたちの今後のご活躍を祈りたいと思います。(MOKO 記)
(つづく)

2016/01/12 12:34 | 美術

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